地域医療を守り育てるフォーラム開催

地域医療の現状や課題について住民、医療関係者、行政が互いに認識を共有し、理解を深めようと、市が主催する「地域医療を守り育てる市民フォーラム」が1月14日、一関文化センター大ホールを会場に催されました。
地域医療を守り育てるフォーラム
予定を大幅に上回る参加者
当日は、両磐地区の住民、医療関係者、行政担当者など約550人が参加。
会場は、中ホールを予定していましたが、参加申し込み者が予定を大幅に超えたため大ホールに変更。
この課題への関心の高さをうかがわせました。
開会に当たり勝部市長は「医療を守るということは地域を守るということ。行政の最優先の課題であり、しっかり取り組んでいきたい。今まで以上に地域の医療を自分たちで守るという意識を持って今後の活動の参考にしてほしい」とあいさつ。
一関市医師会の長澤茂会長は「当地域で医療に従事してくれる人の招へいが求められている。隣県、隣接地との連携などにより解消していきたい」と語りました。
フォーラムは、基調講演とパネル討議を通して医療の現状と課題に理解を深め、それぞれが行う役割などを考えました。
基調講演では、初めに自治医科大地域医療学センター長の梶井英治教授が「住民、医療機関、行政の協働で地域医療を支える」と題して講演した後、千葉県東金市のNPO法人地域医療を育てる会理事長の藤本晴枝さんが「地域医療を育てる会の活動」と題して、自身が発足に携わった同会の活動について紹介しました。
地域力を終結した取り組みを

梶井英治さん

梶井教授は、全国の医師不足の現状をはじめ、地域医療を守りたいと立ち上がった各地の先進事例を紹介。
住民、医療関係者、行政がそれぞれ意識を改革した上で「地域医療を守ることはまちづくりそのもの。地域を守りたいという住民一人一人の気持ちを結集することが地域力であり、大切なこと」と地域全体で取り組むことの必要性を指摘しました。
また、「医療の本質は心の交流。一緒に考え、思いやることで育まれていくと思う」と訴えかけました。
自治医科大学医学部教授
地域医療学センター長
梶井英治さん
昭和53年自治医科大卒。鳥取中央病院での研修を経て地域医療に従事。
その後、母校に帰り、平成20年4月から地域医療学センター長
地域が変われば医療が変わる
藤本晴枝さん藤本さんは、自身が住む千葉県東金市の県立東金病院の院長から病院の内情を説明され、医師不足の現状を目の当たりにしたことを契機に「自分ができることは何か。医療現場を知ったり、考えながら活動していこう」と活動を始めた経過を振り返りました。
主な活動は「情報発信」と「病院と住民との対話づくり」と語り、地域医療の問題を分かりやすく伝える教材となる絵本の作成など、取り組みを紹介。これまでの一方通行の情報発信ではなく「相互通行」で病院や行政が深刻な状況を発信し、住民はその情報に耳を傾けて医療現場の課題を知る努力が必要と指摘しました。
「自分が変われば地域が変わる。地域が変われば医療が変わる。もうお客様でない」と結びました。
NPO法人地域医療を育てる会(千葉県東金市)理事長
藤本晴枝さん
平成17年「地域医療を育てる会」を発足、理事長に就任。
地域医療を守る代表例として全国各地で講演や発表を行っている。
それぞれの立場から意見交換も
基調講演の後、住民活動団体、医師、行政で医療問題に携わる3人によるパネル討議が行われ、意見を交わしました。 
「朝顔のたね―千厩病院を守り隊」会長の遠藤育子さんは、活動の経過を振り返り「知る、学ぶ、伝えるを基本に明るく楽しく病院と住民との懸け橋になりたい」と語りました。
一関市医師会副会長の中野淳平さんは、同医師会が開設し、年々受診者が増加傾向にある休日当番医、小児・成人夜間救急当番医の取り組みを紹介し、「医師会の活動が基幹病院を助けている」と実績を報告。
また、平均年齢が高くなっている開業医の現状にも触れ「医療の高度化、多様化、休日当番医などにより開業医も疲弊している。かかりつけ医を持って、よく相談し、病院と診療所を効率よく利用してほしい」と呼び掛けました。
一関保健所長の菅原智さんは、県内の医師不足の状況とその背景、医療懇談会の開催など県としての取り組みをデータを交えて紹介。
「それぞれの地域で、住民が病院を守ろうとする活動が広がっている」と分析し「住民の自発的な活動を大切にし、市町村との連携を強くして地域の実情に即した取り組みを続け、医師確保に結び付けたい」と語りました。
フォーラムに参加した病院事務員の奥寺高広さんは「住民の皆さんの医療に対する考え方を聞けるいい機会で、非常に有意義だった。自分に何ができるか考えて頑張りたい」と述べていました。
大勢の参加者が訪れ、熱心に聞き入っていました
パネラー紹介

