令和8年度施政方針
1.はじめに
一関市は、平成17年の市町村合併で誕生し、これまで、20年の年月を歩んでまいりました。
合併当初は一体感の醸成が合言葉となり、やがて一つの自治体として「郷土の宝」を探し、見つけ、育てることに新たな価値を見出してきた20年間でありました。
この間、
・ リーマンショックによる100年に1度とされる経済不況
・ 1,000年に1度と言われる東日本大震災の発生
・ そして、100年に1度のパンデミックとされる新型コロナ
を経験し、また、コンピュータやICT(情報通信技術)による生産の自動化・効率化、インターネット技術の発達による第三次産業革命と称されるデジタル革命など、日本や世界は、経済・文化・生活の面で急激な変容を経験した20年間でもありました。
こうした経験は、人々の価値観に変化をもたらしました。
物質的な豊かさだけではなく、「平穏で幸せな日常」を望む声が強まり、家族や地域の「絆」を重んじる感性を育み、働き方や対面での交流のあり方も見直されました。
個人の消費行動や余暇の過ごし方、働き方の多様化、地域コミュニティの役割の再評価といった人々の価値観の変化は、行政に対する市民ニーズを変化させることにつながります。
いわゆる行政ニーズの多様化、拡大でありますが、私どもは、これを、新たな可能性を生み出す契機として捉えなければならないと考えております。
このような認識のもと、令和8年度においては、
・ 最大で最優先の課題である人口減少への対処、
・ そして、私たち自身やこれから生まれてくるこどもたちが、幸せを実感できるまちを実現する、
このことに集中し、施策を進めてまいります。
2.ひと・まち・しごとの推進
令和8年度は、平成17年の市町村合併から、21年目を迎える年であり、新しい一関市総合計画がスタートする年度であります。
総合計画は、市民、企業、行政など、私たちが目指す、まちづくりの方向性を定めるものであり、まちの将来像を「ひとりひとりが輝く 挑戦しつづけるまち いちのせき」としております。
令和8年度の主な取組について、基本計画の11の構成要素ごとに、新規、拡充事業を中心に、述べさせていただきます。
(1) いちのせきで「いきる」 ひかり輝く「ひとづくり」
一人ひとりがなりたい自分を見つけ、一人ひとりが生きる幸せを感じる人生を、誰もが認め、受け入れ、応援することができるよう、いちのせきで「いきる」 ひかり輝く「ひとづくり」を目指してまいります。
● 自分らしさを見つけ互いに認め合えるまちへの取組
こどもを地域で育み、誰もが人権を尊重し支え合いながら、個性と能力を発揮し心豊かに生きることができるまちを実現するため、
■5歳児健康診査の開始
■放課後児童クラブ支援員等の人材確保や育成
などを進めてまいります。
■また、すべてのこどもが心身ともに健やかに成長できるよう、
・ 子育て世帯の経済的負担の軽減、
・ 育児不安や孤立の解消など、
地域全体でこどもとその家族を支え合う取組を進めてまいります。
● 大切なひととの未来を育むまちへの取組
結婚・出産の希望が不安なく叶えられるとともに、その選択が尊重され、地域の支えの中で安心して子育てできるまちを実現するため、
■妊婦健康診査における公費負担の妊娠40週以降への拡充
■産後ケア事業への通所全日型及び宿泊型のメニューの追加
■保育所等における業務のICT化の推進
■ひとり親の養育費確保への支援
などを進めてまいります。
● 学びで可能性を広げるまちへの取組
質の高い学びを通じて、こどもが個性を伸ばし生きる力を育むとともに、誰もが誇りと学ぶ意欲を持ち自己実現できるまちを実現するため、
■一関小学校の新しい校舎と体育館の建設
■児童・生徒への1人1台のタブレット端末及び学習アプリケーションなどの更新
■学校体育館への空調設備の計画的な設置
■一関市地域クラブ活動推進協議会における、地域クラブ活動の充実に向けた協議・検討
■高校生への講話などを通じた、若者が地元を理解し、地元への定着を促進する取組
■学校法人河合塾学園が、令和9年4月に旧油島小学校を活用し開校するドルトンX学園高等学校の設置に向けた支援
■市内県立高等学校の入学志願者の確保に向けた学校と地域との連携による活動や取組への支援
■市内高等学校が行う探究学習活動への支援のあり方についての検討
■市内短期大学の施設整備への支援
■大学における社会の持続的な発展に寄与する取組(USR)や大学等のゼミの受入れに向けた検討
■市民センター建物の現状把握
■一関市総合体育館の大規模改修工事
などを進めてまいります。
■また、いじめや不登校などの困難を抱えるこども、特別な支援を必要とするこども一人ひとりに寄り添い、安心して学び、社会的自立につながる支援を行ってまいります。
■なお、国が実施する「学校給食費の抜本的な負担軽減(いわゆる給食無償化)」については、具体的な制度が明らかになり次第、速やかに実施に向けて準備を進めてまいります。
● いきいきと自分らしく暮らせるまちへの取組
誰もが健康づくりに取り組み、一人ひとりに適した社会との関わりの中で、自分らしく健やかに暮らすことができるまちを実現するため、
■インフルエンザ予防接種の助成対象の拡充
■市内の店舗などへの「まちの保健室」の開設
