令和8年一関市議会定例会第123回2月通常会議の開会にあたり、令和8年度の教育行政施策について申し上げます。

 

1 はじめに

 今日の教育を取り巻く社会環境は、急激に変化してきております。特にも、市内の人口減少が進行しておりますが、令和7年5月1日現在の中学3年生は829人に対し、小学1年生は573人であり、256人減少していることからも、子どもにおいてより顕著に現れてきております。

一方で、デジタル化(DX)やグローバル化が進展する中、将来の予測が困難な時代を生き抜く力や、多様な背景を持つ人々との共生が求められています。

 こうした時代の要請と地域の課題に的確に対応し、「ひとりひとりが輝く 挑戦しつづけるまち いちのせき」を目指す市の総合計画を上位計画として、令和8年度から令和17年度までの10年間を期間とする「第3期一関市教育振興基本計画」の策定を進めております。本計画では、教育基本法の理念や国の第4期教育振興基本計画の方針を踏まえつつ、基本目標として「郷土を愛し 自ら学び 未来を拓く 一関のひとづくり」を掲げたいと考えております。本計画によって、豊かな自然や歴史・文化を誇りとし、変化の激しい社会においても 、積極的に未来を切り拓く力を持ち、一関の持続的な発展を支える人材を育成することを推進したいと考えております。令和8年度は、この新たな計画の初年度として、次の10年を見据えた教育行政の新たなスタートを切る重要な一年となります。

 

2 横断的な重点事項

 基本目標の実現に向け、学校教育、社会教育、文化財・地域文化、教育を支える基盤整備の各分野を有機的に連携させ、相乗効果を生み出していくため、次の4つの横断的な視点を持って、施策を展開してまいります。

 

  • ことばを大切にする教育  

一つ目はコミュニケーション力の向上や郷土への誇りを育む「ことばを大切にする教育」であります。全ての学びの基礎である「ことば」の力を育むため、市立図書館と連携した読書活動の推進や「ことばのテキスト『言海』」の活用などを通じて、思考力、表現力、コミュニケーション能力を育成します。

 

  • グローバル人材の育成  

二つ目は、グローバル化していく現代社会に対応できるひとづくりを目指す「グローバル人材育成」であります。

外国語によるコミュニケーション能力を育むことや国際理解を充実させることはもとより、地域の歴史や文化を深く学ぶことを通じて自らのアイデンティティを確立し、多様な文化や価値観を尊重する人材を育成します。

 

  • 学校と地域の協働  

三つ目は、地域とともに歩む学校を目指す「学校と地域の協働」であります。

学校運営支援協議会を核にしながら、教育振興運動推進協議会や市民センターと連携して、地域全体が教育の当事者であるとの認識を共有し、それぞれの役割を果たしながら子どもたちの成長を支えてまいります。

 

  • 文化財・文化施設の活用  

四つ目は、「文化財・文化施設の活用」であります。骨寺村荘園遺跡をはじめとする地域の文化財を、単に保護の対象とするだけでなく、探究的な学びやふるさと学習の「生きた教材」として積極的に活用し、郷土への誇りを育みます。

 

 以降については、教育行政の具体的な施策について申し上げます。

 

3 社会を生き抜く力を育み次代を担うひとづくり

 一つ目に、学校教育の推進として「社会を生き抜く力を育み次代を担うひとづくり」について申し上げます。

  • 地域との連携・協働による特色ある学校づくり

地域との連携・協働による特色ある学校づくりについては、学校運営支援協議会を核として、地域住民の学校運営への理解を進めるとともに、学校と地域の連携・協働による特色ある教育活動や非常時の緊急対応などを取り上げ、地域に開かれた信頼される安心・安全な学校づくりを推進します。

 

  • ことばの力を育てる教育

ことばの力を育てる教育については、学校図書館と市立図書館の連携と、読書普及員の全小中学校への継続配置により読書活動を活性化します。また、小学校においては「ことばのテキスト『言海』」を活用し、語彙を豊かにするとともに言葉の感性を磨きます。さらに、博物館等と連携し、「ことばの先人」について学ぶ機会を提供し、児童生徒に郷土の誇りと愛着を育みます。

