確実な一歩を踏み出す中東北拠点都市の基礎づくり

施政方針を述べる勝部市長
勝部修市長は、2月22日、第31回市議会定例会で23年度の施政方針を示しました。
本号では、その概要をお知らせします。
 

グローバル化と地域の自立

 地方の経済情勢は依然として厳しい雇用環境にあるなど、危機的状況から抜け出せない状況に置かれています。
それに加え、グローバル化の波の中にあります。
その危機を乗り越えるためには、解決に向けて行動を起こすことが必要であり、これが地域としての自立につながっていくものと考えています。

課題に立ち向かう平成23年度予算

 23年度当初予算の総額は604億5900万円、前年度より2・7パーセントの増額です。
当初予算の総額としては合併以降最大となる積極型で、「中東北拠点都市への基礎づくり予算」とし、市民生活のさらなる安定を図り、明日につながる確実な一歩を踏み出すことを念頭に編成しました。
重点施策(1)子育てを応援するまちづくり
医療費無料化の対象年齢を就学前から小学生に拡大し、子どもの健康増進と保護者の経済的負担の軽減を図ります。
また、子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチンおよび小児用肺炎球菌ワクチン接種事業を全額公費助成により実施し、疾病の予防に努めます。
さらに、子育ての各段階に応じた相談や支援が行えるように、スタッフの充実を図るとともに、発育期における支援が必要な子どもに対する特別支援教育を拡充します。
重点施策(2)雇用対策と産業振興
雇用対策(入り口から出口まで)
技能・技術などの資格取得を支援するほか、雇用の安定・定着を図るため、地域企業パワーアップ支援事業および中小企業の魅力発信力向上事業を実施します。
また、ふるさと就職支援事業を実施し、新規高卒者の地元就職を支援するとともに、介護保険事業所等人材確保支援事業などの拡充を図り、地域で働く人材の確保を支援します。
産業振興(地産外商に挑戦)
「一関産」が全国に通用するブランドとなるよう、物産や観光資源のブランド力を高め、一関のめぐみブランド化推進事業や一関の物産と観光展の開催、地域資源販路開拓事業などを強力に推進します。
 
24年度に予定されている「いわてディスティネーションキャンペーン」のプレ・キャンペーンを展開し、地域の観光資源を内外にアピールします。
さらに、栗駒山を囲む宮城県栗原市、秋田県湯沢市ならびに東成瀬村と連携して、県境を越えた中東北としての観光商品づくりに取り組みます。
重点施策(3)中東北の拠点都市一関の形成
基幹となる道路網の整備を進めるとともに、地域医療や観光などの県際連携を積極的に推進します。
 
子どもたちを筑波研究学園都市に派遣し、研究者と交流する機会をつくり、学術研究都市としての構想策定にも取り組みます。
 
磐井川堤防改修事業については、市街地の将来を見据え、世代間交流などのエリアを設けるなど、ゾーニングについて検討していきます。
 
協働推進アクションプランを実践するため、市内30公民館の区域を基本に、横断的な組織づくりに取り組み、市民活動団体が活動しやすい基盤づくりを促進します。
市全域を通じたコミュニティの醸成と災害防災情報の迅速な提供を目指し、コミュニティFMラジオ局の開局に向けた準備を進めます。
 
また、移動市長室の実施のほか、いちのせき元気な地域づくり事業を拡充し、市民との創意工夫により、市全体の活性化につなげていきます。
 
平泉文化遺産の世界遺産登録に向けては、最大限の支援を行うとともに、登録実現後は、県が企画実施する「いわて平泉年」の取り組みと連携し、地域づくりに生かしていきます。
「平泉ナンバー」の実現に向けた運動を進めます。

分野別の主な施策

(1)地域資源を生み育て賑わいと活力あふれるまちづくり

農作業体験をする子どもたち

農業

生産体制の強化と担い手の育成、高付加価値化と販路拡大を総合的に進めます。
情報発信力を高めながら、信頼される産地づくりを目指します。
経営感覚に優れた農業者や効率的な営農組織の育成、加工・販売など農業の6次産業化に向けた人材の育成に努めます。中山間地域等直接支払制度や農地・水保全管理支払交付金などを活用した取り組みを支援します。

安全・安心でおいしい米づくりを促進し、水田の基盤を生かした作物再編を進めます。
経営の安定化と国内生産力の確保を図るとともに、戦略作物への作付転換を促進し、食料自給率の向上と農業の多面的機能の維持を目指すため、国の農業者戸別所得補償制度の推進と活用に努めます。

