館蔵品

伊達政宗自筆扇面だてまさむねじひつせんめん

伊達政宗自筆扇面
伊達政宗自筆扇面

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 縦33.0cm 横53.0cm
 江戸時代前期(17世紀前期)


 東北を代表する戦国大名で、仙台藩の初代藩主であった伊達政宗の書跡(しょせき)で、政宗の66回忌に田村家が伊達家より拝領したものです。
 華麗な金箔・銀箔が扇の両面にほどこされたその上に、余白無くびっしりと文字が書き込まれています。片面(文章の順序からは裏面にあたる)には、シンプルな緑一色の植物の絵があしらわれています。扇面の意匠と流麗な書体のバランスは、美術品としての価値を余すことなく伝えています。
 文面は、平安時代の宮廷女官・清少納言(せいしょうなごん)の『枕草子』(まくらのそうし)の文体を模して、政宗自身の処世観をきままにつづったものです。
 たとえば、「にくき物 かみそりとりて、ちりくづ(塵屑)のまじりたるものにくし。…物しりかほ(顔)してわかきもの(若き者)ゝ利口する、身のほとし(程知)らで物かきおく(書置)は又にくし」「おふ(多)くてわろ(悪)きもの 酒のとき、さしもなき(たいしたことのない)さかな(肴)のおふ(多)き…食事にしほ(塩)のおふ(多)き…わろ(悪)し」などなど。
 さらに、『伊勢物語』『源氏物語』などがさりげなく引用されるなど、政宗の古典文学の教養がにじみでています。
 政宗自筆の書跡は、書状を中心に千通を越えるものが現存するといわれています。この数の多さは、戦国大名中他に例をみません。筆跡の見事さとあわせ、教養人・文化人であった政宗の、まさに雄将としての器を示しています。
 この文化的な資質は、田村宗良(むねよし)・建顕(たけあき)父子に血筋として受け継がれました。

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