「好きなことできる自分は幸せ」和菓子製造の“塩梅”を緻密な記録で後進に伝える

佐藤義光さん

和生菓子製造で厚生労働省「現代の名工」に表彰された
佐藤義光さん

昭和32年(株)松栄堂に入社。同社取締役相談役。

和菓子職人として現場に立つ傍ら商品開発などを行う。

一級和菓子製造技能士。72歳

選された素材を繊細な感性で作り上げ、四季を表現する匠、和菓子職人。松栄堂に勤務する佐藤義光さんは、和生菓子製造の卓越した技能が認められ、20年度「厚生労働大臣が行う卓越した技能者の表彰」(現代の名工)に選ばれました。

統を受け継ぐ一方で、新しい菓子を生み出す感性が必要とされる和菓子作り。中でも、佐藤さんが得意とする「工芸菓子」は、花鳥風月を菓子で表現するもの。趣味の盆栽や山歩きで培われた、自然を見つめるまなざしが生かされています。20年4月、兵庫県姫路市で行われた全国菓子博覧会では、岩手県の出品作品である「金色堂」の制作を担当しました。

社の看板商品「ごま摺り団子」の商品開発の先頭にも立った佐藤さん。「田むらの梅」では、製造はもとより契約農家に対してシソの栽培指導も行っています。
人の技は、経験による「塩梅」加減の習得がものをいいます。佐藤さんはその技を後進に伝えようと、室内温度、湿度、糖度、水量などを細かく記録した手順書を作成。「徒弟制度だった昔とは違う」と、従業員の気質を見極めて適切に、そして温かく指導します。
今後は「これまで会社に世話になったお返しのため、体が動くかぎり菓子作りを続けたい」とさらに先を見つめています。

(広報いちのせき平成21年1月15日号)