ナス、トマト、小菊、干しシイタケを中心とした生産振興策を講じ、市場に信頼される安定産地の確立を目指すとともに、地産地消の拡大を進めます。
ハクビシンや熊などによる農作物の被害対策については、市鳥獣被害防止対策協議会を中心に、その対策に取り組みます。

経営体質の強い畜産農家の育成に努めるため、経営基盤の確立や優良素牛の導入などを促進します。
また、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザなどの家畜防疫対策は、県と連携して取り組みます。

花泉農業開発センターおよび大東農業技術センターを統合し、生産技術の向上など、農業振興を図ります。

農業生産基盤の整備については、必要な予算の確保を国、県に対し、強く要望し、一関第1地区などの整備を促進するとともに、山口地区に着手します。
農業用施設の保全は、新たに瑞山地区に着手するなど、機能確保と長寿命化を図ります。

市有林や民有林の除・間伐を進め、森林の健全な育成と資源の活用を促進するとともに、CO2の削減や水源の涵養など、森林の持つ公益的機能の維持増進を図り、適切な森林施業の実行に取り組みます。

TPP※への対応については、日本としての産業の形づくりにつながる重要な課題と捉えており、国民的な議論が深まるよう、国に対して慎重な対応を要請します。

※TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)…太平洋周辺の広い地域で貿易自由化(関税撤廃)を目指す経済的枠組み

工業・雇用

企業における人材育成の視点と経営強化の視点の両面から支援します。
一関高専との連携により、質の高い技術者の養成を推進するほか、当市を会場に品質管理検定を実施することで、地域企業の品質管理能力を高めるなど、高品質なものづくりや企業の積極的な情報発信を支援します。

また、工業団地のリース制度などにより、積極的な企業誘致を展開します。
一関東第二工業団地については、立地企業の早期操業を支援します。

雇用対策については、求職者を対象とした情報化研修の実施や再就職訓練事業を支援するとともに、キャリア教育支援についても取り組みます。

求職者への相談体制については、本庁内の無料職業紹介所、千厩支所内の「ふるさとハローワーク」を運営するほか、関係機関・団体と連携しながら、雇用機会の創出に積極的に取り組みます。

商業・観光

中小企業振興資金の融資枠の確保や、ど市、互市、夜市などの各種イベントを通じた商業振興を図るほか、一関市連合大売り出しでの共通商品券事業を支援します。

平泉と市内の観光地を周遊する外国語パンフレットなどを作成するほか、観光地を結ぶ二次交通の整備など、観光客の利便性の向上に努めます。
また、産業まつりや姉妹都市である福島県三春町など、交流のある都市との物産と観光展などを通じて、地場産品の宣伝と販路拡大に努めます。

国土調査

地籍調査事業により、北霻霳地区などの調査を計画的に実施します。

(2)みんなで支え合い共に創る安全・安心のまちづくり 

健康教室の様子

健康・医療
健康いちのせき21計画および食育推進計画の周知啓発に努めながら、市民の自主的な健康づくりや健全な食生活のあり方について、意識の高揚を図ります。
健康づくりの拠点施設である一関保健センターは、子育て支援部門などを併設した新たな「保健福祉センター」として整備するため、その基本設計に着手します。
健康診査については、疾病の早期発見、早期治療を図るため、循環器系健康診査や各種がん検診などを実施します。
 
国民健康保険については、被保険者の健康増進や各種制度の周知を図り、事業の健全な運営に努めます。後期高齢者医療は、岩手県後期高齢者医療広域連合との連携を密にしながら、制度の適切な運営を図ります。
 
地域医療は、新たに地域医療・介護連携推進事業に取り組み、医療機関相互の連携や機能分担、医療と介護の連携体制づくりを進めるとともに、長期的な視点から医師確保を図るため、医師修学資金貸付事業を実施します。また、休日当番医制事業などによる初期救急医療の確保や医療機関の適正受診などの意識啓発に努め、県立病院などの負担を軽減します。医療機関、市民、行政、それぞれの役割や連携を強化しながら地域医療体制の充実を図ります。
子育て支援

第3子以降の保育料無料化のほか、川崎保育園において0歳児保育を開始。
また、0歳児保育を実施しているすべての市立保育園で、生後2カ月からの受け入れを行います。
さらに、発達の遅れが認められる児童などの健全な成長を促す「かるがも教室」を拡充し、早期療育事業の一層の充実に努めます。

