和算に挑戦

平成18年度出題問題①[初級問題]&解答例

 縦20cm、横10cmの長方形の紙を切って、正方形の形に並べ直してください。※江戸時代の中ごろ(寛保3(1743)年)に出版された『勘者御伽双紙』にある問題です。

審査員講評

 初級の問題は「横10cm、縦20cmの長方形の紙を切って、正方形の形に並べなおしなさい。」というのですが、長方形の面積を求めると10×20=200であるから、正方形にした時の一辺の長さは、となります。正方形というのは、四辺の長さがみな同じで4つの角はそれぞれ90度ということに注意して、あとは与えられた長方形をどのように切って、どう並べればよいかあれこれ試してみればいいわけです。今回の問題は実際に紙に寸法をとって切り貼りをして確認することも出来るので大変取り組みやすい問題だったようです。
 応募者は、最年少の6歳から最高齢の90歳の女の方まで、あらゆる年齢層に亘っております。解答者は小・中・高校生が多いのですが、今回は東大・京大など大学生や大学院生からの応募も結構多くみられました。今回の問題は正方形を作れという問題ですから正方形にしたときの一辺の長さを数字で出せなくても切り貼りの作業だけで正方形は作れるのですが、中には何とか数学的な厳密な理論を用いて解を導き出そうと頑張った方もいらっしゃいました。又、一人で数多くの複数解答を送ってくれた方も居りました。中でも45歳の仙台の主婦の方は、感想文から折紙を得意としている方のように見うけられましたが、色紙に設計図を示し、それに基づいて切った色紙を貼り付けてつくった正方形の例を48通りも示してくれました。しかも色違いの色紙を用いて並べ方がわかりやすいように作っておりました。その粘り強さに感心すると同時にご自身が一番その時間を楽しんで過ごしたのではないかと思われる様子がこちらにも伝わって思わず私たちまで楽しくなってしまいました。
 なかには、二つの正方形に分けたものや、並べ替えたものの中に空間がある図形を作ったものがありましたが、こうしたものは不正解といたしました。
 多数の解答の中から賞を選ぶのは苦労しましたが、初級は小学生の中から選ぶこととしました。小学生なので、ルートを用いた解説はできませんが、図を用いてきちんと説明ができている人を選びました。
 応募総数991人は、これまで最高の数ですが、日本全国のみならずアメリカやイタリアなど、今や海外に在住する方からの応募まであるような大きな広がりになってきました。これから益々この企画が大きくなっていくのではないかと期待しているところです。

(菅原清市、高橋俊郎)

 

解答例

【解答例1】

 

解説

 初級問題は、中根彦循という京都の和算家が著した『勘者御伽双紙』(寛保3年(1743)刊)に収録されています。この本は上中下の3巻からなり、挿絵が豊富で、75項目にわたって数学の問題が解説されています。内容には、小町算、薬師算、百五減算、目付け字など古くからある数学遊戯に説明を加えたものが多く含まれています。
 この問題は、上巻の18番目「裁合物(たちあわせもの)事」の14種の問題のうちの第1問に掲載されています。正方形に並べかえる方法は、2種類紹介されています。江戸時代の図ですが、元の長方形と並び替えた正方形の各部分に甲・乙・丙・・・の符号がつけられていますので、初級問題を解いた方なら理解できるのではないでしょうか。
 正方形以外の並べ方も紹介されています。このように切って別の形を作る問題を「裁ち合わせ問題」といいます。

 

 

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