【特集1】学校統合 第1部 閉校_3
薄衣小学校
情操教育に力を入れ、人材を育成閉校後は新生川崎小学校に
「お別れの言葉」でこれまでの思い出や感謝の気持ちを発表する153人の児童
薄衣小学校(廣長秀一校長、児童153人)の閉校式は3月17日に行われた。
全校児童、保護者、教職員、住民、関係者など約400人が見守る中、141年の歴史に幕を閉じた。
あいさつに立った廣長校長は「これまで数多くの思い出を育んできた薄衣小校は、その歴史を閉じます。児童の皆さんは、統合する門崎小学校の皆さんと力を合わせて新しい歴史を築いてください」とエールを送った。
全校児童による「お別れのことば」では、閉校までの歩み、学校行事、クラブ活動での思い出などを紹介したほか、新しい学校生活に向けての決意を発表。
その後、「ありがとう薄衣小、さようなら薄衣小」と声をそろえて締めくくった。
式の最後に廣長校長から鈴木市教育委員会委員長へ校旗が返納され、全員で校歌を斉唱。141年の歴史に終止符を打った。
1872(明治5)年に創立した同校は、金管クラブによるマーチング・演奏活動、読書フロンティアスクールの指定を受けての図書館利用の充実、読み聞かせ、図書館ボランティアの活動など情操教育に力を入れてきた。
また、野球、ソフトボールが県大会など各種大会で上位入賞するなど、スポーツでも優秀な成績を残してきた。
ピーク時には千人以上が在籍していた同校。創立からこれまでの卒業生は1万人を超える。
閉校後の校舎は新生川崎小学校として生まれ変わる。門崎小学校の仲間を迎え、新しい歴史を刻み始める
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廣長秀一さん
ひろなが・しゅういち 第36代校長
私は、薄衣生まれの薄衣育ち。母校が閉校する最後の一年を勤務することに複雑な気持ちでした。
今までの薄衣小学校の伝統を受け継ぎ、子供たちの心に残る一年にしたいという思いで過ごしてきました。
小野寺紀香さん
おのでら・のりか 児童会長
私たちが最後の卒業生。141年の歴史がある学校を誇りに思います。
悲しい気持ちでいっぱいだけど、心からありがとうと言いたい。
後輩たちには門崎小のみんなと、もっといい学校にするよう頑張ってほしい。
菊地輝昭さん
きくち・てるあき PTA会長
薄衣小学校の歴史を振り返ると、家庭と地域の協力が伝統となっていることが分かります。
これまで諸先輩方が築いてきた薄衣の良い伝統を新しい川崎小学校に伝えていけるよう努力していきます。
佐藤昭彦さん
さとう・あきひこ 閉校記念事業実行委
薄衣小が、共に歩み続けてきた地域の皆さんの心にいつまでも深く刻まれることを願っています。
子供たちには、新しい学校で新しい仲間、地域の皆さんとたくさん交流して仲良くなってほしいです。
薄衣小学校
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門崎小学校
地域の特色を創作劇「ゆりのき物語」で発信 最後の上演で閉校に花を添える
「ゆりのき物語ヒストリア」のフィナーレ。オリジナル曲「ゆめをうたおう」の大合唱に会場から大きな拍手が送られた
門崎小学校(佐藤毅校長、児童61人)の閉校式は3月23日、同校体育館で行われ、全校児童、教職員や関係者ら約300人が思い出多い学びやに別れを告げた。
式では佐藤校長が「長年、地域の愛情を受け続けてきた門崎小は、名実ともに『地域の学校』。在校生の皆さんには門崎小で学び、培ったことを忘れず、川崎小から新しい一歩を踏み出してほしい」とあいさつした。
全校児童による「お別れの言葉」では、思い出を振り返りながら「門崎で生まれ育った誇りを胸に、新しい夢に向かって明るく、力強く生きていきます」と決意した。
校旗返納ではすすり泣く姿も見られるなど、多くの人が地域に愛された学校の閉校を惜しんだ。
式終了後は、全校児童が出演する創作劇「ゆりのき物語ヒストリア」が上演された。
