米の出荷などは自粛要請解除
野生キノコ類は基準値超え、出荷制限へ

岩手県が実施した平成24年産米の出荷前調査で本市は、市内全域で基準値を大幅に下回り、出荷などの自粛要請が解除されました。
一方、野生キノコ類から基準値を超える放射性セシウムが検出されたことを受けて県は、本市産の野生キノコ類の出荷などの自粛を要請。
今季中の出荷は困難になりました。

米の出荷前調査が完了
市内全域で出荷など可に 

平成24年産米は、県が行う出荷前検査の結果が判明するまで出荷・販売・譲渡・贈答を自粛するよう要請されていました。

本市の出荷前検査は9月18日と24日に地域(昭和25年当時の旧市町村)単位で行われました。
市内82地点から検体を採取して検査した結果、71地点は不検出(検出下限値未満)でした。
それ以外の11地点は放射性セシウムが検出(放射性セシウム合計値の最高値は1キログラム当たり11ベクレル)されたものの基準値を大幅に下回りました。

これによって自粛要請が解除され、9月26日からは市内全域で米の出荷・販売・譲渡・贈答ができるようになりました。

米と同じく出荷前検査の結果が出るまで自粛要請されている大豆とソバは、9月下旬からそれぞれ検体の採取と検査が行われています。

一関産野生キノコ類から基準値を超えるセシウム

市は9月から販売用の野生キノコ類を優先的に測定してきました。

このうち採取されたホウキタケから基準値の2分の1(1キログラム当たり50ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたため、市は県に精密測定を依頼しました。

精密測定の結果、1キログラム当たり1400ベクレルの放射性セシウムが検出されました。
この結果を受け県は、9月11日付で一関市産野生キノコ類の出荷・採取などの自粛を要請しました。

国と県が示した野生キノコの「出荷制限指示等の品目・区域の設定・解除の考え方」によると、基準値を超える野生キノコが採取された場合、採取地の市町村を最小範囲にする区域で、全ての野生キノコの出荷制限を要請することになっています。

その後、採取地を含めた3カ所以上を1カ月単位で検査し、その全てが基準値以下になった場合に出荷制限が解除されます。
野生キノコは収穫時期が短いため、今季中の解除は困難と思われます。

市内産農林産物の放射性物質濃度

県が「県産農林水産物の放射性物質濃度の検査計画」に基づき実施した一関市産の米と野菜など(9月分)の放射性セシウムは、5品目全てで基準値を下回りました〈表2〉。

また、市民の依頼で市が9月に測定した農林産物は126検体。食品衛生法上の基準値(一般食品100ベクレル/キログラム)を超えたものは1検体(野生キノコ類)、基準値以下は3品目13検体でした。
その他の112検体は不検出でした〈表3〉。

農産物の測定方法が変わります

市民などから依頼を受けて市は、市内で生産(採取)された農林産物の放射性物質濃度の測定を行っています。
このほど、測定時間の短縮や測定ごと・核種ごとに「検出下限値」を測定できるよう測定機器のソフトウェアを更新しました。

これを受け、10月からの測定が一部変わります。
(1)個人からの申し込み受け付けを1点から2点に増
(2)測定の結果、不検出の際「検出下限値」の数値を表示

「検出下限値」は、分析条件下で機器が検出できる最小値。
自然放射線など測定検体以外からの放射線の影響、測定検体の重量、測定容器への充填(じゅうてん)具合、測定時間の長さなどで変動します。

これまで測定時間により核種ごとに一律25ベクレル(または10ベクレル)未満は「不検出」と表示していた測定結果の表示を、10月測定分から次のように変更します。
(1)測定値が検出下限値未満の場合…「不検出」(<○○)と表示し、カッコ内の「<」(不等号記号)の後に測定された「検出下限値の数値」を表示する
(2)「不検出」(<検出下限値)の表示は、放射性物質濃度が「測定された検出下限値」未満であったことを表す

