博物館だより19

生活に根ざした編み組みもの

蓑(表)蓑(裏)

 

主に稲わらを用い、その茎を乾燥して編み込んだものをわら細工といいます。わらは、手に入りやすく加工がしやすいのでよく用いられますが、より丈夫に使いやすくするため、家の近くの野や山に自生する草や木、つるの皮が織り込まれました。時には見た目を美しくするため、刺しゅうを施したりもしました。稲わらばかりでなく、近くに自生する植物の素材を集め、自らの手で編んでいくところから、これらは「編み組みもの」と呼ばれています。
この編み組みものの中で、田畑の仕事や山仕事の際、雨や雪、日照を防ぐために身につける外套の役目をするものに蓑があります。一関近辺では、体の脇から包み込むように着るものを「みの」と呼び、肩から背中に垂れ下がり、体を包み込まないものは「けら」と呼ぶことが多いようです。
素材は稲わらのほかに、スゲなどの草やシナノキ(マダ)、ウリハダカエデ、オニグルミなどの樹皮や、ヤマブドウなどのつるも部分的に編み込み、強度を持たせます。水をはじくにはシナノキよりもウリハダカエデの方が良いともいいます。いずれにせよ、地域に自生する草木を利用しました。
写真の蓑の表側は、所々褐色の樹皮を用い、襟には黒の糸で補強をしていますが、これが見た目にはおしゃれな感じさえします。また、裏側には細く編んだ縄を編み目状にしたものを裏地とすることで、通気性を良くしています。使う人の身になって細かく配慮された造りには、作製者の優しさと思いやりが強く感じられ、それが見た目の美しさとなって表れています。

一関市博物館案内

テーマ展民芸の美 菅原清蔵コレクション2

宗悦の民芸運動に共鳴し、岩手県南地方を中心に多彩な民芸資料を収集した菅原清蔵のコレクションを、一括寄贈を機に公開します。柳や棟方志功などとの交流も紹介します。上記の蓑など、生活用具も含まれています。
■会期…3月15日(日)まで

展示解説会

学芸員が展示資料を解説します。
■日時…3月8日(日)14時~15時※通常入館料で観覧いただけます。

柳当たり箱(筆記用具を入れる箱)花巻人形 鯛くわえ猫

(広報いちのせき 平成21年3月1日号)