菅原智さん

中野淳平さん

遠藤育子さん

菅原智さん
岩手県医療局に入局以降、各地の県立病院で外科医として勤務。
県立大東病院長などを経て、一関保健所長。
中野淳平さん
一関病院循環器内科長などを経て、中野内科循環器科クリニックを開院、同院長。
一関市医師会副会長。
遠藤育子さん
「朝顔のたね―千厩病院を守り隊」会長。
住民に病院主催の講座内容などを分かりやすく伝える活動を展開中。

私たちもできる医療を支える行動

1.普段から健康管理に心がけましょう
自分の健康に無関心では、病気を防ぐことはできません。
「自分の健康は自分で守る」という意識を持って、病気の予防や食事や運動など、健康管理に心がけましょう。
2.かかりつけ医を持ちましょう
気になるとき、遠くの病院に行くのではなく、開業医や診療所などの「かかりつけ医」を受診しましょう。
かかりつけ医は、大病院に比べて待ち時間が短く、受診の手続きも簡単で、じっくり診察してくれます。
入院や高度な検査が必要な場合などは、適切な病院と診療科を指示し、紹介してもらうことができます。
3.診療時間内に受診しましょう
病気やけがなどで医療機関にかかる場合は、なるべく診療時間内に受診しましょう。
夜間診療は、救急や緊急時のみの受け付けとなっていますので、軽症のときは症状を見ながら、翌日の診療時間内に受診しましょう。
本当に必要な人が、必要なときに受診できるよう、コンビニ感覚での夜間受診を控えるようにしませんか。
時間内に受診することは、医師の負担を軽くするほか、専門医の診断や検査を受けることができるメリットがあります。
病院にかかる場合には、事前に予約制かどうか診療体制を確認することが必要です。
4.お医者さんに感謝の気持ちを伝えましょう
医師は外来患者の対応や入院患者の診察はもちろん、緊急手術、患者への説明、書類作成、研修医の教育・指導など多忙な業務を全体の人手不足を補って働いています。
医師に感謝の気持ちを伝えましょう。
5.休日や夜間の受診は当番医を利用しましょう
休日や夜間に具合が悪くなったときは、両磐地域の休日当番医や小児・成人夜間救急当番医を利用しましよう。
【休日当番医診療日】
日曜・祝日、年末年始
診療時間…9時~17時
【小児・成人夜間救急当番医】
診療日…平日
診療時間…18時~20時
*事前に医療機関に電話で確認してください。
*当番医は、市役所本庁電話0191-21-2111や消防本部(電話0191-252-0119のほか、広報いちのせき、当日の新聞、市ホームページでも確認できます。
病院のかかり方をコミカルに演じ会場を沸かせた「朝顔のたね」の皆さん