なお、10月測定分から検出下限値を、市民からの依頼測定は放射性セシウムの合計が1キログラム当たり25ベクレル以下、学校給食と給食食材の測定は核種ごとに1キログラム当たり10ベクレル以下になるよう測定時間などを設定して取り組んでいます。

<表2> 県による一関市産野菜などの放射性物質濃度検査結果(9月)

品目 測定結果 検出下限値
リンゴ(露地) 不検出 15未満
日本ナシ(露地) 不検出 14未満
ネギ(露地) 不検出 13未満
エダマメ(露地) 不検出 15未満
米(昭和25年当時の
旧市町村の33区域で
採取し検査)
◆検査した82地点全てで基準値を下回った。
検出された区域は次の9区域11地点。
旧厳美村(3.4)、旧萩荘村(4.7、4.8)、旧花泉村(3.7)、旧金沢村(3.6)、旧奥玉村(3.5)、旧磐清水村(3.8)、旧松川村(6.6、2.7)、旧田河津村(11)、旧折壁村(2.8)
◆上記以外の31区域71点は不検出でした

●測定機関 (野菜類)岩手県農業研究センター(米)日本冷凍食品検査協会
●測定機器 ゲルマニウム半導体検出器
●単位 ベクレル/ kg

<表3> 放射性セシウム134と137の合計値の結果区分ごとの検体数(9月)

品目

基準値

(100ベクレル/ kg)以下の検体数。

( )内は「不検出」(*注1)検体数

基準値

(100ベクレル/kg)

超過の検体数

穀類 小豆 9(9) 0
 
 
 
 
野菜類
 
 
カボチャ  10(10)

 0

サツマイモ 8(8) 0
サトイモ 6(6) 0
ジャガイモ 5(5) 0
マコモタケ 5(3) 0
ミョウガ 5(5) 0
ダイコン 3(3) 0
ハクサイ 3(3) 0
果実類          リンゴ 6(6) 0
ナシ 4(4) 0
ブドウ 4(4) 0
林産物 クリ 15(6) 0
野生キノコ類 6(4)  1

●測定検体数が3以上の品目を一覧
●4月からの食品衛生法上の基準値(一般食品100ベクレル/kg)に基づき区分。
*注1…「不検出」は検出限界値未満を示し、核種ごとに25ベクレル/kg(40分測定)
●測定場所 南部農業技術開発センター(花泉町金沢)北部農業技術開発センター(大東町摺沢)
●測定機器 トライアスラーベクレルファインダー(シンチレーション放射線核種測定器による簡易測定) 

萩荘小PTAが研修会
放射線への理解を深める

萩荘小学校(千代川晶則(ちよかわまさのり)校長、児童412人)PTA(齋藤育子会長)が主催する研修会「理解が深まるやさしい放射線セミナー」は9月14日、同校で開かれ、参加した保護者ら約50人が放射線への理解を深めました。

研修会は、東京電力福島第1原子力発電所の事故で放射性物質汚染が問題になっている中、子供たちを安全に育てる正しい知識を得るために開かれたもの。
環境省除染情報プラザの横掘仁(よこほりひとし)さんが講師を務めました。
横堀さんは「放射線の基礎知識」「被ばくによる健康被害」「除染計画の概要」などについて説明。
本市の現状について「放射線量は、健康への影響がほとんどないレベルまで減少している」と述べました。
復旧・復興を進めるためには「住民参加によるきめ細やかな除染、健康状態の継続的な監視など、国や自治体だけではなく市民一人一人が取り組むことが必要」と呼び掛けました。

齋藤会長は「目に映らない放射線に不安や疑問を抱いてきたが、今回の研修で解消された。市の現状も改善されてきていることが理解できた」と話していました。

萩荘小PTA
保護者ら約50人が放射線への理解を深めた萩荘小PTAの研修会

放射能測定情報はこちらから

●市ホームページ「環境放射能に関する情報」(福島第一原子力発電所事故関係)
http://www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/1,0,157,html
●岩手県ホームページ「環境放射能に関する情報」(福島第一・第二原子力発電所事故関係)など
http://www.pref.iwate.jp/

広報いちのせき「I-Style」 平成24年10月15日号