館蔵品

刀 銘 一関士宗明 元治元年八月吉日
かたな めい いっかんしむねあき げんじがんねんはちがつきちじつ


(裏)振此利刀鏖敵者誰多巻觀民
(このりとうをふるいてきをみなごろしにするはだれあろうたまきかんみん)
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 刃長 70.5cm  反り 1.5cm  元幅 3.1cm
 元治元年(1864)作


 鎬造、庵棟、身幅広く、反りやや浅く、大鋒。鍛えは小板目つむ。刃文は丁字で、3,4ヶの丁字を一組にして連続して焼く。匂を敷き刃縁は沸つき、砂流しかかる。帽子は大きくのたれこみ、先丸く返る。茎は生ぶ、先入山形、鑢目筋違、元に化粧鑢、目釘孔1個、長銘。

 一関士宗明こと久保田宗明は初名を文吉、諱を充昌(みつまさ)といい、一関藩大小姓組に列する藩士でした。嘉永の頃、文吉は藩命で江戸へ上り桑名藩の刀工固山宗次(こやまむねつぐ)に入門、安政3年(1856)23歳で免許を授けられ、師匠の一字をいただいて宗明と名乗りました。その後一関に戻ると藩による宗明刀の所持奨励もあって精力的に作刀を続け、戊辰戦争の時には多くの藩士が宗明の刀を携えて戦場に向かったと伝えられています。
 この刀は師匠宗次の晩年の作風である互(ぐ)の目丁字と等間隔に焼く刃文の特色をよく受け継いでいます。身幅が広く重ねが厚い、がっしりした造りこみで、よく練られた小板目肌(こいためはだ)の地鉄(じがね)には得意の丁字を焼き、茎(なかご)には藩士多巻觀民の勇猛ぶりを讃えた銘が添えられています。宗明の作例中でも傑作の一口です。

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