「ゆりのき物語」は、同校で24年にわたって継承されてきた創作劇。児童が地元の歴史文化を取材した内容を脚本に反映させ、毎年学習発表会で披露してきた。
今回は、創作劇が誕生するまでの経緯を当時の関係者らの証言や協力を得て忠実に再現。
郷土愛たっぷりの舞台が会場を魅了した。フィナーレは、オリジナル曲「ゆめをうたおう」の大合唱で締めくくり、会場から盛んな拍手が送られた。
1873(明治6)年に開校した同校は、これまで約4千人の卒業生を送り出した。地域の伝統芸能「布佐神楽」の継承、「ゆりのき物語」の発表など地域と一体の教育活動を繰り広げてきた。
閉校後は薄衣小と統合し、川崎小として新しい一歩を踏み出す。
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佐藤毅さん
さとう・たけし 第35代校長
地域の皆さんが門崎小学校を思う強い気持ちは、「どの子も大切な門崎の子供」として接する献身的な支援があったからだと思っています。
子供たちは、その皆さんの姿・精神を学び、引き継ぎ成長していきます。
那須野かこさん
なすの・かこ 児童会長
門崎小学校で私が好きな場所は体育館です。大好きなバスケを友達と一緒にやりました。
つらい思い出、悲しい思い出、うれしい思い出を作ってくれた6年間。この学校と共に過ごせたことを絶対忘れません。
千葉正浩さん
ちば・まさひろ PTA会長
門崎小学校は、これまで幾多の水害に耐え、門崎地域の中核として歴史と伝統を築いてきました。
これまでの輝かしい伝統を引き継いで、川崎小学校でも新しい歴史を刻んでいってほしいです。
千葉勝雄さん
ちば・かつお 閉校式記念事業副実行委員長
「ゆりのき物語」は私がPTA会長を務めていたときにできたもの。
閉校記念事業として取り組んだ「ヒストリア」で、24年間演じられてきた創作劇が生まれたきっかけを多くの人に知ってもらうことができました。
門崎小学校
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それぞれの歴史、伝統、文化は新しい学びやで一つになる
2013年3月、達古袋、摺沢、渋民、曽慶、薄衣、門崎の6小学校が閉校した。いずれも約140年の長い歴史を重ねてきた伝統ある小学校だ。
各校の閉校式には、児童、教職員、関係者だけでなく、卒業生や地域住民も多数出席した。
校旗が返納され、校歌が斉唱されると、会場ではすすり泣く姿もみられた。どれだけ地域に愛されてきたかは、涙を流した人の数が物語っている。
自分が通った学校がなくなるということは、本当に悲しいことだ。自分の歴史の一部が消されてしまうような感覚でもある。
子供たちはもとより、長い間、学校と関わってきた地域の人たちにとっても、本当につらいことかもしれない。
明治以来、学校は、地域でもっとも環境の良い場所に造られてきた。
単なる学びやとしてだけではなく、地域の文化、スポーツ、コミュニティーの拠点しての役割も担ってきた。
そのシンボルが失われるなら、せめて建物だけでも利用したい、そう願うのは当然のことだ。
室根町の旧釘子小学校が「国際医療福祉専門学校一関校」に、大東町の旧京津畑小学校が「京津畑交流館・山がっこ」へ生まれ変わったように、今、全国各地で廃校を利用する取り組みが行われている。
人が集う場所、人と人とをつなぐ場所として、その役割は、これからも続いていく。
4月から達古袋小学校は厳美小学校、摺沢、渋民、曽慶の3小学校は大東小学校、薄衣、門崎の両小学校は川崎小学校として新たなスタートを切った。
約140年にわたり、学校と地域が一つになって築いてきた伝統や精神は、これからも受け継がれていく。新しい学びやで。
(「6月15日号」第2部開校に続く)
【参考文献】
達古袋小学校閉校記念誌「達古袋」▽摺沢小学校閉校記念誌「たまほり」▽渋民小学校閉校記念誌「明倫」▽曽慶小学校閉校記念誌「みかげの森」▽薄衣小学校閉校記念誌「いずみ」▽門崎小学校閉校記念誌「ゆりのき」
広報いちのせき「I-Style」 平成25年5月15日号