3月に発生した東日本大震災から半年が経ちました。

未曾有の震災は、被災地の生活を一変。
大切な人の尊い命、思い出や幸せが刻まれた家、友人と夢を語った学び舎など、たくさんの人たちの穏やかでかけがえのない暮らしが奪われました。

一方、市内では2度にわたる震度6弱の地震により家屋などに甚大な被害が発生。
市内の被害額は3年前の岩手・宮城内陸地震のそれを大きく上回っています。

また、大震災により発生した福島第1原子力発電所の事故に伴う放射能汚染へも対応しています。

市では、被害の復旧を急ぐとともに沿岸被災地への後方支援を展開しています。

市の被害額は、224億円超

大震災から半年、市では被害の全体を把握するため、調査を続けてきました。

市のまとめでは、2度にわたる震度6弱の揺れにより発生した住家被害や商業・観光関係被害の件数、金額がともに多く、それぞれ60億円を超えています。
農業関係の被害も多く、わかっているものだけで32億円余り、道路など土木施設の被害は22億円余りとなっています。

被害額の合計は224億4000万円ほどとなり、平成20年岩手・宮城内陸地震の被害額44億237万円の5倍を超える甚大なものとなりました。

沿岸被災地への支援

市では、震災発生直後から隣接する陸前高田市、大船渡市、宮城県気仙沼市などに対する支援を開始。
これまで救援物資の提供、職員派遣、医療支援、車両の提供、避難者の受け入れ、情報の提供などを現在も継続しています。

職員の派遣については、9月1日現在延べ4405人(消防団員含む)を派遣し各種支援を展開したほか、陸前高田市には、24年3月末まで継続して同市の業務を担当する職員11人を派遣しています。

避難者の受け入れについては市内の避難所、特別養護老人ホーム、宿泊施設などに受け入れた避難者全員の移転が完了した8月14日に、市内の全ての避難所を閉所しました。
これと並行して、市内の雇用促進住宅、市営住宅、民間賃貸住宅を応急仮設住宅として貸し出し。
9月1日現在で642世帯1579人が入居しています。
また、宮城県、気仙沼市の仮設住宅の建設用地として旧千厩小学校、旧折壁小学校の用地を提供。
計310戸が建設されました。

情報の提供については、市公式ホームページ内に陸前高田市、気仙沼市の情報を掲載するページを制作するとともに、サーバーが被災した陸前高田市の情報を提供するブログも開設。
6月からは、市内に避難している皆さんへ避難元市町村の広報などのお知らせを郵送する支援も開始しています。

旧折壁小に建設された仮設住宅
旧折壁小に建設された仮設住宅

環境放射能などへの対応

県による空間放射線量や水道水、農産物などの調査に加え市では、6月13日から市内各所における空間放射線量の独自測定を開始。
これまでは子供たちの健康を重視し、幼稚園や保育園、小中学校や公園などを重点的に測定してきました。
今後は、多くの市民が利用する公民館、体育館などの公共施設や、自治集会所などでの調査を実施していくこととしています。
併せて農産物の測定品目の拡大や頻度の増加についても県へ働きかけることにしています。

空間線量の測定機器
空間線量の測定機器

復興へ向けて

復興への道のりをどう乗り越えていくのかを模索する動きもあります。

9月17日に大東コミュニティセンター室蓬ホールで行われた「いわて復興支援シンポジウム」がその一つ。
学生復興支援会(※ 佐藤柊平代表)が主催したこのシンポジウムは、内陸側と沿岸側の二つの視点からこれからの復興支援を考えようと行われました。
基調講演を行った勝部市長は「住民、行政、企業それぞれがお互いさまの精神で支援していくことが必要」と支援の考え方を述べました。

同会の代表で、大東町出身の佐藤柊平さん(明治大学2年)は、「内陸部と沿岸部の人たちが一堂に会して公の場で支援のあり方を話す機会がこれまでなかった。今回のシンポジウムをきっかけに支援会の活動を息の長いものにしていきたい」と抱負を語っていました。

※学生復興支援会:県内出身の学生を中心に組織。現在、沿岸被災地などでのボランティア活動を行うなどの支援を展開しています。

内陸・沿岸との支援の関わり方を考えたシンポジウム
内陸・沿岸との支援の関わり方を考えたシンポジウム

(広報いちのせき 平成23年10月1日号)