和算に挑戦

平成17年度出題問題①[初級問題]&解答例

 米俵(こめだわら)を図のように積みました。一番上の俵(たわら)の数が5俵、一番下は15俵あります。
 このとき、全部の米俵の数はいくつになるでしょう※江戸時代の終わりごろ(嘉永元(1848)年)に出版された『増補算法図解大全』にある問題です。

審査員講評

 初級問題は、154名の方から193件の解答を頂きました。その内、小学生までが42%で予想より少なめでしたが、40歳から82歳までの方が43%を占めていたのには驚かされました。高齢化社会と言われるこの時代ですが、今尚向学心に燃える方々が多くいることは何とも頼もしい限りです。年齢の巾も5歳から82歳と殆どの年代に亘っておりました。
 正答率は95%以上で、誤答は僅かに9件でした。問題の分かり易さと検算が容易だったからかも知れませんが、応募された方々の努力と慎重さの結果と思います。
 今回も学校でまとめての応募が4校(初級)あり、特に市内花泉町の涌津小学校6年生は全児童31名の団体挑戦がありました。その各解答には、相互の共通点が少なく、各自の考え方、答が記されており、その能力に応じ、静かに見守ってくれた先生方の温かな心遣いが感じられ、教育の神髄を垣間見た思いです。
 俵の段数が奇数だった事もあり、様々な発想の解答が寄せられ楽しく拝見させていただきました。その型の大半は模範解答に示されております。いきなり答えだけを記して解法が示されていないものは正解とはしませんでした。
 年配の方々には、戦時中、勉強より労働奉仕等に時間を費やされ、不本意な青春を悔やまれ懐古された感想文がありました。その償いとして、この「和算に挑戦」が少しでも役立ったとすれば、望外の幸せです。
 「和算に挑戦」は、今回で4回を数えますが、何となく皆で走り続けなければならない今の世の中に、このように自由に発想し、我を忘れた時間を持つ喜びを分かち合えたのではと自負しております。今後共引き続き「和算に挑戦」への応募を期待しております。

 

解答例

【解答例1】
5+6+7+8+9+10+11+12+13+14+15=(5+15)+(6+14)+(7+13)+(8+12)+(9+11)+10
=20×5+10
=110(俵)

【解答例2】

【解答例3】
台形の面積を求める公式を利用して
(5+15)×11÷2=110(俵)

【解答例4】

解説

嘉永2年(1849)に発行された『関流算法童子歌』という本に、この問題の解き方が書かれています。
 それには、
「梯積上下の差に一加へ、上下の和をかけて二て割」
(ていだつみじょうげのさにいちくわえ、じょうげのわをかけてにでわり)
この和歌のとおりに計算してみると
※梯積・・・梯は、台形のことで、は、積み重ねること。積で、台形(等脚台形に積み重ねること)。

  上下の差に一加へ・・・・・・・・・15-5+1=11
  上下の和・・・・・・・・・・・・・15+5=20
  をかけて・・・・・・・・・・・・・11×20=220
  2で割る・・・・・・・・・・・・・220÷2=110
答えは110俵となります。

一般化すると

図のように米俵がつんであるとする

 この本は、一関出身で、関流九伝の和算家安倍勘司が、千葉胤英(千葉胤秀の四男)の数学塾「環水社」から出版したものです。書名から察せられるとおり、子どもや初心者のための数学の手引書で、数学の問題の解き方(公式)を五七五七七にあてはめて覚えやすくしたものです。加減乗除の意味、利息や容積の計算などの公式を和歌風にしたもの35首が収められています。このような方法は、江戸時代の初期に始まりましたが、一関地方の和算家は、時代に合わせてアレンジし、「数学手引歌」「数学童子歌」などと称して広く普及させています。
 この本は、持ち歩けるのに便利なように、折本仕立てで、たたむと縦15cm、横6cmほどのてのひらサイズになっています。

 

 

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