安全・安心へのこだわりは男のプライド 風評にも屈しない頑固な農業は不変

三浦克男さん
安全・安心をモットーに有機栽培に取り組む認定農業者
三浦克男さん Miura Katsuo 70 農業 藤沢町新沼

経営する水田170アールのうち140アールでEM(有用微生物群)を使った有機栽培に取り組む三浦克男さん。
「安全・安心を消費者に届けることが農家の使命」と言い切る。
安全へのこだわりが、違いのわかる米を生み、販路は年々拡大している。

人間の健康が食事で決まるのと一緒で「米づくりは土づくり」からと93年、アイガモ農法を導入、とことん有機栽培にこだわってきた。
「(EM米は)慣行米と比べ、収量こそ落ちるが、味と品質は折り紙付き」と絶対の自信を持つ。

米へのこだわりは少年時代から。
仕事が忙しい両親に代わって、子供たちが当番制で「ご飯炊き」を担当した。
4人兄弟の末っ子だった克男さん。
当番のたびに「兄貴たちに負けないうまいご飯を炊いてやろう」と工夫を重ねた。
「まず、といだ米をザルでこし、ぬか分を素早く抜く。それから30 分ほどうるかして炊くと、驚くほどうまいご飯が炊ける」と少年のような顔を見せる。

男のこだわりは克男さんのプライド。
生産者の顔が見える農業で消費者との信頼を築いてきた。
安全で安心、高品質でうまいEM米やアイガモの評価は年々高まり、首都圏の消費者からはギフトの注文も舞い込むようになった。

「近年、食の安全や環境の保全が叫ばれ、本当に安全なもの、安心できるものが評価される時代になった。賢い消費者が増えれば、正直な生産者は認められる。だからチャンスだと思って頑張ってきた」と振り返る。

そんな矢先、あの東日本大震災は起きた。
東京電力福島第一原子力発電所の事故で放射性物質が大気中に放出された。
規制値を超える食品は出荷できなくなった。

安全がモットー。
それだけに※検査結果が出るまでは「いてもたってもいられなかった」と言う。
「幸い、うちからはヨウ素もセシウムも検出されなかった。ほっとした。今、大事なことは、生産者も消費者も風評に惑わされず、正しい知識を持って冷静に行動することだと思う。それが復興への一歩につながると信じている」と前を見る。

安全・安心至上主義はこれからも変わらない。
風評にも屈しない頑固な農業で、地域を牽引(けんいん)する。

※(財)環境化学研究所が行った放射性物質検査。
食品衛生法が定める食肉中の放射性セシウムの規制値は500 ベクレル/kg

Profile

1941年藤沢町生まれ。(有)懸石農産代表。
安全・安心をモットーに、農薬や化学肥料を使わない米づくりを実践。
93年からアイガモ農法、97年からEM(有用微生物群)栽培米に取り組む。
藤沢有機の会会長、認定農業者、水田環境鑑定士。
妻、長男、母と4人暮らし。藤沢町新沼在住。70 歳

三浦さんの水田
三浦さんの水田。有機農業の看板(左)。青は空、緑は田、茶は土を表す。水田環境調査(右)では最高ランクの「特A」に鑑定された。
「環境は自分だけでは守れない。地域の皆さんの理解と協力があればこそ」と感謝する

いちのせきの広報誌「I-style」1月1日号