館蔵品

カキとブドウ

ああああああ

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 福井良之助 ふくいりょうのすけ(1923年~1981年)
 ミメオグラフ 縦21.0cm 横33.8cm
 昭和37年(1962)
 

 全体的に茶褐色の画面の中には、カキの実とブドウの房が配され、周囲には亀裂のような線が広がっています。
 昭和37年(1962)、福井が39歳の時に制作したこの作品は、謄写版(とうしゃばん)による版画で孔版画(こうはんが)の一種です。製版、印刷ともに福井が自らの手で行ったもので、独自に開発した技法が駆使されています。
 微妙に色の異なる版を計画的に重ね合わせてつくられた渋い色調と、複雑な材質感が小さな画面の中に入り組んでいます。そして、果物の稜線を描いた黒の版は、上下に向きを変えて二度刷られていて、周囲にひろがる濃度の異なる茶褐色の色面と相まって不思議な空間を醸し出しています。
 謄写版という技法上の制約により、決して大きな画面ではありませんが、堅牢で充実した画面とその作風から、のちの福井の活動を示唆するようです。

 福井良之助(ふくいりょうのすけ)は、1923年(大正12)に東京で生まれ、1944年(昭和19)から1952年(昭和27)は母の郷里・一関で過ごしました。この間、1948年(昭和23)から1951年(昭和26)まで、一関市立中学校の教諭として教壇に立っています。また、この頃、東北高等美容学校、一関文化服飾学院でも講師を勤めました。
 1952年に一家で上京し、幼い頃から心に決めていた画家への道を目指して活動を続けます。そして、昭和30年代に版画の作品で本格的に画壇で認められるようになりました。

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