■シニア世代の交流の場づくりへの支援
などを進めてまいります。
(2) いちのせきで「くらす」・「つどう」 暮らしやすさを感じる「まちづくり」
ひとが、のびのびと暮らせる場としての「まち」と、ひとが様々なかたちで集うことで生まれる「まち」を、整え、培うことで、誰もが暮らしやすさを感じる「まちづくり」を目指してまいります。
● 暮らしやすい・住みやすい環境が整うまちへの取組
整った交通や情報基盤の上に、人・物・情報が活発に行き交い、誰もが利便性と快適さを実感できるまちを実現するため、
■交通事業者の運行支援や公共交通の利用促進
■都市計画マスタープランの改定と立地適正化計画の策定に向けた基礎調査の実施
■新たな汚水処理計画の策定
などを進めてまいります。
■また、一ノ関駅東西自由通路については、既存跨線橋を改修し整備する手法の実現可能性が高まっており、工期の短縮、整備費用の縮減について、調査を継続し、必要な検討を進めてまいります。
■市道の計画的な改良、補修を進め、利便性の向上と道路、橋梁の長寿命化を図ってまいります。
■一関平泉間の国道4号の四車線化拡幅整備、国道343号の笹ノ田峠における新トンネル整備の早期事業化など、広域交通網の整備に向けて、関係市町とともに国県へ働きかけてまいります。
■さらに、一関市水道事業ビション・経営戦略に基づき、計画的な施設更新や効率的な運営を図り、水道水の安定供給に努めてまいります。
● 安全・安心を感じられるまちへの取組
必要な時に医療・福祉につながることができる体制が整い、災害への備えや安全への意識を高め、誰もが安全・安心に暮らすことができるまちを実現するため、
■高齢者の見守り体制の充実
■医療・介護・障がい福祉分野における人材の確保・育成・定着に向けた制度の拡充
■緊急的な河川修繕工事の実施
■防災行政情報システムやいちのせきメールなどの多様な手段による災害時の迅速で的確な情報提供
などを進めてまいります。
■また、行政や関係機関で設置している高齢、障がい、子育て等の各分野の相談窓口、専門機関などと連携し、支援を必要とする人が抱える複雑化、複合化した課題に対し、分野横断的に「丸ごと」受け止める包括的な支援体制の構築に向けた取組を進めてまいります。
■クマをはじめとする野生動物による被害の防止に努めてまいります。
■さらに、県が新たに指定する土砂災害警戒区域などの周知、農業用ため池の防災対策や木造住宅の耐震化など、災害に強いまちづくりを進めてまいります。
■なお、一関遊水地事業については、今年の出水期から遊水地本体の供用が開始されますが、磐井川堤防改修においても一連の治水安全度が確保されるよう、引き続き国土交通省に対し事業の推進を働きかけてまいります。
● ひとが集まり活力があふれるまちへの取組
多様な人が関わり、移住や交流が進み、地域活動が活発で魅力があふれ、市民が誇りと愛着を持つことができるまちを実現するため、
■移住定住やふるさと住民登録制度、二地域居住の取組など、地域と関わる人々の拡大に向けた取組
■地域おこし協力隊制度を活用した地域の課題解決や魅力発信
■日本遺産「みちのくGOLD浪漫」への加入
■危険空家等の解体の促進
■中心市街地における空き店舗の利活用や土地・建物の流動化の促進
などを進めてまいります。
■また、地域の創意と主体性を生かした取組を推進し、地域づくり活動の啓発と意識醸成を図るため、地域協働体や自治会、若者などの活動を支援してまいります。
■なお、国際リニアコライダー(ILC)については、平成25年8月に国内候補地が北上山地に決定してから12年が経過いたしました。
建設候補地の自治体として、国への働きかけをさらに行うとともに、ILCの実現を見据えた人材育成、多文化共生の推進など、受入れ環境の整備にも努めてまいります。
● 環境と共生するまちへの取組
2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロへ一丸となって取り組み、エネルギーが地域で循環する環境配慮のまち、みんなで自然の恵みを守り、次世代へ引き継いでいくことができるまちを実現するため、
■公共施設への太陽光発電設備や蓄電設備の導入
■住宅用または事業所用の太陽光発電設備や蓄電設備の導入への支援
■住宅の省エネルギー性能を向上させるための改修工事への支援
■また、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染に対し、
・ 農林業系廃棄物の処分
・ 学校などに埋設保管している除去土壌の埋立処分
早期解決に向け取り組んでいくとともに、国や最終責任者である東京電力に対し、責任を果たすよう強く求めてまいります。
(3) いちのせきで「はたらく」 やりたいことが実現できる「しごとづくり」
暮らしやすいまちには、ひとが集まり、さまざまな魅力をもつ「しごと」が生まれます。
誰もが自分の生活や生き方に合う「しごと」を選べるよう、やりたいことが実現できる「しごとづくり」を目指してまいります。
● 地域産業が元気なまちへの取組
農林業の担い手確保と生産性向上、商業・観光の活性化、工業の振興と技術継承により産業が持続的に成長するまちを実現するため、
