六魂戦隊ゲイビマンの挑戦

六魂戦隊ゲイビマン

名勝猊鼻渓を拠点に活動する六魂戦隊ゲイビマン
強くてやさしい身近な戦士に、子供はもちろん大人も夢中だ
なぜ、彼らは戦い続けるのか? その素顔に迫る

SCENE_1
六魂戦隊ゲイビマンとは? 最強集結

英雄は孤高の存在、夢を与える存在、そして憧れの存在だ。
それに親しみやすさを加えた身近なヒーロー
それが「六魂戦隊ゲイビマン」だ。

迫力ある戦闘シーンで会場を沸かすゲイビマン
迫力ある戦闘シーンで会場を沸かすゲイビマン

テレビの戦隊ヒーローものにヒントを得た本市の「ご当地ヒーロー」(ローカルヒーロー)「六魂戦隊ゲイビマン」。
運営はゲイビマンプロジェクト委員会(菊地哲也委員長、会員25人)。
地域に根ざす6人の戦士とスタッフが心を一つにして地域の枠を超えて、活動の場を広げている。

視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感と第六感に優れたレッド、ブルー、グリーン、ピンク、イエロー、ホワイトの6戦士の勇姿に、子供はもちろん大人も夢中。
ゲイビマンの活動は▼市内の保育園や福祉施設などの年中行事▼交通安全街頭キャンペーン▼地域の祭り─など多岐にわたる。
声が掛かれば県外にも出張するなど、08年の結成以来、出番は100回を超えた。

10月8日の活動を追った。
この日の出番は「館ケ森収穫祭」。
会場は藤沢町の館ヶ森アーク牧場だ。

同収穫祭は、大地の恵みに感謝する恒例のイベント。
県内外から訪れた多くの親子連れらでにぎわう。
会場では▼子豚のレース「トントンダービー」▼野菜、果物など「農産物や特産品の販売」▼直径2メートルのジャンボ鍋で煮込んだ「いものこ汁」─などが人気を呼んでいた。

午後1時。
大きな拍手と歓声が送られる中、我らがヒーロー「ゲイビマン」が登場。
6戦士が力を合わせて怪人と対決する。
真剣な表情で見つめるちびっこたち。我を忘れて応援する父親たち。
ゲイビマンを一目見ようと詰めかけた親子連れらはショーにくぎ付けになった。

ステージ終了後は「握手会」と「記念撮影」が行われ、ゲイビマンはカードをプレゼントしたり、写真を撮ったりして子供たちと触れ合った。
憧れのヒーローに握手してもらったり、抱っこしてもらったりした子供たちは大はしゃぎ。
父母らはひっきりなしにシャッターを切る。

ゲイビマンは、ショーだけでなく、人と人との触れ合いを大事にしている。
強いのにやさしい、格好いいのに庶民、その身近さこそ、彼らが愛される理由であり一番の魅力かもしれない。

ショー終了後には子供たちと記念撮影
ショー終了後には子供たちと記念撮影

ゲイビマンカードを配って触れ合う
ゲイビマンカードを配って触れ合う

全てが手作り。音響を操作するスタッフ
全てが手作り。音響を操作するスタッフ

多くの親子連れらがステージにくぎ付け
多くの親子連れらがステージにくぎ付け

主張する個性、変幻自在の舞台
子供たちに夢を与えるヒーローたち

ゲイビレッドゲイビレッド

人間の30倍の聴力を持ち、歌がうまい。
その特性を生かして「名勝猊鼻渓」で船頭をしている。
「げいび追分」の歌唱力は船頭仲間でもピカイチ。
リーダー的存在だが、興奮しやすくて、しかもおっちょこちょい。
ピザが大好き。

ゲイビイエローゲイビイエロー

ソムリエレベルの5倍ともいわれる優れた味覚を持つ。
調理師、ソムリエ、パティシエ、和菓子職人など、あらゆる食の達人。
ゲイビマンのエネルギー源である「料理」をまかなっている。
かなりの読書好き。

ゲイビピンクゲイビピンク

香りに敏感で、さまざまな香りのアロマを放つことができる。
その魅惑的なアロマで敵を幻惑する。
アロマが作り出すバリアは敵の攻撃や自然の脅威からみんなを守る。
素顔はミス東山に選ばれるほど美しい。

ゲイビブルーゲイビブルー

透視・分析能力に優れ、敵の特性や弱点を解読できるほか、あらゆるデータベースにアクセス可能。
処理速度はスーパーコンピューター並み。
唯一計算できないものは人の心と未来。
好きなアーティストはマイケルジャクソン。

ゲイビグリーンゲイビグリーン

人間の20倍の触覚を持ち、触れることで動植物とも対話できる。
人の心の中まで感じることができる。
ピンクの能力とリンクすることで、病気やけがなどを治癒することも可能。
ゲイビマンの中でも癒やし的存在。

