第2特集 唯一夢二 2
子供たちは一人一人みんな違う
大事なことは上手下手より自分らしさ
キッズの潜在能力を引き出した曽慶方式とは?
「和」を育みながら「輪」を広げる曽慶的夢の育て方
合唱は、複数の人がそれぞれのパートに分かれて歌う音楽スタイル。
整然とした入退場から息のあったコーラスまで「そろえる」がセオリーだ。
ところが、ドリームキッズの持ち味は「自由さ」。
今、できる最高のパフォーマンスで自分自身を表現するステージこそ、「キッズらしさ」なのである。
それぞれが存分に「個」を発揮するあまり、時に足並みがそろわないことも。
だが、上手下手は気にならない。
体格、歌唱力や演技力がでこぼこでも、心は一つだからだ。
指導する保育士の千葉久恵さん。
モットーは、個性を伸ばす育て方。
「子供たちは十人十色。能力は無限。舞台では、それぞれが自分らしさを発揮すれば100点」と言い切る。
褒められるとうれしい。
うれしいから楽しくなる。
楽しいから夢中で頑張る。
だからどんどん伸びる。
キッズと一緒に夢に挑む父母たちは、その名も「ドリームペアレンツ」。
スタッフとして舞台裏を奔走し、自前でコンサートを創り上げるスーパーペアレンツだ。
そんな「ドリームな親子」を曽慶地区をはじめとする地域の人たちが、がっちりサポートする。
第1回からコンサートに関わる千厩町奥玉の自営業及川一郎さんは「キッズの一生懸命な姿を見ていると、手伝わずにはいられない」とにっこり。
コンサートで音響を担当しているほか、サキソフォビアとキッズのレコーディングでは、自身が経営する「角蔵ホール」をスタジオとして提供した。
地元のバンド「ファンタ」のベース小岩哲也さんは、久恵さんと旧知の間柄。
第1回コンサートからバックバンドとしてステージを盛り上げる。
「毎年、キッズの成長を見るのが楽しみ。ずっと応援していきたい」と目を細める。
コンサートを主催するいちのせきキッズプロジェクト・サポーターの菅原角栄代表と親交の深い平泉町の菓子職人吉野崇さんは、ウクレレの弾き語りで話題を呼ぶシンガーソングライター。
「NHKいわてみんなのうた」でオンエアされた「大根コン」はアルバム「ソングス」のラストを飾る代表曲。
収録にあたり、吉野さんからドリームキッズに共演を依頼した。
「土の中から空に向かって顔を出す大根の生命力は、キッズの元気と輝きのようだった」と振り返る。
個を育む「和」と人をつなぐ「輪」を広げていく「曽慶的夢の育て方」。
キッズを応援する人たちが増えている。
Yoshino Takashi
ドリームキッズの歌を初めて聴いたとき、「これはすごい」と心を打たれました。
キッズの特徴は自然体。
一人一人が自分らしく、ありのままの姿や気持ちで歌っているから、心に響くのでしょうね。
伸び伸び歌うステージからは、元気や楽しさが伝わってきます。
気持ちが前面に出て、下からグワーっとわき上がってくる感じは、土の中から地上に顔を出す大根の成長に似ています。
これからも、個を大事にするオンリーワンの歌を聴かせてください。
吉野崇(よしの・たかし)
1975年平泉町生まれ。
菓子職人、運動療法士。
イリノイ州立大学で人間学を学ぶ。
帰国後は大正4年創業の老舗菓子店「吉野屋」の4代目として菓子作りに励む。
平泉町在住、36歳
Chiba Hisae
キッズらしさを大事にしながら
子供たちの「夢」を
広げたい、つなぎたい
2002年に大東町で行われたサキソフォビアのライブで岡さんと出会い、ジャズの魅力にはまりました。
「自分が好きな音楽を子供たちにも経験してほしい」という思いで、音楽を保育に取り入れてきました。
そんな矢先、岡さんから「子供たちに本物の音楽を聴かせたい」と提案され、曽慶保育園での演奏会が実現。
これがターニングポイントになりました。
夢は膨らみました。
当時、保育園で取り組んでいたオペレッタ(音楽劇)を今度は、サキソフォビアの皆さんに見せたいと思いました。
再び、サキソフォビアを曽慶保育園に招きました。