■農業者の経営の多角化と異業種の新規参入への支援
■基盤整備を実施していない地区等における担い手への農地集積の取組の促進
■オーガニックビレッジ宣言を踏まえた有機農業の産地づくり
■林業への新規就業者の技能向上などへの支援
■スマート農業機械の導入の取組への支援
■行事、イベントなどのアウトソーシングによる地域経済の循環
■市内企業の事業所の改築や設備更新、社員寮整備への支援
などを進めてまいります。
■また、地域農業を維持するため策定した地域計画の実行に向け、地域での協議の場の活発化を促し、併せて、基盤整備事業を希望する地区への事業導入を支援してまいります。
● しごとの可能性が広がるまちへの取組
多様な働く場の創出と新規ビジネスへの支援、事業承継の促進により、地域で仕事が生まれ続けるまちを実現するため、
■一関東第二工業団地への企業誘致、(仮称)一関インター西産業用地の整備、学校跡地等活用産業用地の活用による、多様なニーズに対応した企業誘致・事業誘致
■地域産業の担い手を確保するための「分業」の取組に対する支援の検討
■台湾の大学や企業などと、一関工業高等専門学校、いわて平泉農業協同組合、市との間で締結した覚書(MOU)に基づき、人材や産業の交流に関する相互理解と連携の推進
■一関工業高等専門学校とのスタートアップ共同宣言に基づいた学生の地域貢献活動への支援、地域企業への興味や関心を高める取組
■市内における新しい仕事づくりや、地域課題の解決に資する取組への支援
■学校跡地をはじめとした市有財産の活用
などを進めてまいります。
■また、一ノ関駅東口工場跡地については、一ノ関駅東口まちづくり株式会社と連携し、開発を進める民間事業者の選定と土地活用計画の策定に取り組んでまいります。
● 多様な働き方が実現するまちへの取組
誰もが希望に合う仕事を選び、学び直しの機会を得ながら、それぞれが自らの生活に合わせて誇りを持って働くことができるまちを実現するため、
■女性が安心して働ける環境整備のほか、キャリア形成やスキルアップ、職場でのリーダーシップ向上をテーマとしたセミナーの開催
■若者や学生に対する地域企業でのインターンシップの実施
■地元企業など、地域産業への理解を深める機会の提供
■また、人材確保に悩む企業や事業所と、定年後もなお働く意欲を持つシニア層がつながることができるよう、それぞれの課題に取り組んでまいります。
3.まちづくりの考え方
■協働のまちづくりは、市民、地域協働体、企業、行政などが互いの立場を尊重し、継続的な話合いと合意により、協力して取り組むものであります。
引き続き、こうした協働の仕組みを実践し、誰もが安心して暮らせる住み良い地域社会の実現を目指してまいります。
■これからのまちづくりを着実に推進していくためには、将来世代まで見据えた安定的な行財政運営に努めていくことが必要であります。
このため、質の高い行政サービスを持続的に提供できるよう行財政改革に引き続き取り組むとともに、民間事業者の知識や技術、資源を活用する公民連携の取組、公共施設等総合管理計画に基づいた施設保有量の適正化と長寿命化を図ってまいります。
■一関市DX推進計画に基づき、引き続き行政手続のオンライン化の拡大などに取り組み、市民の利便性向上につなげてまいります。
■平泉町と宮城県北の各市を重要なパートナーと位置付け、暮らしに必要な機能を総体として確保するとともに、産業界を含めた、より強く魅力あふれる圏域の形成を目指してまいります。
■郷土への愛着を市民同士が広く共有できるよう、まちの魅力の言語化、可視化を図るとともに、様々な媒体で発信し、共感を広げることで、「一関の魅力」を発信してまいります。
4.おわりに
岩手県人口移動報告年報による令和7年10月1日時点の当市の人口は、10万1,893人と推計されており、今年中には10万人を割り込むことが見込まれております。
人口減少そのものを止めることは困難でありますが、人口が減り続けても、それぞれの地域で生活する一人ひとりが、現在の生活水準を維持し、安心して暮らせる環境を維持していかなければなりません。
合併後のこれまでのまちづくりを踏まえ、これまで検討を進めてまいりました、
・ 一ノ関駅東口工場跡地、
・ 一関商工会議所の移転後の跡地活用、
・ 一ノ関駅東西自由通路、
・ 一関遊水地事業、
・ 国道4号の四車線化や新笹ノ田トンネルの実現
などの懸案事項を、次の段階へ確実にステップアップさせることが必要です。
また、物価高騰対策やクマによる被害防止対策など、目下の課題に対応していかなければなりません。
令和8年度は、若者、女性、外国人、子育て世代、さらにシニア層など、それぞれの多様性を認めた上でそれぞれが新しいことに挑戦できる仕組みや環境をつくっていきたいと考えております。
そして、こうした市の取組と市民各位の取組の足し算、掛け算によって、暮らしやすさを実感できるまちを目指してまいりたいと考えております。
議員各位並びに市民の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げ、令和8年度の市政に臨む方針とさせていただきます。

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