ゲイビホワイトゲイビホワイト

第六感に優れるゲイビマンの父。
武器や秘密兵器の研究・開発、フォースの解明に取り組む。
精神的パワーは強力で、魔法・呪術・占星術などを習得。
発明・芸術分野でも高い能力を発揮。
東洋のミケランジェロと呼ばれる。

 

小野寺洸太くん(一関市花泉町金沢 金沢小2年)・弘一さん・とき子さん
小野寺洸太くん(一関市花泉町金沢 金沢小2年)・弘一さん・とき子さん

毎年、トントンダービーに出走しています。ゲイビマンは花泉のお祭りで見たことがあります。
ゲイビマンは面白いから大好きです。中でもカッコいいゲイビレッドが一番好きです。
将来はプロ野球選手になりたいです。

岡顕一さん(一関市舞川 会社員 43)・育子さん・元樹くん・由樹ちゃん
岡顕一さん(一関市舞川 会社員 43)・育子さん・元樹くん・由樹ちゃん

ショーが面白かった。ゲイビレッドが大好きです。
将来はゲイビマンになりたいです。できればレッドがいいな(元樹くん)。
お父さんもファンです。地域に根ざしているご当地ヒーローで身近なところがいいですね(育子さん)。

館ヶ森アーク牧場

北欧をイメージした体験型の農場。
四季折々に咲き誇る花々を楽しみながら、多くの動物たちと触れ合うことができる。
県内外から多くの家族連れが訪れる。

〒029-3311一関市藤沢町黄海字衣井沢山9-15
Tel 0191・63・5100/Fax 0191・63・5101/ホームページ http://www.arkfarm.co.jp

SCENE_2
ヒーローはこうして生まれた 誕生秘話

始まりは、一人の父親のパフォーマンス。
その夢に共感し、立ち上がった男たち。
思いは、夢をつなぎ、仲間をつなぎ、コミュニティーをつないだ。

始まりは子供たちへのアプローチ
やがてそれは自分たちの夢に

ゲイビマンの前身は「オジレンジャー」。
05年長坂保育園の運動会にローカルヒーローとして現れた。

きっかけは、夕涼み会に参加した父親の一人が全身タイツで踊り出したこと。
奇抜なスタイルとパフォーマンスに「これは面白い。改良すればヒーローになれる」と直感した菊地さん。
父親たちを誘ってオジレンジャーを結成。
同年の運動会で初めてショーを行った。

ゲイビマンの前身「オジレンジャー」
ゲイビマンの前身「オジレンジャー」

戦うだけでなく、ダンスも踊る。
まるでテレビから飛び出してきたかのような戦隊ヒーローの圧倒的なパフォーマンスに園児は心を奪われた。
噂を聞き付けた他の保育園からもショーの依頼が舞い込んできた。
やがて子供は卒園を迎えるが、父親たちは新たな活躍の場を求めるようになった。

「わが子だけでなく、地域の子供たちみんなに夢を与えたい」。
菊地さんも仲間たちも、思いは一緒だった。
「オジレンジャーではなく、本当のローカルヒーローになろう」。

こうして08年1月、ニューヒーローのデザインに取り掛かる。
栃木県のデザイナーに依頼。送られてきたデザイン画を元に油粘土で立体モデルを作った。
「無我夢中だった。毎日メールで交信しながらアドバイスしてもらい、何度も試作を繰り返した。
マスクが完成したのは3月。
寝る間を惜しんで没頭したね」と菊地さんは振り返る。

仲間たちはマスクの出来映えに驚いた。
ヒーローを演じたい気持ちは一気に加速する。
仲間の一人が「名勝猊鼻渓の名にちなんだヒーローにしよう」と提案。
「ゲイビマン」が誕生した瞬間だった。

本格的な活動を行うために「ゲイビマンプロジェクト委員会」を立ち上げた。
早速、ボディスーツやブーツなど、コスチュームの製作に取り掛かった。
仕事の合間や夜間など、限られた時間に作業する。
全て自分たちの手作りで衣装を完成させた。

ゲイビレッドのマスク作成の過程。油粘土で作った立体モデル立体モデルからFRP製マスクを作るための型取り
ゲイビレッドのマスク作成の過程。油粘土で作った立体モデル ⇒ 立体モデルからFRP製マスクを作るための型取り ⇒

塗装を施し、完成したマスクレッド以外のマスクやボディスーツなどは仲間と協力して製作
塗装を施し、完成したマスク ⇒ レッド以外のマスクやボディスーツなどは仲間と協力して製作

同年11月、六魂戦隊ゲイビマンは初舞台を迎えた。
以来、ショーを重ねるたびに知名度は高まった。
東山町だけでなく市内外のイベントにも参加するようになった。
公演回数は100回を超え、全国から注目されるヒーローになった。