また、生後4カ月までの乳児のいる家庭を保健師などが訪問し、育児に関する情報提供を行うとともに、婦人相談員の増員やDV※被害者への緊急一時宿泊事業の創設により、支援が必要な女性に対する相談体制の充実を図ります。

※DV(ドメスティックバイオレンス)…配偶者からの暴力など

障がい者福祉

きめ細かな就労支援・相談支援体制の充実や、生活介護事業所などの整備促進を図り、障がい者の生活を支援するとともに、多様なニーズに対応するため、障がい者福祉計画の見直しを行います。

高齢者福祉

住み慣れた地域で自立した生活ができるよう、健康づくりや生きがいづくりの活動を支援します。
また、特別養護老人ホーム入所待機者の解消に向け、施設の整備を促進します。
さらに、高齢者福祉乗車券交付事業の対象年齢を70歳以上に拡大し、社会参加の一層の促進を図ります。
今後さらに進行する高齢社会に的確に対応するため、高齢者福祉計画の見直しを行います。

生活保護

適正な保護の実施に努めるとともに、その自立を支援するため、新たに社会参加推進プログラム事業を実施し、社会参加や就労体験の場の提供に努めます。

一関遊水地事業

狐禅寺地区管理用通路および小堤の整備促進を図るとともに、磐井川堤防改修は、用地買収などに協力を行うほか、国に対して、事業促進を要望します。
なお、堤防改修工事に当たっては、市民行事や景観への影響を最小限に抑えるよう関係機関と協議します。

また、伐採を余儀なくされる桜並木は、植樹当時の思いを引き継ぎ、市民の皆さんと共に再生を図ります。
遊水地下流部の狭隘地区の治水対策は、砂鉄川合流点から宮城県境までの川崎地域、花泉地域および藤沢町の区間について、関係機関との調整や事業支援を強く働きかけます。

水防訓練の様子

災害・防災

岩手・宮城内陸地震により被災した旧祭畤大橋および市野々原土砂ダムについては、災害遺構として活用し、市民の防災意識の高揚を図ります。
また、災害への備えとなる砂防えん堤の建設、かさ上げなどについて、国・県に要望します。

市内全域に防災情報を一斉伝達できるよう、防災行政情報システムおよび消防救急無線デジタル化の実施設計に着手します。
また、防災マップを作成し、防災意識の高揚と被害の軽減を図るとともに、地上デジタル放送を活用し、防災情報を提供する仕組みを構築します。
さらに、大規模災害発生時のボランティア活動に必要となる資機材の整備を行います。

土砂災害から住民の生命を守るため、土砂災害ハザードマップを作成し、警戒避難情報の周知を図ります。

木造住宅耐震改修工事助成事業を実施し耐震化を促進するほか、緊急経済対策住宅リフォーム助成事業を実施します。

また、防災拠点として、一関南消防署を建築するとともに消防車両の更新、防火水槽の設置などを進めます。

防犯・生活相談

交通安全および防犯思想の意識高揚を図るとともに、防犯灯の設置を支援するなど、安全で住みよい地域社会の構築に努めます。
本庁および千厩支所に消費生活センターを設置し、消費生活や多重債務に関する相談に対応します。

自殺予防

うつ・自殺予防講演会や傾聴ボランティアの養成講座などを開催するとともに相談体制の一層の充実を図り、自殺予防に努めます。

 

(3)人を育み文化を創造する生きがいのあるまちづくり 
人材育成

地域の将来を担う子どもたちが、勤労観・職業観を身に付け、自立できるようキャリア教育に取り組みます。

また、学校図書館への読書普及員の増員など読書環境の向上を図るとともに、一関図書館および花泉図書館の実施設計に着手します。
一関図書館の開設準備と市立図書館全館による一体的なサービス体制の構築を図るため、新図書館の開設準備室を設置します。

学校教育施設 

25年4月の開校を目指し、(仮称)大東小の校舎建設に着手します。
また、千厩小校舎、興田中校舎などの耐震改修工事を実施するとともに、山目小・東山中校舎の耐震補強・改修工事を進め、安全確保と教育環境の向上に努めます。

スポーツ振興

8月の全国高等学校総合体育大会に向けて、円滑な運営と全国からの選手・関係者の受け入れ体制を整えます。
また、磐井川堤防改修事業の進捗に合わせ、一関水泳プールおよび青葉テニスコートの移転整備を進めます。