 

  • キャリア教育

キャリア教育については、発達段階に応じ、家庭や社会の一員として役割を果たしながら自分らしく生きる力、地域の未来の担い手としてたくましく生きる力を育成します。

特に、全ての中学2年生が5日間の職場体験を行う「社会体験学習」は、学校、家庭、地域、行政、事業所、関係機関が連携し、望ましい職業観・勤労観、自己決定能力を育む本市独自の貴重な機会であり、事業所の皆様のご協力をいただきながら、充実させていきます。

また、幼児期から大学までの市内各教育機関による(幼小中高特高専大)学校運営推進協議会を引き続き開催し、キャリア教育を中心とした共通の目標をもって発達段階に応じた教育活動に取り組みます。

 

  • 確かな学力を育む教育

確かな学力を育む教育については、学習指導要領の趣旨を踏まえ、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を推進してまいります。

引き続き、算数・数学を重点教科に位置づけ、教員を対象とした研修会を実施するとともに、学習支援員を重点校に配置します。また、基礎的・基本的な学習内容の定着を高めるために、指導主事や学習指導専門員を派遣し、授業づくりの支援を行い、児童生徒の基礎学力の向上を図ってまいります。

併せて、外部講師を招いて教科横断的な学習を行う「学びの深化プロジェクト」にも取り組んでまいります。

 

  • 豊かな心を育む教育

豊かな心を育む教育については、道徳教育や体験活動を充実させるとともに、学校・家庭・地域が連携して自分の大切さだけではなく、他の人の大切さも認める心、規範意識や協調性、責任感、感性などを育みます。

このほか、積極的に自然体験、社会体験などの体験活動を推奨し、福祉やボランティア活動などを通して社会に関わる心構えや姿勢を培います。

 

  • いじめ・不登校への対応

いじめへの対応については、各学校が策定した「いじめ防止基本方針」に基づき組織的に対応していくことを支援し、いじめの未然防止・早期発見・早期対応に努めるとともに、関係機関との情報共有や連携を強化してまいります。

また、不登校への対応については、誰一人取り残さない教育の実現に向け、児童生徒一人一人の状況に応じた多様な学びの場を確保してまいります。

新たに校内教育支援センターを段階的に設置するとともに、教育支援センター「たんぽぽ広場」での支援、相談活動も充実させてまいります。

併せて、保護者相談会を新たに設けるほか、多様な学びの場についての各種相談窓口の周知や民間施設との連携も進めてまいります。

 

  • 自立して生きる力を支援する教育の推進

自立して生きる力を支援する教育の推進については、特別な支援を要する子どもの割合が増加傾向にあることから、教員を対象とした心理検査者の養成研修を開催し各学校の教育相談・特別な就学相談体制の充実を図るとともに、特別な支援が必要な子どもに対しては、社会的自立と社会参画が実現するように学校サポーターを配置し、その困難さに寄り添った教育活動を展開してまいります。

また、発達支援等が必要な幼児のため「幼児ことばの教室」を引き続き設置し、自立活動支援や保護者相談に応じます。

 

  • 教育DXによる教育情報化

教育DXによる教育情報化については、GIGAスクール構想により整備される1人1台端末の更新を行うとともに、児童生徒の学びを支援するアプリケーションソフトについても見直しを行い、端末を効果的に使いこなす日常的な活用を進め、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させてまいります。

加えて、情報社会に必要な情報モラルに対する指導も充実させてまいります。

 

  • グローバル化への対応

グローバル化への対応については、国際理解教育を充実させるため、全小中学校にALT(外国語指導助手)を派遣し、外国語によるコミュニケーション能力の育成を図ります。

また、目標をもって外国語学習に取り組めるよう、英語検定料の助成を行うほか、日本語指導が必要な外国人児童生徒などへの支援も行います。

さらに、多様な文化や価値観を尊重する態度を養い、これからの社会を主体的に築く力を育みます。

 