メンバーは、子供たちの演じる姿に見入ってました。
「見る・聴く」から「見せる・演じる」へ転換した子供たちも、それぞれ何かに目覚めたようです。
子供たちと一緒に過ごす時間の中で、「音楽を通じて自分を表現する→表現することで自信を持つ→自信を持つことで自分を好きになる」ことを教えたいと思いました。
そんな思いに賛同した有志と「いちのせきキッズプロジェクト」を立ち上げました。
09年2月に第1回コンサートを開きました。
10年2月には「サキソフォビア&ドリームキッズ」名義のCDが全国販売されました。
キッズの魅力は、一人一人の個性がそのまま表現された「らしさ」です。
ここには、子供たちの夢、父母の夢、スタッフの夢、私の夢など、たくさんの夢が詰まっています。
これがドリームキッズの名の由来です。
夢は広がります。
夢はつながります。
これからも、子供たちと一緒に夢を実現していきたいです。
千葉久恵(ちば・ひさえ)
1974年大東町生まれ。
保育士。
02年から08年3月まで曽慶保育園に勤務。
音楽を取り入れた保育がドリームキッズ誕生の原点。
中学時代は吹奏楽部、高校時代は音楽部で活躍。
所属するアマチュアバンドではボーカルを務めるなど、幅広い音楽活動を展開。
大東町摺沢在住、37歳
Saxophobia
井上"JUJU"博之さん、緑川英徳さん、岡淳さん、竹内直さん
ファンタジックコンサートは、プロとアマの単なるコラボレーションではありません。
私たちとキッズの交流は7年以上。
時間をかけて築いてきた強い絆で結ばれています。
たくさんのアーティストと共演しますが、キッズと一緒のステージが一番緊張します。
純真無垢なキッズは、何をするにも真剣。
透明感ある歌声には無条件に感動します。
演奏中、手を止めて聴きたくなるほどです。
ドリームキッズの個性を大事にする活動は、サキソフォビアの信念とも共通しています。
近年、人と人とのつながりが希薄になっているといわれています。
キッズの活動は、親子の絆、仲間とのつながり、地域のコミュニティーなどを強くしていると思います。
素晴らしい活動です。
Saxophobia(サキソフォビア)
98年に結成されたジャズカルテット。
サックスのほかフルート、篠笛、バスクラリネットなどを演奏し、多彩なサウンドで注目を集める。
楽曲は、ジャズの隠れた名曲、ポップス、民謡、オリジナルと幅広い
Oikawa Ichiro
第1回から関わっています。
毎回、レベルアップしています。
最初の頃に比べて声もずいぶん出るようになりました。
のみ込みの早さには驚かされます。
キッズの持ち味は「元気」。
元気になったり、癒やされたり、勇気をもらったりします。
父母や地域の皆さんなど、関わっている人たちの一体感もいい。
みんなで作っていることを実感できます。
これからも音響で協力したいし、応援していきたいと思います。
及川一郎(おいかわ・いちろう)
商店経営。
蔵を改造した「角蔵ホール」を拠点に、各種イベントの企画や若手ミュージシャンの育成に尽力。
千厩町奥玉在住、54歳
Fanta
第2回コンサートから参加しています。
回を重ねるたびに、子供たちの成長を見たり、感じたりできるので楽しみです。
子供たちの舞台度胸にはいつも驚かされます。
堂々としたあの輝きはキッズならでは。
子供たちを後ろから支える私たちバンドも感動しているんですよ。
(キーボードの古川さん)
Fanta(ファンタ)
ファンタジックコンサートをサポートするために結成された。
子供たちと音楽をこよなく愛する4人組
吉野さんのCD「ソングス」。 やさしい歌声とウクレレの音色に心底癒やされる。 ラストを飾る「大根コン」はドリームキッズが共演。 吉野さんの妹が育てる大根の生命力に感動して作った |
サキソフォビア&ドリームキッズ名義で2010年1月に発売されたCD「世界中のこどもたちが」 |
千厩町奥玉の「角蔵ホール」で行われたレコーディングは一発録り。 |
広報いちのせき「I-style」4月1日号