天保二年観音寺算額

正慶山観音寺(赤荻)に保存される算額。天保2(1831)年奉納されたもの

算額とは、日本古来の数学である「和算」を学んだ人々が、木の板に数学の問題と答えおよび解き方を書き、寺社に奉納した絵馬の一種です。算額の奉納は17世紀の中ごろには全国で行われていたとされており、奉納した人の数学の実力を世に知らしめるといった研究発表の手段として、あるいは問題を解く「ひらめき」を授けてくれた神や仏への感謝の気持ちを表すためなどの起源が考えられています。
市内赤荻に位置する正慶山観音寺には、中尊寺の末寺として古くから地域の人々のあつい信仰に支えられてきたことをうかがい知ることのできる多数の供養塔や石像とともに、2面の算額が奉納されています。そのうち天保2(1831)年に奉納された算額は、一関藩の算術師範役であった千葉胤秀の弟子である和算家、安倍貞治保定の門人5人が考えた5問の図形問題が記されており、いずれの問題も現在の高等学校の数学程度の知識があっても解くことが難しいといわれています。
平成21年10月現在、県内では103面の算額が確認され、その半数以上にあたる58面の算額が市内には所在していますが、全国の市町村単位で比較すると最多となっています。また、この58面のうち市の文化財指定を受けている観音寺の算額は3番目に古い算額でもあります。
奉納されてから約180年の長い歳月を経た今日、当時訪れた人々の目をひきつけたであろう色鮮やかさは失われつつありますが、この算額を含めた文化財は、和算が盛んであった当地方の文化をうかがい知ることのできる貴重な遺産です。

問い合わせ先
生涯学習文化課 TEL 0191-25-6595


(広報いちのせき 平成21年11月1日号)