(10) 健やかな体を育む教育

健やかな体を育む教育については、児童生徒の健康の保持増進に努めるとともに、学校・家庭・地域の連携を図り、よりよい運動習慣・望ましい食習慣・規則正しい生活習慣形成を推進します。

運動面からは、体育授業の充実のほか、家庭と協力しながら1日60分以上の運動、いわゆる「60(ろくまる)運動」を推奨するなど、日常的に運動の機会を確保する取組を推進してまいります。保健面からは、学校給食を通じた食育指導の充実を図るとともに、健康観察・健康診断を通じたきめ細かな保健指導を行い、発達段階に応じた生活習慣の形成を推進します。

 

(11) 質の高い幼児教育

質の高い幼児教育については、5歳児から小学校1年生の2年間である「架け橋期のカリキュラム」を幼稚園・保育園・こども園と小学校が連携し、作成・実践することで、幼児期に育まれた資質・能力が小学校以降の学びにつながるようにしてまいります。

また、合同研修会を設けてその意義を普及・啓発してまいります。

 

4 ともに学び、まちと地域をつくるひとづくり

二つ目に、社会教育の推進として「ともに学び、まちと地域をつくるひとづくり」について申し上げます。

(1)社会教育の充実

社会教育の充実については、市民が生涯にわたって自ら学ぶことができるよう、ニーズに対応した市民センターでの講座を企画するなど、多様な学習機会を提供するとともに、リカレント教育を含む生涯学習の充実に努めてまいります。

また、世代を超えて人とつながることで、学びの成果を地域活動へとつなげ、地域の教育力の向上と、市民のウェルビーイング(心身ともに良好な状態)の実現を目指します。

 

(2)家庭教育の充実と地域の教育力向上

家庭教育の充実と地域の教育力向上については、少子化や核家族化、人間関係の希薄化などにより、家庭や地域社会における教育力の低下が指摘されていることから、学校、PTA、地域、企業、行政が連携、協力し、家庭教育講演会等による学習機会の提供や情報発信を行います。

また、保護者をはじめ子育てに関わる方々を対象に、家庭教育学級や子育て支援講座などを実施し、家庭教育を支える取組を推進します。

さらに、学校支援活動事業による地域ボランティアの参画など、地域住民の参画による地域と学校の連携した活動を推進します。

 

(3)学習環境の充実

学習環境の充実については、市民の生涯学習活動を推進し、主体的な地域づくり活動を支援するため、市民センターにおいて地域の特色や資源を生かした多様な学習機会を提供してまいります。こうした取組を担う社会教育の専門性を備えた人材の育成のため、指定管理を行っている市民センターの職員が社会教育主事講習を受講する際の費用等を支援してまいります。

また、市民の生涯学習と地域づくりの拠点施設として、安心して利用できるよう、市民センターの環境の維持・向上に努めます。

 

(4)図書館機能の充実

図書館については、市全体の貸出冊数が県内の自治体で最多となっており、多くの方々に利用されています。

現在策定を進めている一関市立図書館振興計画の基本理念である、「いつでも、どこでも、だれでも、知り、学び、楽しめる図書館、市民とともに成長する図書館」の実現のため、図書の企画展や講座の実施、新しい図書館システムの更新による本の検索や調査支援の強化、学校図書館への支援や、乳幼児に対する読み聞かせ、おはなし会、移動図書館車によるサービスを新たに室根・藤沢地域へ広げるなど図書館機能の充実に努めてまいります。

今後も、市内8館が地域の特色をいかした図書館サービスの向上に努めるとともに、電子書籍やオンラインデータベースなどによる読書環境のさらなる充実に努め、市民が集う地域の情報拠点としての役割を一層高めてまいります。

 