フォーラム参加者のアンケートより

フォーラムに参加した皆さんから多くのご意見をいただきました。その一部をご紹介します。
市民が医療の実情を知ることから始める必要があると思います。そのため、講演の内容にもありましたが、病院が住民と話し合いを行うことから始めることだと思います。(一関市・60代男性)
問題解決のために私たち住民も何かしたいと、最近思えるようになってきました。(一関市・60代女性)
医師の方々の重労働には驚かされます。どうしたらよいのか、何をしたらよくなるのか全く分かりません。これから指導していただき、参加していきたいと思います。(一関市・60代女性)
住民が地域医療を守ろうという活動が行われてきていることは大変すばらしいと思いました。ただ、国の施策でこの医師不足が起こっているのも事実です。これの対策は、国として再考が必要と考えますが、住民が医療・病院に関心を示し、共に前に進もうとなっていることは良いと思います。この動きを大切に育てていくことが重要と思います。(栗原市・50代女性)
住民にまず情報発信をしてほしいと思っていましたが、住民が自ら学ぶ、情報を得ることが大事だということがわかりました。(平泉町・60代女性)
地域住民に現在の医療状況、医師不足、過重な医師の業務実態をわかってもらうアピールは大切だと思う。具体的な行動が、住民サイドからでなくていいと思う。(宮城県・50代女性)
病院の現状を知る努力、病院のために何が出来るか考え実行しようとする意識をまず持つことだと思いました。病院と住民とのコミュニケーションの場を増やすことの大切さを感じました。(藤沢町・70代男性)
地域医療を担当する、藤野裕 市政策推進監
藤野裕 市政策推進監今回のフォーラムは、地域医療の現状や課題について、住民、医療関係者、行政が認識を共有し、参加者それぞれが地域医療を守り育てるために何ができるのかを共に考えるとともに、地域医療を守り育てる住民活動の活性化を狙いとして開催しました。
市内では、地域医療を支えるため、医療機関のサポートや病院の現状を理解し、医師への感謝の思いを伝えるなどのさまざまなボランティア活動が展開されています。
「地域医療は、医療者、地域、行政、議員が一緒につくるもの」。
これは、東金市の地域医療を育てる会が定めた七つの約束の一つです。
住民、医療関係者、行政が地域に対する思いを共有し、お互いが連携しながら、限りある地域の医療資源を守り育てていくため、市民の皆さんの一層のご協力をお願いします。

医師修学資金貸付制度の活用を医療への熱い思いを応援します

市では、市内の医療機関で医師として勤務しようとする医学生を支援するため、医師修学資金を貸す制度を平成23年度から始めます。
一定期間、市内の指定医療機関勤務により返還が免除されます。
【対象者】

国内の大学の医学部に入学(在籍)する人で、次の指定医療機関の医師として従事する意思のある人

▽市が設置する医療機関
    1. 国保猿沢診療所
    2. 国保室根診療所
▽指定する医療機関
    1. 県立千厩病院
    2. 県立大東病院
    3. 県立南光病院
    4. 医療法人博愛会一関病院
    5. 医療法人社団愛生会昭和病院
    6. 医療法人西城病院
    7. 医療法人西城病院ひがしやま病院
    8. 独立行政法人国立病院機構岩手病院
【募集人員】

 1人

【貸付金額】
▽入学一時金

760万円の範囲内(私立大学1年次入学者のみ)

▽月額貸付金

月額30万円の範囲内

【貸付期間】

大学の正規の修学年限(最大6年間)

【貸付方法】

▽月額貸付金を毎月貸し付けます。

▽入学一時金は、1回目の貸付時に貸し付けます。

【返還の免除】

医師として2年間の臨床研修を受けた後、指定医療機関で通算して修学資金の貸付を受けた期間の2分の3に相当する期間勤務した場合、全額免除します。

【申請方法】

次の書類を市役所本庁企画振興部政策推進監に直接持参するか、または書留郵便により提出期限までに提出してください(期限必着)。

なお、封筒に「一関市医師修学資金貸付申請書在中」と明記してください。

  1. 医師修学資金貸付申請書
  2. 戸籍抄本
  3. 写真を張った履歴書
  4. 健康診断書
  5. 大学の合格通知書の写し (23年度新入学生に限る)
  6. 大学の在学証明書及び成 績表の写し(在学生に限る)
【保証人】

2人

うち1人は市内に居住する人。

父または母がある場合は、1人は父または母。

【申請書提出期間】

2月15日(火)から3月24日(木)まで

【面接日など】
▽面接日

3月28日(月)(時間は後日、お知らせします)

▽面接場所

市役所本庁

▽面接方法

申請者ごとに個別に行い、面接に当たっては、原則として申請者本人と父母のうちいずれか1人の計2人に行います。(父母がいない場合は、保護者)

【採否決定の告知】

採否の決定は、4月中旬に申請者本人に文書で通知します。なお、公表は行いません。また、採否の問い合わせには、応じません。

【その他】

一関市医師修学資金貸付については、一関市医師修学資金貸付条例および一関市医師修学資金貸付条例施行規則に基づき行います。

◎申込先・問い合わせ先

本庁政策推進監

〒021-8501 一関市竹山町7-2 電話0191-21-21111(内線8172)

(広報いちのせき 平成23年2月15日号)