男女共同参画

28年度を目標年次とする第2次男女共同参画推進プランの策定を進めます。

骨寺荘園遺跡

ガイダンス施設を開館するとともに、展示棟の建築に着手します。
また、世界遺産の追加登録に向けて、調査研究や国との協議を進めます。

(4)人と情報が活発に行き交うふれあいと連携のまちづくり

夕方、家路を急ぐ皆さん

幹線交通網の整備

国道284号室根バイパスの早期工事着手のため、用地買収を促進するとともに、弥栄地区の道路改良について要望します。
国道342号厳美バイパスおよび花泉バイパスについては、早期完成を促進するとともに、花泉バイパス以南から宮城県境までの整備促進について要望します。
国道343号大原バイパスおよび主要地方道一関大東線生出・流矢地区、国道456号摩王地区の交差部については、関係機関と連携しながら整備促進に努めます。

また、歩行者の通行環境改善を図るため、国道4号一関大橋以南の四車線化について要望するとともに、広域幹線道路となる(仮称)栗原北上線の県道昇格を関係市町一体となって要望します。

市道については、矢ノ目沢金沢線・清水原一関線、松川駅館下線、沖線などの整備を推進します。
また、生活道路や通学路への歩道設置についても、現地の状況を把握し、順次、整備を進めます。
橋については、点検と修繕計画の策定を進め、長寿命化を図るとともに修繕費の縮減に努めます。
街路については、山目駅前釣山線の整備を進めるほか、歴史の小道の整備に着手します。
 

市営バス・駅

市営バスなどの運行のあり方について検討するほか、室根方面から磐井病院への直通乗り入れの試験運行を行い、利用者ニーズの把握に努めます。
また、地域住民の利便を図るため、トイレが無い8カ所の駅前にトイレを整備します。
一ノ関駅西口北駐車場については、拡張整備を図り、利用者の利便性向上に努めます。

テレビ放送デジタル化

7月の完全デジタル化に向け、中継施設整備などの対策を進めるとともに、市が設置する「地デジ支援センター」を活用し、受信対策を進めます。
また、光ファイバーの民間利用を促進し、携帯電話の通話不安定地域の解消や情報格差の是正に努めます。

(5)水と緑を守り育み自然と共生するまちづくり

磐井川でアユの稚魚放流の様子

地球温暖化対策

地球温暖化対策の意識啓発を図るとともに、住宅用太陽光発電システムの導入支援などによる新エネルギー・省エネルギービジョンの推進に努め、CO2削減に取り組みます。
ごみの減量化、資源化については、市民の意識啓発を図るとともに、不法投棄防止対策専門員の配置および監視カメラの設置を行うなど、不法投棄を許さないまちづくりを推進します。

公園

一関東第二工業団地および萩荘高梨地区に新たな公園の設置を行うとともに、既存の公園の整備および遊具の点検・更新など、適切な管理に努めます。

簡易水道事業

厳美・萩荘のほか、真滝・弥栄、舞川、興田・猿沢、磐清水・奥玉・小梨および田河津の簡易水道事業を推進し、水道未普及地域の解消に努めるとともに、施設の老朽化に伴う改修・更新を実施します。
水道事業については、新たに水道施設の耐震診断を実施し、施設の計画的な更新を進めます。
また、水道施設管理システムの構築、前堀および上巻浄水場の整備などを実施し、安全な水の安定供給に努めます。

公共下水道事業

千厩地域の供用を開始するとともに、一関、花泉、千厩および東山地域の供用区域を拡大し、快適な生活環境の向上に努めます。
また、下水道未接続世帯への普及や合併処理浄化槽の設置を図り、水洗化の促進に努めます。

景観形成

市民が主体的に取り組む景観まちづくり活動への支援を行い、自然と共生するまちづくりを推進します。

一関の明日を描く

総合計画基本計画の後期計画を策定し、新たな一歩をスタートさせます。

当市の財政状況は、健全化判断比率などは、国が定める「早期健全化基準」以下であるものの、市の財政を取り巻く環境は、厳しさを増しています。
多様な市民ニーズに的確に対応していくため、行政改革大綱および集中改革プランの次期計画を策定するなど、行財政改革に取り組みます。

変化する時代に対応していくために、施策の確実な実行、地域としての基盤強化および地域間競争力を持つことが不可欠です。
藤沢町との合併にあたっては、より深い絆と連携のもと、新たな地域づくりにまい進する決意です。
郷土の先達である建部清庵の教えに学び、地域課題の解決のため果敢に挑戦していく強い気持ちを持って、希望あふれる一関の実現に向け、全力で取り組みます。

市民の皆さんの理解と協力をお願いします。

   

 (広報いちのせき 平成23年3月15日号)