生産者の安心と風評被害対策への新たな取り組み

市は、産直施設などでの販売を目的に生産された農林産物に含まれる放射性物質の測定を開始した。
生産者が安心して販売できる環境を整え、風評被害対策へつなげる考え。
できるだけ多くのサンプルを検査することで販売・消費双方の安心感を高めることが狙いだ。

産直販売の農産物など対象に測定を開始

市はこのほど、市内2カ所の農業技術開発センターに設置している放射性物質測定器(シンチレーション検出器)を用いた学校給食食材、飲用の井戸水・沢水に含まれる放射性物質の測定に続き、販売目的に生産された農林産物について測定を開始した。
これは、市内で生産される農林産物の安全性を確認し、生産者が安心して販売できる環境を整えようとするもの。

対象は、市内の産直組合加入農家やインターネットなどで直売している生産者が販売を目的に生産した野菜、穀類、果物、キノコなど(加工品、JA系統出荷、市場出荷するものは除く)。
測定する放射性物質は、ヨウ素131、セシウム134と同137で、核種別に検出下限値を30ベクレル/キログラムに設定する。

測定の予約は、産直組合に加入している人はその組合を通じて、それ以外の直売農家はそれぞれ市役所本庁農政課または各支所産業経済課へ電話で申し込む。

一度に受け付けるサンプルは個人が1点、産直組合などの団体が5点まで。
予約受け付け後、指定された日時にどちらかの農業技術開発センターへ測定に必要な前処理を行ったサンプルを持ち込む。
1サンプル当たりの測定時間は20分で、測定結果は後日郵送される。

また、測定結果の公表に同意した場合、▼品目▼産地の住所(大字まで)▼放射性物質の濃度―を市のホームページなどに掲載、広く情報を提供する。

国が定める食品の暫定規制値の2分の1(250ベクレル/キログラム)を超える値が検出された場合は、市が県に対して、ゲルマニウム半導体検出器を用いた、より精密な測定を依頼する。

2月1日の受け付け開始を前に市は、市内70カ所の産直施設の代表に文書で通知。
初日の予約件数は3件だった。

当面は給食の食材、飲用水、販売目的の農林産物を優先して測定。
3月からは機器の空き状況を見ながら、家庭菜園などで生産され、自家消費する個人の農林産物に含まれる放射性物質についての測定も行うことにしている。

公共施設などの低減対策

昨年10月から11月に実施した公共施設等一斉測定の結果を踏まえ市は、11月末から局所的に測定高さ1センチの地表面で毎時1マイクロシーベルトを超える測定箇所がある359施設の低減対策を開始した。

自治集会所などにおける低減対策では、地域住民の協力を得ながら、高圧洗浄機による洗浄や表土を剥ぎ取って同敷地内に埋設するなどの方法で作業を行った。

これまでのまとめによると実施した施設は233施設。
注意表示や立ち入り防止措置を講じた施設は39施設、降雪などの影響でまだ実施していない施設は87施設となっている(表1)。

市内舞川で行われた自治集会所の低減対策作業
市内舞川で行われた自治集会所の低減対策作業

井戸水・沢水のサンプリング調査

市は1月から、井戸水・沢水のサンプリング調査を開始した。
調査は、原発事故で放出された放射性物質による汚染が、上水道・簡易水道の未普及地域における飲料水(井戸水・沢水)に影響していないかを確認するため行ったもの。

対象地域は、上水道・簡易水道を利用できない▼一関地域20行政区▼大東地域34行政区▼千厩地域16行政区▼東山地域11行政区▼室根地域14行政区―の計95行政区。
各行政区長の協力を得て対象世帯を抽出した。

測定する放射性物質は、ヨウ素131、セシウム134と同137。
核種別に検出下限値を10ベクレル/キログラムに設定するため、測定時間を60分間と定めた。

また、サンプリング調査によって放射性物質が検出され、飲用には向かないと判断された場合、その行政区の全世帯の飲料水調査や水道水の提供など必要な措置についても定めた。

第1回サンプリング調査には、対象となった95行政区から▼井戸水100カ所▼沢水78カ所―の計178カ所の水が寄せられた。
この水を市内の農業技術開発センターに設置している放射性物質測定器(シンチレーション検出器)を用いて1月6日から27日にかけて測定。
その結果、いずれの放射性物質も不検出(放射性物質が存在しない、または10ベクレル/キログラム以下)だった(表2)。

引き続き2回目の測定を行い、変化がないかを確認することにしている。

表1:公共施設などにおける除染等実施状況一覧表

地域 区分 除染対象施設数 除染の実施状況
除染済み 注意表示や立入防止措置 未実施
一関 公共施設 21 13 3 5
公園 3 2   1
自治集会所 74 62 2 10
98 77 5 16
花泉 公共施設 18 4 11 3
公園        
自治集会所 48 30   18
66 34 11 21
大東 公共施設 24 2   22
公園        
自治集会所 45 23 1 21
69 25 1 43
千厩 公共施設 14 3 11  
公園 1   1  
自治集会所 23 22 1  
38 25 3  
東山 公共施設 12 5 1 1
公園        
自治集会所 8 12 1  
20 17 2 1
室根 公共施設 19 12 6 1
公園 1     1
自治集会所        
20 12 6 2
川崎 公共施設 7 6 1  
公園 2 2    
自治集会所 15 15    
24 23 1  
藤沢 公共施設 8 4   4
公園 2 2    
自治集会所 14 14    
24 20   4
合計 公共施設 123 49 33 36
公園 9 6 1 2
自治集会所 227 178 5 49
359 233 39 87

表2:井戸水・沢水のサンプリング調査測定結果(第1次)