人気を博しても、有名になっても、活動範囲が広がっても、変わらないものがある。
子供目線だ。
「子供たちを喜ばせたい」、その姿勢はデビューから一貫している。

「俺たちは、子供たちから生まれたヒーローだからね」。
菊地さんの顔が父親に戻った。

ショーの前に集まって打ち合わせをするスタッフ
ショーの前に集まって打ち合わせをするスタッフ

被災地支援で陸前高田市を訪れたゲイビマン。写真は公演前のリハーサルの様子
被災地支援で陸前高田市を訪れたゲイビマン。写真は公演前のリハーサルの様子

ヒーローの日常。タイヤの空気圧をチェックする菊地さん
ヒーローの日常。タイヤの空気圧をチェックする菊地さん

SCENE_3
彼らはなぜヒーローを選んだのか? 英雄美学

「みんなが力を合わせれば何だってできる」
ゲイビマンが伝えたいメッセージである。
地域を愛し、情熱を注ぎ、夢をかなえていく。
ヒーローにまちづくりの原点を見た。

「アイデアを出し合い手作りのショーを」が、ゲイビマンプロジェクトのこだわり。
衣装はもちろんショーで使う武器や大道具まで全てが手作りだ。
音声収録に5時間、編集に3日間など、準備も膨大だ。

公演は100回を超えた。
「ビジネスにしたら?」と誘われたこともある。
だが断った。

「ボランティアだからこそ良いものができる」と菊地さん。
無償のヒーローの美学は、利益ではなく愛。
子供たちを心から楽しませ、夢を与えること。
だから、いつだって真剣だ。
ヒーローは知っている。
「本気じゃなければ子供を喜ばせることはできない」ことを。

完全無欠ではない人間らしさもゲイビマンの魅力。
6戦士は視覚や聴覚など、一人が一つずつ優れた能力を持っている。
6人がそろえばこそ強力なパワーを発揮できる。

「みんなが力を合わせれば、何でもできる。
一人はみんなのために、みんなは一人のために」。
ゲイビマンが子供たちに一番伝えたいメッセージだ。

互いを認め合うことで、それぞれの個性を発揮できる。
互いに協力し、融合することで大きな力を生み出すことができる。
それは、藤沢町を加えた8つの地域が一つになって、大きな価値や魅力を生み出している一関市の今と重ね合わせることができる。

ゲイビマンは今日も行く。
多くの人に愛と夢を与えるために。

目指すは家族みんなで楽しめる
等身大のヒーロー

菊地哲也さん02年の台風6号災害で家や職場が水に浸った。
無力感に押しつぶされそうな自分を救ってくれたのは、駆け付けてくれたボランティアの人たち。
誰かのために懸命に作業するボランティアの皆さんがヒーローに見えた。
当時の自分は、忙しさを理由に保育園の役員を断った。
家族を旅行に連れて行くこともできなかった。

「子供たちに堂々とした父親の姿を見せたい」。
見るだけ、撮るだけの父親から思い出を残してあげられる父親へ変わりたいと思った。
子供たちのために頑張りたい、地域のために役立ちたいと思った。

東山には猊鼻渓がある。
かつては宮沢賢治がいたこともある。
豊かになるための資源はあった。
市民劇場、よさこいソーラン、コミュニティラジオなどいろいろなことを模索した。
一過性ではなく継続できる活動を考えた。
たどり着いた結論が、主役は自分ではなく、誰でもなく、いつまでも続けていける「かぶり物」だった。

子供たちを思う気持ちと地域への愛着を重ねて実現させたのがゲイビマンだ。
失敗してもいい。
格好いいヒーローじゃなくてもいい。
家族みんなが楽しめるものを目指した。
本心で動いているうちに自信がわいてきた。
ポジティブになれた。
みんなが声をかけてくれるようになった。
あいさつできる知り合いが増えた。

自分にとってのゲイビマンは、「憧れ」、「自分を変える力」、「夢をかなえるツール」だ。
人や地域をつなぐ存在だ。

菊地哲也さん菊地哲也さん

東山タイヤ工業所代表取締役。ゲイビマンプロジェクト委員会代表。
妻、長女、二女、両親と6人暮らし。45歳、東山町長坂在住

 吉田知宏さん吉田知宏さん 37 会社員 東山町長坂

プロジェクトでは、特に決まった役割はないけど、みんなと全てのことに全力で取り組んでいます。
周囲で話題になるのがうれしいですね。
ゲイビマンは地域を本気で愛する、血は繋がってないけど「家族」だと思います。

円谷伸之さん円谷伸之さん 41 小売業 東山町長坂

裏方で小道具係をやっています。
スタッフみんなで助け合いながら寸劇を作り上げています。
周りの人から「ゲイビマンを見て子供が素直になったよ。言うことを聞くようになったよ」と聞かされ、とても嬉しいです。

