和算に挑戦

平成16年度出題問題②[中級問題]&解答例

 上面が長方形の図のような楔形(くさびがた)があります。
(1) 長、平、刃、高を使って、この楔形の体積を求める公式を作って下さい。
(2) 長の長さ12cm、平の長さ7cm、刃の長さ6cm、高の長さ8cmの時、(1)で作った公式を用いてこの楔形の体積を求めて下さい。
※『算法新書』(千葉胤秀編、文政13年(1830)刊)巻の二にある問題です。

(参考)この楔形の平面図、立面図、側面図は図のとおりです。

審査員講評

 中級問題へは128の解答をいただきました。問題は、前半が楔形の公式を使って体積を求めることでした。前半の公式を作る過程が全く無く公式のみを示した解答が意外と多く約2割もありましたが、式は正しくても不正解としました。題意をしっかり把握することが基本となります。公式は殆どが角錐を角柱に分割し統合するもので、図や説明にそれぞれの工夫がみられました。分割以外では、一人で複数の解答を提出していただいた中に、積分によるもの8件、重心、シンプソン公式の援用が各1件ありました。まとめの段階でもう一歩の解答も多々ありましたが式が合っていれば正解としました。後半の数値計算では前半できちっとした公式を導いた場合は、まず誤りはありませんでした。練り上げ不足を反映した、符号、数値代入のミスがみられました。
 解答と併せて問題毎の感想文も多く寄せられ楽しく拝見しました。案外難しかったけれども自分の力で成し遂げた喜びが伝わってくる内容には本当に嬉しく思いました。中には案外簡単だったとみくびって誤った結果を導いたのもあり油断大敵、念には念を入れが基本ということになりましょうか。問題を解く過程に創意工夫の喜び、そして若干の遊び心があれば「挑戦」への味付けが更に増すのではと思いました。

 

解答例


 

解説

この問題が掲載されている『算法新書』巻の二の原文をみてみましょう。

 

 『算法新書』巻の二は、「求積」の項となっており、面積や体積を求め方を解説した部分です。この中に楔形(原本では 「楔(けつ)」)の体積の求め方があります。
現代的に訳すと次のようになります。

長さ1尺2寸、平7寸、刃6寸、高さ8寸。体積はいくらか。
答え 体積は、280歩
その方法(術)は、長さ1尺2寸を2倍して、刃6寸を加え、平7寸をかけ、高8寸をかけ、定法6で割って積を得る。

最後の解き方(術)の部分を数式で表すと

となっており、当時、楔の体積の公式は知っていたと思われます。

 

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