生き続ける地域の宝 樹齢450年越えのサクラを守りたい

鈴木紀昭さん
Suzuki Noriaki 81 川崎町門崎
素人ながらも巨樹の存続を願い続ける

川崎町門崎の鈴木紀昭さん宅の裏庭にアズマヒガンザクラがある。
地域の呼称は「峰のアズマヒガン」。
樹齢450年を超える巨樹だ。

県内の貴重な巨樹・名木について1997年から3年かけて調査したデータがある。
(社)岩手県緑化推進委員会が行った存在確認と保護対象のための調査結果だ。
樹種別エドヒガンザクラ部門の幹周順位は、遠野市にある2つの巨樹(「高隆のエドヒガンザクラ」730センチ、「大日山の桜」660センチ)に次ぐ3番目。
幹周620センチ、根元周690センチ、樹高16メートルを記録した(1999年12月現在)。

紀昭さんが学生の頃、近所の人たちが集まってサクラの下で花見の宴をしていた。
木の根元にある木舟様の下へ市内外から参拝客や、新聞でサクラが紹介された時は見学者が訪れたことも。
春はサクラ色、夏は緑色に茂った巨樹。
地域住民を楽しませ、見守り続けてきた。

しかし、30年前頃から樹勢は変化。枝が折れたり、幹にぽっかり穴が空いたりした。
幹の皮が剥がれ、新しい皮ができる。
その剥がれた皮が腐食し、そこに鳥が運んだケヤキやタラの芽のタネが発芽。
ケヤキが成長し、サクラの立ち木が脅かされたことも。
堂々と花を咲かせていた巨樹が遠い昔のよう。

市や県の指定に登録されてもいない無名のサクラ。
「このままほうっておくと枯れてしまう。だが素人が手を出しては枯れを助長しかねない」とやるせない思いに胸が痛む。

「他にも古い木を残したいと思い悩む仲間がいるはず。生きているものが枯れたら元も子もない。巨樹は5年や10年でできるものではない。今あるものをどう保存するか。価値を見出し、保存に手を尽くしたい」と力を込める。

以前、近隣の市で樹木医らが巨樹の樹勢回複作業を行ったという記事を目にした。
素人ながらも研究を重ねるが、限界はある。
「専門家や地域の支援の手が伸びてくれればこの上ない」。
少しの期待を胸に、450年の歴史にさらなる活力をと意気込む。


4月下旬に見頃を迎えた「峰のアズマヒガン」。
鈴木家の屋号からこの名で呼ばれるように。
空洞ができた幹から生えた新芽を発見。
必死に生き延びようとしているのだろうか。
来年もきれいな花を咲かせてほしい。

Profile

1931年川崎町生まれ。
2008年3月まで38年間、市交通指導隊を勤める。
家庭菜園で野菜を栽培。一時40種を育てたことも。
農機修理を自ら行うほど、機械に強い。写真や読書など多趣味。
妻と2人暮らし。川崎町門崎在住。81歳

広報いちのせき「I-style」6月1日号