小野寺碧さん 24 会社員 東山町松川

小野寺碧さんアシスタントです。
小さなことでも役立てるようにサポートを頑張っていきます。
活動の中で新しい人たちとの繋がりもできて、地域で生活する大切さを実感しました。
私にとってのゲイビマンは「みんなの夢、地域の輪」。

鈴木智さん鈴木智さん 47 地方公務員 東山町長坂

一番の役割は移動時のバスの運転。
後は裏方に徹しています。
地域の人たちからショーの予定を聞かれたり「面白かったよ」と声をかけられるようになりました。
みんなとショーを作り上げる時間は疲れるけど楽しいですね。

鈴木隆さん 28 自営業 東山町長坂

鈴木隆さん主にアシスタント、物資運搬や出演者たちの演技の補助を担当してます。
他には声の収録の手伝いも。
ゲイビマンの活動を通じて、自身の地元への愛着が強くなったと実感。
これからも楽しく、笑顔でがんばっていきます。

菅原晃弘さん菅原晃弘さん 38 作業療法士 東山町長坂

音響全般を担当しています。
自前の放送設備をショーがあるたびに出動させています。
地域や家庭で日常でゲイビマンを話題にすることが増えましたね。
このプロジェクトを通じて、ちょっとだけポジティブになれました。

鈴木星子さん 24 会社員 東山町長坂

鈴木星子さんアテレコを担当しています。
入って間もないですが、町内の知り合いがたくさん増えました。
友達と一つのものを創っていることが本当に楽しく、充実しています。
地元のために活動するゲイビマンは本物のヒーローです。

鈴木幸志さん鈴木幸志さん 31 介護士 東山町長坂

資材運びと打ち上げの担当です。
10月8日の藤沢町でのショーは行けなかったので残念。
見に来てくれた子供たちを楽しませるためとは言え、自分の子に寂しい思いをさせて申し訳ないと思ってます。
ゲイビマンは私の夢。

佐々木一成さん 39 会社員 東山町長坂

佐々木一成さんプロジェクト委員会の副代表です。
活動を通じて、物事を前向きに考えられるようになりました。
10月8日は藤沢町でショーができて、とても嬉しく思います。
よく家族で行きますが、機会があればまた公演したいですね。

小田沢哲也さん小田沢哲也さん 37 自営業 東山町長坂

小道具の作成を担当しています。
「子供がファンです」とか「知ってますよ」と声をかけられます。
地域での浸透に驚かされました。
ゲイビマンは一言で言うと「一喜一会」。
一つのことに喜び合い、一つの出会いを思い出に。

中村岳史さん 34 会社員 東山町長坂

中村岳史さんドライバー兼道具運搬係。
子供たちへのプレゼントカードの作成やゲイビマンのPRも受け持ってます。
子供との共通の話題が増えたりと楽しい時間が増えました。
絆と挑戦。
仲間に支えられ、新しい事に挑戦していきます。

千葉功一さん千葉功一さん 33 地方公務員 東山町松川

プロジェクト幹事長で衣装洗濯係。
先頭切って突進する役を担ってます。
ゲイビマンは一言で言えば「兄弟」。
多種多様なセンスの集まり。
バランスとチームワークは良いけど、決して完璧じゃないのが特徴だし魅力です。

菊地潤さん 37 会社員 東山町長坂

菊地潤さん脚本、シナリオ作りを担当しています。
家庭内では子供から自慢がられますが、小学5年の娘から若干笑われ始めました。
地域では羨望のまなざしで見られます。
休日がイベントで重なると家族にちょっと申し訳ないです。

渡邉昭義さん渡邉昭義さん 35 会社員 東山町長坂

音響、カード作り、準備係、小道具、大道具の出し入れなどを色々かけもちで担当しています。
家庭でもゲイビマンに興味が出始め、よく話題になります。
イベントがあるたびに「今回は行くの?出るの?」と聞かれます。

村上佳代さん 25 保育士 千厩町千厩

村上佳代さんイベントの司会です。
職場の子供たちは、ゲイビマンのファンでしたが、私が携わっていることを知ってからさらに大好きになってくれました。
ゲイビマンはいつも一生懸命。
だからみんなに好かれるのではないでしょうか。

及川浩勝さん及川浩勝さん 37 会社員 東山町長坂

プロジェクトでの仕事は、準備作業や他の人のサポートなどです。
知り合いや周りの人たちから「すごいなー」と声をかけられます。
このプロジェクトで、色々なことを学んで自分自身のスキルアップに繋げていきたい。

六魂戦隊ゲイビマン公式ホームページ http://geibiman.web.fc2.com/

(広報いちのせき 平成23年11月1日号)