館蔵品

竹雀丸三引紋蒔絵箪笥たけにすずめまるにみつひきもんまきえだんす

竹雀丸三引紋蒔絵箪笥

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 高さ104cm 幅105cm 奥行き48cm
 江戸時代


 これは一関藩主田村家に伝来したものです。正面には大きな竹雀(たけにすずめ)紋と丸竪三引両(まるにたてみつひきりょう)紋が金蒔絵(きんまきえ)で描かれています。蝶番(ちょうつがい)には唐草文が蹴彫(けりぼり)されて、その地には、魚の卵の粒々のような文様、魚々子(ななこ)と呼ばれる鏨(たがね)が打たれています。中央の金具は錠前(じょうまえ)で、中心には小さな丸竪三引両紋がついています。その右上に見えるのがカギ穴です。
 さて、ざっと見ただけでこれを箪笥(たんす)だと思えるでしょうか。錠前(じょうまえ)の金具をつまんで、左右の大扉をゆっくり開けてみましょう。すると、扉の中は、私たちになじみの箪笥のスタイルです。引き出しが五段あって、下三段は一段につきいっぱいの大引き出し、上の二段は左右二列の小引き出しになっています。すべて黒漆(くろうるし)塗りで、それぞれ金色の引手金具がついています。
 このように、大きな観音(かんのん)開きの扉を持ち、外からは引き出しが見えない衣装箪笥は、江戸時代に公家や上級武士などが用いる高級なものに限られていたようです。黒漆塗りで、家紋などが蒔絵で施されているのも共通の特徴といわれます。
 ところで、衣類の入れ物として箪笥が全国に普及したのは、十七世紀末から十八世紀にかけてのことです。それまではもっぱら長持(ながもち)や行李(こおり)など、箱状の収納具を用いていました。今でこそ箪笥を使うことなど当たり前ですが、そもそも服を整理しなくてはならないほどたくさん持っていて、それを頻繁に出し入れすることがなければ、引き出しを持つ入れ物など必要なかったのです。

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