和算に挑戦

平成16年度出題問題③[上級問題]&解答例

 長方形内に等円が2個内接し、図のように長方形の上に楕円がのっています。このとき長方形の2本の対角線を延長すると楕円の接線になりました。楕円の長軸の長さを求めて下さい。
 ただし、楕円の短軸の長さと等円の直径は与えられているとします。
※弘化4年(1847)に春日神社(一関市萩荘)に奉納された算額の問題です。

審査員講評

 上級は、高校1年生から87歳の方まで64名の方から解答をいただきました。正解者は42名(65.6%)でした。ただし、長軸の長さを解答していないものは正解としませんでしたので、最後の符合間違い、また書き間違いなどを含めると実質的な正解に達した人は53名(82.5%)になります。解答の大多数は楕円と直線が接する条件である2次方程式の判別式が0となることを用いたものでした。また、ほぼ全員が座標を入れた解析幾何での解答でした。
 中には、アファイン変換を用いる解答3種や、極と極線の関係を利用するものなど、深い考察に感心致しました。

 

解答例

【解答例1】


 

【解答例2】



解説

 実際の春日神社に奉納された算額には、次のように書かれています。

(現代訳)
 今、図のように長方形(直)の中に等円を二個いれて、二本の斜線を交叉させ楕円(側円)を載せる。その短径及び等円の直径(径)
を若干とするとき、側円の長径を求める術はどのようなものか。

 左の文のとおり

 短径を置き、これを2倍し、等円径を加える。これに等円径をかけて平方に開き2倍すれば長円径を得て、問いに合う。

 この問題の解義書(和算家による解答をまとめた書物)は見つかっていないので、当時の奉額者がどのようにして解いたのかは不明です。
算額の術文には、

とあります。
 江戸時代の我国では、解析幾何学は使われていませんでした。ではどのようにして解いたのでしょう。次のような和算公式を使った解答が考えられます。

『算法助術』(長谷川弘校閲 山本賀前編)という本は、和算の公式集で、その82に3つの公式が紹介されています。

これを利用して解くことができます。(1)(2)を解いて(3)の解を得ます。



 

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