「布佐神楽」は後世に伝えたい私たちの誇り。「つなぎ役」として頑張っていくよ。

千葉仁一さん

本年4月5日、岩手県指定無形民俗文化財に指定された川崎町門崎の「布佐(ふさ)神楽」。
同神楽の保持団体の認定を受けた「布佐神楽保存会」の代表千葉仁一(じんいち)さんは6代会長だ。 

29日に行われた布佐神楽の「創立150周年記念式典・祝賀会」(同実行委主催)では「150 年という輝かしい伝統と歴史を築き上げてきた先人、先輩たちの偉業をたたえたい」とあいさつ。
「その労苦をしのび、後世に伝えること、長い伝統に培われた芸術文化の振興を図ることを目的に式典を行えたことは意義深い」と脈々と受け継がれてきた伝統に思いをはせた。

布佐神楽は1863(文久3)年、相川村(あいかわむら。現在の市内舞川)から神楽を伝授したのを創始とし、時代の流れと共にさまざまな神楽の要素を採り入れながら、大正時代までに現在の芸風の基礎が培われてきた。
第2次世界大戦後、後継者難に陥り、衰退の一途をたどった時期もあった。
しかし、地元の人々の「布佐から神楽をなくせない」という強い思いで1972(昭和47)年、保存会が結成された。「まさに地域ぐるみの取り組みだった」と振り返る。

以降、「後継者の育成」を保存会事業の最重点に掲げ、活動を続けてきた。布佐地区に鎮座する神社の春秋例祭には欠かさず神楽を奉納したり、地域内外の催事や芸能祭に招かれて舞ったりすることも多い。海外公演も4回を数える。

「多数の演目を保持・継承していることも布佐神楽の特徴」と誇る千葉会長。150 年という節目に立ち会えたことに「大きな喜び感じている」と目を細める。

県の無形民俗文化財に指定されたことについては「重責を背負った感じだ」と表情を引き締め、「この記念すべき日を機に、郷土に誇る無形民俗文化財は古里の文化遺産であるという認識を新たにした」と語る。
さらに、伝承と後継者育成に取り組むことの重要さを自覚し、「これからも地域を挙げて精進していく」と決意する。

150 周年も「通過点」と言い切る千葉会長。「これから200 年、300 年と続けていけるよう、『つなぎ役』として頑張っていくよ」と語る表情には、優しさと使命感がにじみ出る。

次の舞台は7月の川崎公民館での発表会。今日も稽古場には、文久から受け継がれてきた太鼓の音が響く。


布佐神楽

創立150 周年記念祝賀会で披露された布佐神楽。
演目は「叢雲神語(むらくもしんご)-八岐大蛇(やまたのおろち)退治-」。
布佐神楽の「天井の大蛇」は自在に操られる。大蛇と素戔嗚尊(すさのおのみこと)の躍動感のある「戦い」は見応えがある。

Profile

1949年生まれ。
平成21年4月、布佐神楽保存会6代会長に就任、現在に至る。
保存伝承活動、後継者育成に精励。創立150周年記念式典実行委員長を務める。妻朋ともこ子さんと2人暮らし。
川崎町門崎字布佐在住、64歳

広報いちのせき「I-Style」 平成25年5月15日号