地域 調査対象行政区数 調査検体数

測定結果(ベクレル/kg)

井戸水 沢水 ヨウ素131 セシウム134 セシウム137
一関 20 23 17 40 全て不検出 全て不検出 全て不検出
大東 34 32 24 56 全て不検出 全て不検出 全て不検出
千厩 16 23 9 32 全て不検出 全て不検出 全て不検出
東山 11 5 17 22 全て不検出 全て不検出 全て不検出
室根 14 17 11 28 全て不検出 全て不検出 全て不検出
合計 95 100 78 178 全て不検出 全て不検出 全て不検出
○本測定はトライアスラーベクレルファインダー(シンチレーション放射線核種簡易測定器)を使用
○測定値は60分間での値
○本測定器の設定は、20分間の測定時間で検出下限値が30ベクレル/kgとなっているが、より低い検出下限値とするため、60分間測定した(検出下限値を10ベクレル/kgとなるような測定時間)
○測定値について、「不検出」とは放射性物質が存在しない、または10ベクレル/kg未満であったことを示す
【参考:厚生労働省が定めた飲料水の暫定規制値】
放射性ヨウ素:300ベクレル/kg、放射性セシウム200ベクレル/kg
※この暫定規制値は現在、厚生労働省で値の見直しを検討中

環境省の事業を導入へ

福島第一原子力発電所事故により飛散した放射性物質は、草木にも付着しており、ごみ集積所に出された落ち葉や枯れ枝などは一関地区広域行政事務組合一関清掃センターで可燃ごみとして焼却している。

その焼却灰にも放射性セシウムが含まれている。
国の基準では、1キログラム当たり8000ベクレル以下の濃度の焼却灰はそのまま埋め立てられるが、8000ベクレルを超え、10万ベクレル以下のものは一定の基準を満たす対策を講じないと埋め立てできないとされている。

現在、一関清掃センターから排出された8000ベクレルを超えるセシウムを含む焼却灰は92トンに及び、一関および舞川清掃センターの最終処分場で、フレキシブルコンテナと呼ばれる水を通さない袋に入れ、さらに遮水シートで覆い厳重に保管されている(写真)。

最終処分場に一時保管されている焼却灰(写真奥)
最終処分場に一時保管されている焼却灰(写真奥)

同組合では「増え続ける大量の焼却灰をより安全に保管」するため、環境省の事業を導入することにした。
これは、保管している焼却灰にセメントなどを混ぜ、固めることで灰に含まれるセシウムと雨水が接触しにくくなり、溶け出しにくくなるというもの。

同組合は1月11日と18日の2回、この事業の実施について説明を行うため、舞川最終処分場の周辺行政区の住民を対象に説明会を開いた。

あいさつに立った同組合の佐藤好彦事務局長は「現時点では、高濃度のセシウムを含む焼却灰の処分について国の明確な指針がないため、排出している自治体が保管せざるを得ない。より安全な保管のために事業の実施に理解をいただきたい」とこれまでの経過などを述べた。
その後、千田勝同所長が▼放射性物質が飛散しないようテントを設営するなど作業に万全を期すこと▼セメントなどにより焼却灰を固めることで雨水が侵入してもセシウムと雨水が接触、溶け出しにくくなること▼固めた焼却灰は、さらに遮水シート、土砂などで覆うこと―など確かな安全対策を講じ、固めた後の放射線量も定期的に測定、管理していくことを説明した。

参加した住民からは「あくまでも一時保管か」「原発事故そのものが想定外といわれている。本当に安全性は大丈夫か」といった不安の声も上がった。

千田所長は「セメントなど固めて一時保管する方法は、現在のフレキシブルコンテナを利用する方法よりも安全な方法と考えている。線量の測定も定期的に行って管理する」と理解を求めた。

この日は、焼却灰をセメントなどで固める事業の実施はやむを得ないが、埋め立てなど最終処分を行う場合は、再度協議することにしたほか、今後放射能に関するセミナーを開いて、理解を深めることにした。

問い合わせ先

一関市災害対策本部TEL0191-21-2111

市、東京電力(株)に対して993万円超の賠償を請求

本市を含む県内26市町村と県は1月26日、東京電力に対し福島第1原子力発電所事故に伴う第1次損害賠償請求を行った。
請求額は市町村が4991万円(本市の請求額は993万4915円)、県が5428万円で合わせて1億419万円。
内訳は、23年11月末までに支払いを終えた、放射線測定のための機器購入費や放射線量の低減対策経費など。
東京電力に対し誠意ある速やかな賠償を求めた。

午前9時30分から県庁で行われた請求には、加藤主税(ちから)県総務部長のほか、勝部修一関市長ら3市1村の首長が出席。
東京電力の新妻(にいづま)常正(つねまさ)福島原子力被災者支援対策副本部長に請求書を手渡した。

勝部市長は「現在も80頭近い牛が出荷できないでいる。市特産の乾シイタケでも風評被害が確認されている。早急に解決をお願いしたい」と窮状を訴えた。

新妻副本部長はこれらの声に対して「事故がなければ不安と負担をかけることはなかった」と陳謝したが、請求については「持ち帰って速やかに誠意ある対応を進めたい」と述べるにとどまった。

国の原子力損害賠償紛争審査会がまとめた中間指針で「地方公共団体が費用を負担した場合も対象になる」とされたことから始まった賠償請求。
今後、3月末までの経費を算定した第2次賠償請求を6月以降に行う予定だ。
同審査会から具体的な賠償対象はいまだに示されていない上、東京電力が賠償に応じるかどうかの方針も明らかになっていない。

いちのせきの広報誌「I-Style」 平成24年2月15日号