和算に挑戦

平成20年度出題問題①[初級問題]&解答例

 キジとウサギが合わせて50疋(ひき)います。足の合計は、122本です。
キジとウサギ、それぞれ何疋(ひき)いるでしょう※寛保3年(1743)に、鞍迫(くらはさま)観音(遠野市)に奉納された算額の問題です。

審査員講評

 今回の初級の問題は、いわゆる"ツルカメ算"に相当するものですが、奉納算額へのこの類の掲載は意外と少なく、大半が図形に関わるものです。
 初級問題への解答応募数は、昨年度より若干少ない700件余りで、最年少は小学一年生、最高齢は89歳で、全世代に亘っていました。しかし、大半は小、中学生で占められ、同じ学校からまとまっての応募が多数あり、学校なり学年で取り組まれた先生方の努力、配慮に敬意を表したいと思います。
 解答の内容は大きく分けて、試算により帰納的に解いたもの、図表などを使って解いたもの、いわゆる"ツルカメ算"によるもの、そして定石どおり方程式により解いたものでした。この中でやはり小学生の解答が何といってもバラエティに富み、その発想の多様さに感心し、審査冥利に尽きた次第です。これが、中・高生になるとほとんどが連立方程式による解答となり、その切口が一挙に特化していきました。20歳以降になると、連立方程式に再度小学生の発想のものが加わり、独自に考えた形跡が伺え興味深く拝見しました。複数解答では一人で8種を応募した方もありました。また行列式を援用した解答も2人程ありました。
 和算家が解き方を和歌にした"鶴問わば、頭の数に二を掛けて、総足数の半分を引け"を用いた解答もありました。x、yを使わず、代数に近い形、例えばxを"□"とか"キジ"に、yを"○"とか"ウサギ"に置き換えて正解を導いた解答も数件見受けました。
 小学生の解答は、その多様な考え方を楽しませてくれた一方で、正解とするかどうか悩ましい解答も多くありました。結果的には何らかの書き込みの過程があって、かつ答えが正しく記されていたものは、すべて正解としました。答えが分かっていてもその導き方をうまく表現できずに終わってしまったのでは、という配慮からです。
 問題、解答ともに分かりやすい内容だったので、正答率は非常に高く、正解としなかったのは、明らかな誤答及び答えのみ直接的に記したもので、ほんの数件に止まりました。
 この冬、貴重な時間を応募のために費やされ、努力されたことに心から感謝し講評といたします。本当にありがとうございました。

 

解答例

キジ、ウサギともに「疋」と数える。キジは足が2本、ウサギは4本である。

【解き方1】

【解き方2】

【解き方3】

【解き方4】

【解き方5】

解説

 初級問題は、岩手県遠野(とおの)市宮守(みやもり)町の鞍迫(くらはさま)観音(かんのん)に寛保(かんぽう)3年(1743)に、近くに住む幸治という人が奉納した算額(さんがく)の問題です。この算額は、2題の問題が書かれた高さ35cm、横76cmの比較的小形のもので、現在、私たちが神社で願い事を書いて奉納する小さな絵馬(えま)のように、五角形の形をしています。
 原文は、次のとおりです。


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