東磐井サマーコンサート―届け心に、復興の歌

1「あすという日が」「ふるさと」の2曲を歌った圧巻の全体合唱

第1楽章
思いをメロディーに乗せる
一人じゃなく、仲間と共に歌う
合唱だからこそ表現できる互いの絆
共に歌える喜びかみしめ
旋律に思いを乗せて 

コツ、コツ、コツ―

静まる会場に響く靴音。
観客の視線がステージに集まる。
指揮者が両腕を振り下ろすと、優しいタッチのピアノからイントロが流れ出す。

今年で32回を迎えた「東磐井サマーコンサート」(東磐井合唱連絡協議会主催)は7月8日、藤沢町の縄文ホールで行われ、市内や気仙沼市から出演した14団体が美しいハーモニーを響かせた。

同コンサートは東磐井や気仙沼市の市民コーラス団体が共演する夏の風物詩。
だが、昨年は、東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼市から参加はなく、ぽっかりと心に穴が空いたようだった。
市内の団体はコンサートを通して集めた義援金を送るなど支援した。

今年は、気仙沼市から、そよかぜコーラス、コール・カルトヘル、コーロ・ルボールム3団体がステージに立ったほか、合同でつくる気仙沼アマチュアコーラス連絡会(小山逸子代表)も特別出演し、復興への思いを歌に込めた。

東磐井からは地元の藤沢コーラスなど8団体が出演したほか、大東・千厩両高の音楽部が賛助出演し、伸びやかな歌声と美しいハーモニーで客席を魅了した。

一緒に歌える喜び、大切な人へ向けた思いなど、それぞれが気持ちを込めたコーラスを披露し、コンサートはヒートアップ。
最後は出演者全員がステージに立ち、今回の講師でもある一関合唱連合会顧問の石井芳雄さん(修紅短大名誉教授)の指揮で「あすという日が」と「ふるさと」の2 曲を合同合唱。
内陸と三陸が一つになって生み出す優しくて力強い歌声は、復興ソングとなって響き渡り、互いの絆を深めた。

講師の石井さんは「それぞれの団体に個性を感じた。心から合唱を楽しんでいることが伝わり、とても魅力あるコンサートだった」と講評した。

第2楽章
神戸から気仙沼へ―
震災で結ばれ、歌い継がれる「復興の歌」
愛する人へ、大切な人へ思いを届けるために
神戸再生の歌が気仙沼へ
歌が生み出す復興の力

95年1月17日に発生した阪神淡路大震災。
直後に作られた一曲の歌がある。

「しあわせ運べるように」

神戸の再生を願い、鎮魂と希望を込めた「心の歌」として、神戸の人たちが震災後大切に歌い継いできた曲だ。
この歌が今、神戸から東日本へと広がっている。

気仙沼市内の10団体で構成される気仙沼市アマチュアコーラス連絡会。
震災で会員の多くが被災し、現在は5団体に減った。
それでも「義援金などたくさんの支援をいただき、活動再開のきっかけをもらった」と代表の小山逸子さんは歌える喜びをかみしめる。

逸子さんは「しあわせ運べるように」の歌詞中の「神戸」を「ふるさと」に置き換えた「ふるさとバージョン」があることを知り、気仙沼市東日本大震災合同慰霊祭(11年9月開催)で歌いたいと出版社に問い合わせた。
すると、歌詞中の「地震」を「津波」に、「神戸」を「気仙沼」に置き替えて、気仙沼の復興のために歌ってほしいと楽譜とCDが送られてきた。

また、同市の支援に来ていた島根県浜田市の職員から「元気を取り戻して」という励ましの言葉と共に「あすという日が」の楽譜50人分が贈られてきた。
コンサートではこの2曲を歌った。
客席では、すすり泣く人も見られ、歌い終えると温かい拍手が送られた。
人と人をつなぐ歌のパワーを感じた。

気仙沼市の団体が東磐井サマーコンサートに参加するようになって17年。
「歌うたびに胸が熱くなる。震災以降は人の優しさが心にしみる」毎日だ。

「歌えることの喜びと、支えてもらったことへの感謝の気持ちを合唱で表わし、復興のエネルギーにしていきたい」

明日を見つめる。

2トップを飾った渋民グリーンコール3急逝した指導者の尾形誠一さんを偲んで、尾形さんが編曲した「ふるさとの山に向ひて」を歌う千厩ゴールド合唱団
4賛助出演した千厩高校音楽部5縄文ホールいっぱいに伸びやかな歌声を響かせた地元の藤沢コーラス
6会場の藤沢文化センター「縄文ホール」7講評を述べる講師の石井芳雄さんは一関合唱連合会顧問
8合唱を終えた気仙沼のメンバーに花が贈られた9「しあわせ運べるように」を歌う気仙沼アマチュアコーラス連絡会
10感謝を述べる小山代表

1_「あすという日が」「ふるさと」の2曲を歌った圧巻の全体合唱
2_トップを飾った渋民グリーンコール。指揮の芦良さんがコーロ・ルボールムを指導したことがきっかけで気仙沼市との交流が始まった
3_急逝した指導者の尾形誠一さんを偲んで、尾形さんが編曲した「ふるさとの山に向ひて」を歌う千厩ゴールド合唱団
4_賛助出演した千厩高校音楽部。美しいハーモニーが客席を魅了した
5_縄文ホールいっぱいに伸びやかな歌声を響かせた地元の藤沢コーラス
6_会場の藤沢文化センター「縄文ホール」
7_講評を述べる講師の石井芳雄さんは一関合唱連合会顧問
8_合唱を終えた気仙沼のメンバーに花が贈られた
9_「しあわせ運べるように」を歌う気仙沼アマチュアコーラス連絡会
10_感謝を述べる小山代表

広報いちのせき「I-style」8月1日号