国の重要文化的景観『一関本寺の農村景観』

栗駒山を背に立ち並ぶほんにょかつて中尊寺経蔵の荘園として栄えた厳美町本寺地区は、中世以来の農村の仕組みを未来へ伝えるため、18年7月、国の文化財の一つである重要文化的景観に選定されました。中世に描かれた絵図の当時の農村景観が、緩やかに変化しながらも、今日まで極めて良好に継承されてきた、という理由からです。
では“文化財としての景観”の特徴はどのようなものでしょうか。
例えば本寺地区では、山すそや平野部の微高地に、イグネ(屋敷林)に囲まれた屋敷と水田がひとまとまりになった村の姿が見られます。これらは中尊寺文書に記された、「田屋敷」※といわれる中世荘園の支配形態を今に伝えるものです。
本寺地区は、自然地形をそのまま生かした開田以来の土地利用に基づき、曲がりくねった畦や用水路網、小区画水田など、日本の伝統的で典型的な農村景観が継承されています。
自然地形に沿って形成された用水路網により区画された水田団地は、明治から今日までの間に一部直線化されましたが、多くの水田が用水路に接していないため、田から田へと用水を繰り越していく田越しの灌漑が今でも行われています。

本寺地区の伝統的農村景観用水路は一部を除くと、昔ながらの土水路となっており、ドジョウやトウホクサンショウウオ、ニホンアマガエルを含むカエル7種など、多数の在来種の生物が生息しています。
今日まで大規模な開発やほ場整備が行われなかったため、伝統的な土地利用と豊かな生態系が維持された本寺地区。中世荘園をほうふつとさせるその農村景観は全国でもまれで、当時描かれた絵図とともに高い評価を得ています。
※田屋敷…田在家ともいい、屋敷と付属耕地を一体として、年貢負担の対象とされた

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本庁骨寺荘園室

(広報いちのせき平成20年8月15日号)