館蔵品

言海げんかい

言海

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 大槻文彦著
 縦27.5cm 横20.0cm
 明治24年(1891)完成


 ねこ=温柔ニシテ馴レ易ク、又能ク鼠ヲ捕フレバ畜フ、然レドモ窃盗ノ性アリ、形虎ニ似テ二尺ニ足ラズ、睡ヲ好ミ寒ヲ畏ル
 芥川龍之介も目にとめたこのユニークな解説は国語辞典の一節です。書名を『言海』といいます。著者は大槻文彦、一関出身の蘭学者大槻玄沢の孫でした。
 文彦は祖父を蘭学者、父を漢学者に持ち、自身は若い頃英学に没頭していました。その彼が国語辞典を作るきっかけになったのは明治の初め、文部省に入省した事によります。まだ本格的な国語辞典がなかった時代、国はその編纂を彼一人に託したのでした。文彦はアメリカ最新の英語辞典に範を求め、日本の古典をひもとき、広く言葉を採集し、語源を探り、的確な語釈を考え、さらには日本語文法を創作して、こつこつと国語辞典完成に向け筆を進めていきました。その間の血の滲むような努力は想像を絶するものでした。
 明治24年(1891)遂に足かけ17年に及ぶ努力が実を結び、日本初の本格的な国語辞典『言海』は私費出版で産声をあげました。それは河口から注ぎ出た水の如く言葉の大海となり、その後数多く作られていく国語辞典の源として不朽の名著となっていきました。

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