和算に挑戦

平成21年度出題問題③[上級問題]&解答例

 三角形ABCにおいて、頂点A、B、Cから、3つの線分を引き、図のような相似三角形A´B´C´を作ります。
(但し∠CAB=∠C´A´B´、∠ABC=∠A´B´C´です。)
 AB=3cm、BC=6cm、AC=4cm、AA´+BB´+CC´=5cmであるとき、CC´の長さを求めなさい
※一関の和算家千葉胤秀が編集した『算法新書』(文政13年(1830)刊行)にある問題です。

審査員講評

 今回の上級問題の正答率は、74.7%でありました。これは過去の正解率と比較して3番目に高い正答率でした。また、応募者数は136人で、この4年間(第5回~第8回)の中では最も少ない応募者数でした。今回の上級問題は、一見取り付きやすい感じの問題ですが糸口をつかみ損なうと迷路に入りこんでしまう問題だったのでしょうか。応募者数が少なかったのにもかかわらず正解率が高率であったのは自分の答案に確信を持った方々が応募された結果と思われます。
正解の大多数は、次の3通りに大別できました。

① 三角比(正弦定理、余弦定理)を利用して解いたもの

② 図形の特徴を上手にとらえて解いたもの
    ・相似を利用
    ・面積を利用
    ・外接円を利用
    ・回転を利用

③ 幾何の定理(メネラウスの定理など)を利用して解いたもの

 解答の割合が比較的多かったのは①の方法を用いたものでした。
 どの解答も、じっくり取り組んだ姿勢が伺われました。流石に数学が好きな方々の解は素晴しく採点していて感心させられることしばしばでありました。
 ひとりで何種類かの解を準備し、それが全て素晴しい内容であった方もありました。特に6通りの解答を寄せられた方がおり、その解法はどれも論理がしっかりしており見事なものでありました。
 なお、正解としなかった例をあげますと次のようになります。
 ・結果のみ記載しているもの
 ・作図等を行い、長さや角度を近似値を使って推測して結果を求めているもの
 ・結果が合っていても途中の論理が飛躍して不明なもの
 ・論理を正確に進めながら結果が一般解だけで終わっているもの
 ところで、応募された50歳代の方から次のような感想が寄せられました。
 「今回の問題は、図形としては単純なのに直ぐには解答が思いつかず、元旦の暇つぶしに大卒の子供と競争してしまった。こんな問題に取り組むのは40年ぶりですが、昔の杵柄はまださび付いてはいなかったようです。このような出題の企画に感謝申し上げ、今年も1年間仕事に頑張ります。」
 出題に携わっている我々にとっては大変励みになる言葉でありました。来年度も皆様から感謝と評価を得られるよう一層の努力をして参りたいと思っております。
 最後に挑戦者の皆様の熱意に敬意を表し、採点と審査の報告とさせていただきます。

 

解答例

解説

 上級問題は、『算法新書』巻の三の「点竄術(てんざんじゅつ)」の「実問」の項、21問のうちの8問めにあります。「点竄術」の「点」は「のこす」、「竄」は「のぞく」の意味(大槻文彦『言海』)で、加減乗除の計算を記号によって表す代数の方法のことです。

 原文は以下のとおりです。




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