(5)博物館等機能の充実

 博物館等については、市内や周辺市町村をはじめ、全国各地からの入館者があり、当地方における歴史や文化に対する関心の高さがみられることから、更なる運営の充実に努めてまいります。

博物館では、特別展や企画展などの展覧会や、各種講座、体験学習などの教育普及事業の開催のほか、重要文化財である大槻家関係資料の修復など、各種活動を行ってまいります。

また、芦東山記念館、民俗資料館、石と賢治のミュージアム及び大籠キリシタン殉教公園についても、企画・展示の充実を図るなど、身近な場所で地域の歴史・文化が学べる場を提供してまいります。

 

5 誇りと愛着を醸成する文化を継承し、未来を創造するひとづくり

 三つ目に、文化財及び地域文化の分野として、「誇りと愛着を醸成する文化を継承し、未来を創造するひとづくり」について申し上げます。

(1)文化財の保存と活用

 文化財の保存と活用については、文化財や歴史的な景観の調査研究を進めるとともに、修繕や保存活動への助成などにより、地域の文化財を良好な形で次世代に伝えてまいります。

また、博物館などでの展示、イベントの開催などを通じ、文化財に触れる機会を充実させ、観光振興や地域づくりに活用してまいります。

 令和8年3月は、骨寺村が中尊寺経蔵別当領となって900年目を迎えることから、記念事業を開催し、骨寺村荘園遺跡の価値と魅力を発信するとともに、地域づくり活動に対する支援を継続してまいります。

 

(2)地域文化の伝承

 地域文化の伝承については、民俗芸能の調査研究を進めるとともに、後継者育成支援や活動状況の映像記録、保存を継続的に行い、継承活動を支援してまいります。

また、地域ゆかりの偉人、先人たちの調査研究を進めるとともに、郷土への誇りと愛着心の高揚を図り、身近に学ぶことができるよう機会の提供を図ります。

 

6 教育活動を支える基盤整備

 四つ目に、「教育活動を支える基盤整備」について申し上げます。

(1)教職員の働き方改革の推進と持続可能な教育環境の整備

 教職員の働き方改革の推進と持続可能な教育環境については、教職員の長時間勤務の是正を図るための計画を策定・公表することを通して、児童生徒と向き合う時間や、授業準備、個別指導のための時間などを確保するとともに、ワークライフバランスを意識した改善を進めてまいります。

 併せて、令和6年度から本格稼働した統合型校務支援システムの活用により、事務の効率化を図り、一層働きやすい環境づくりを進めてまいります。

 また、市長部局であるまちづくり推進部と連携して、部活動を持続可能な地域クラブ活動へ移行を進めるための協議・検討をしてまいります。

 

(2)教育機会の均等確保

 教育機会の均等確保については、経済的な理由により就学が困難な児童生徒及び学生に対して、就学援助事業や奨学金貸与事業など、学びのセーフティネットを確保してまいります。

 

(3)安心・安全で持続可能な教育施設の整備

 安心・安全で持続可能な教育施設の整備については、一関小学校整備事業における建設工事に着手するとともに、学校の屋内運動場へ空調設備の設置を計画的に進めるなど、教育環境の改善を進めてまいります。

 また、危機管理マニュアルを適宜見直し、非常時の行動や災害への備えを徹底することで、安心・安全な学校生活の実現に努めます。

 学校規模の適正化や適正配置ついては、児童生徒の推移状況や地域コミュニティにおける学校の役割、地理的要因などを踏まえた教育環境の在り方について、学校運営支援協議会やPTA等と課題の共有を図ってまいります。

 

7 むすび

 以上、令和8年度の教育行政施策の概要を申し上げましたが、これらを現在策定中である第3期一関市教育振興基本計画の初年度として、学校、家庭、地域、そして行政が一体となり、それぞれの役割を果たしながら連携・協働し、教育の振興に邁進してまいります。

 議員各位並びに市民教育関係者の皆さまのご理解、ご協力、ご指導を心からお願い申し上げます。