一関、平泉、奥州、大船渡の4市町で生産された2011年産の乾シイタケ(原木・露地栽培)から1キログラム当たり1393~2880ベクレルの放射性セシウムが検出された。
この検査結果を受け県は、4市町と集出荷団体に対し出荷自粛と自主回収を要請した。
また、食品の放射性物質規制値見直しに伴い、県は1月末までに一関地方全域の牧草を調査。
本市の全域で11年産の牧草を牛に与えないよう畜産農家に要請した。

11年産乾シイタケから基準値超えセシウム

県によると、検査は4市町を含む県内7市町で生産され、集出荷団体(全農県本部、県森林組合連合会)で保管されていた乾シイタケを対象に初めて実施。
2月9日から13日にかけて乾燥状態で検査した結果は、一関産が最大で1キログラム当たり2880ベクレル、大船渡産が同1691ベクレル、一関・平泉産が同1684ベクレル、奥州産が同1390ベクレルの放射性セシウムが検出された。

検査結果を受け県は、集出荷団体に対し、4市町産の出荷自粛と自主回収を要請。
国と出荷再開の条件を協議する という。

この問題で勝部修市長は、15日に行われた記者会見の席上「早期の検査実施をずっと要請してきた」とコメント。
重ねて「生産農家の立場に立ってスピード感を持って取り組むよう、県や国に対して強く要請する」と述べた。

県に対し、緊急要望

市は22日、平泉、大船渡、奥州の3市町とともに県に対して、▼適切な検査▼除染対策▼生産者の経営救済と生産復興対策▼県南地域への担当部署設置―など6項目についての緊急要望を実施。
このうち担当部署設置について勝部市長は「盛岡(の県庁)では対策に時間がかかる。
現場近くで声を聞き、現場を直視して迅速に結論が出せるよう対応してほしい」とし、県南広域振興局で一元的に相談や指導が受けられるよう対応を求めた。
また「農家はぎりぎりの状態。県として産地を守るという強いメッセージを出してもらいたい」と深刻な農家の思いを代弁した。

人工のほだ場設置も

市議会3月定例会の一般質問の答弁で勝部市長は、シイタケの生産基盤を守るため人工ほだ場の設置について、生産者、関係機関と協議に入る考えを示した。

シイタケ農家の現状について勝部市長は「生産者は生産を行ってもいいのか、ほだ場に入っていいのか難しい判断を迫られている。
ほだ木、ほだ場の除染を行ってでも生産を再開したいという生産者もいるが、除染は難しいという生産者も多い」とし、「人工ほだ場の設置はシイタケ産業の地域的基盤を守り、この問題への対処に有効と考える」との認識を示した。

また、損害賠償の遅れについては「市内の原木乾シイタケの生産販売にかかるあらゆる損害について、東京電力や国に誠意を持って迅速に賠償するよう要請している」と述べた。

東京電力、補償の意向示す

東京電力福島原子力被災者支援対策本部東北補償セ東ンターの担当者は23日、市役所を訪れ、出荷自粛となった23年産乾シイタケの在庫と自主回収分に加え、風評被害による価格下落分も補償する意向を伝えた。

賠償の範囲は、11年産乾シイタケ(原木・露地栽培)で、県が出荷自粛と自主回収を要請した14日以降に▼自主回収、返品されたものおよび出荷自粛により出荷できなかった在庫分の逸失利益▼対象シイタケの廃棄にかかる費用▼測定に要した検査費▼返品に要した費用―など。

風評被害分の賠償は、対象品目は同じだが、対象地域は県内全域。
価格の下落がはっきりとした9月1日以降の▼通常時との価格差による逸失利益▼測定に要した検査費用―などが盛り込まれている。

しかし、汚染された原木やほだ木の賠償については、はっきりとした方針は示されず、現時点での賠償の時期についても不透明で、今後の課題となる。

この賠償の枠組みについて勝部市長は、一定の前進との受け止め方をしたものの、「さらに迅速かつ万全な賠償を求めたい」とコメントした。

27日の市議会本会議では「県や国の対応の遅れが損害賠償の対応の遅れにつながっている」と指摘。
食品の暫定基準値の引き下げに対応した、原木やほだ木の指標値がいまだ示されないことに対しては「指標値を早急に示し、除染の責任と役割を明確にして、実現可能な対応を指導するよう要望している」と述べた。

問い合わせ先

一関市災害対策本部、tel0191-21-2111

放射線測定情報はこちらから

市ホームページ
  • 「環境放射能に関する情報(福島第一原子力発電所事故関係)」

http://www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/1,0,157,html

岩手県ホームページ
  • 「環境放射能に関する情報(福島第一・第二原子力発電所事故関係)」
  • 「一関市における水道水の核種別放射能濃度の測定結果」など

http://www.pref.iwate.jp/

いちのせきの広報誌「I-Style」 平成24年3月15日号