市長 浅井東兵衛 豊穣の秋真っ盛り、「灯火親しむの候」となりました。秋は食欲の秋、スポーツの秋と同時に勉学の秋でもあります。一関は古来、勉学の盛んな地で、多くの偉大な先人を輩出しています。
 その中の一人、刑法学の先駆者、芦東山を顕彰する記念館のオープニングに出席しました。室根山を目の前に仰ぐ素晴らしい景観の地に施設が完成したことは、教育立市を大きな柱に掲げている当市にとって誠に喜ばしいことです。
 芦東山は身分制度が厳格な時代、藩の学問所で学生の席順を身分ではなく年齢順とすることを提唱するなど、人として誰もが平等であるという精神を掲げ、人間愛を基調に刑法理論の根本原理を論じた「無刑録」を著しました。
 教育の根本は、知識や技術を教えることもさることながら、まず第一は人間愛を育てること。現代はこの人間愛が薄れ、それがかつては考えられないような事件の発生に結びついているのではないか、現代に生きるわれわれは、未来を生きる子どもたちのためにどのような社会を築いていくべきか─など、さまざまなことを改めて考えさせられた一日でした。   

(広報いちのせき平成19年11月1日号)