和算に挑戦

平成19年度出題問題③[上級問題]&解答例

 円Oに、図のように四角形ABCDが、点A´、B´、C´、D´で外接しています。このとき、円の半径rをa、b、c、dで表してください。
 ただし、a=A´B、b=B´C、c=C´D、d=D´Aです。
※天保12年(1841)に出版された山本賀前編『算法助術』にある問題です。

審査員講評

 上級は中学2年生から85歳まで161名の方から187件の応募をいただきました。正解数は123件で正解率は65.8%でした。
 結果のみ記載されているものや、結果が合っていても途中の導き方に間違いが見られるものは正解とはしませんでした。

 正答の大多数は、次の3通りに大別できました。
 (1) 内接円Oの中心角を用いて三角関数で解く方法
 (2) 四角形ABCDの面積を2つの三角形の面積和として表し、円Oの半径rの複2次方程式を導いて解く方法
 (3) 四角形ABCDの相対する2辺を延長して交点を作り、ヘロンの公式等で四角形ABCDの面積を導き出して解く方法

 他に座標を導入して解いている方や、始点を上手に設定してベクトルで解いている方も数名おりました。また、7通りもの解法を示された方もおり、柔軟な思考力と意気込みには敬服する思いでした。
 各賞の受賞者は、論理が明快でできるだけ簡潔な解答をされた方々から選定いたしました。過去に受賞され今回も受賞の対象者として十分な方々がおりましたが、その方々には今回はご遠慮いただき新人の方々に道を譲っていただきました。
 挑戦者の皆様の熱意と根気に敬意を表し、採点と審査を終わらせていただきます。本年度もありがとうございました。

(三田信一、安富有恒、横田晴充)

 

解答例

【解答例1】

【解答例2】

相似比を用いたもので、和算家は、このような方法で解いたと思われます。




 

解説

 上級問題は『算法助術』の37番に掲載されています。『算法助術』は天保12年(1841)に、長谷川弘(ひろむ)閲、山本賀前編で、千葉胤秀の『算法新書』と同様に、江戸の長谷川数学道場から出版されたものです。長谷川弘は、初め佐藤秋三郎といい南方村(現在の宮城県登米市南方町)の農家に生まれ、千葉胤秀の紹介で長谷川道場に入門、長谷川寛(ひろし)の養子となった人です。
 『算法助術』は基本的な幾何学の公式105種をまとめたもので、「助術」の名の通り、種々の問題の解決の助けとなるとても便利な本です。

 

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