館蔵品

戊辰戦争の軍装ぼしんせんそうのぐんそう

戊辰戦争の軍装
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 展示資料は模造品
 慶応4年(1868)


 これまで、戊辰戦争期の軍装は、近代的な洋式軍装を組織的に装備した「官軍」西南諸藩や幕府軍のものが知られていますが、近代的軍隊としての組織化が不十分であった奥羽越列藩同盟軍側については、制定軍装など不明確な点が多いと思われます。
 このような奥羽越列藩同盟軍側の例として、全藩軍三百数十名に制定軍装を整備した一関藩の軍装一具が近年見出だされました。西洋風の軍服、舶来の革製品を主体とした洋式装備でした。これらは現在は一関市博物館に寄贈されてますが、傷みが激しいので模造品を作製し展示しています。内容は以下のとおりです。
 

1.陣羽織I  袖が筒袖、生地は萌葱(もえぎ)色のペルペトアンまたはラセイタあるいは小羅紗と思われる綾織の荒い梳毛織物です。いずれもオランダ船を介して輸入された生地であろうと思われます。左右の胸には一関藩主田村家の馬印である一ツ巴紋が白縮緬で、両肩には合印の肩章が白木綿で、それぞれ縫い付けられています。
2.陣羽織II  袖が筒袖、生地は紫染めの平織で、呉呂(ごろ)であると思われます。呉呂もオランダ船を介して輸入された薄手の荒い梳毛織物ですが、俗にゴロフクレンといわれました。裏地は藍染の木綿の総裏です。左右の胸には一ツ巴紋が、両肩には合印の肩章が、双方とも白縮緬で縫い付けられています。
3.マンテル  フロック型の外套で、生地は平織で呉呂(ゴロフクレン)であると思われ、染色は黒色。形態は、前開きでボタン(木製)が喉元から臍の線まで四つ付けられ、立襟(スタンドカラー)のハイカラーとなっています。両胸には一ツ巴の紋章が縮緬で縫い付けられ、右胸にポケットが付けられています。また、左肩に合印の白木綿の肩章があります。背面は上部に自家家紋が縫い付けられ、フランス風の切りかえが付けられています。腰から下は前開きで、後ろは馬乗り開き(ベンツ)、背面切りかえの二本のラインにつづき、下方に片ひだがそれぞれ浅く採られています。両側面は箱ひだ(ボックスプリーツ)が付けられています。裏地は襟の部分のみ紫染の木綿地で付けられています。
4.軍服上下  上着とズボンの対になっており、生地は藍染の平織で、マンテルと同じ呉呂(ゴロフクレン)であると思われます。上着は、前開き五つボタン(木製)に立襟、右側中ほどにポケットがひとつ、背面にマンテルと同じようにフランス風の切りかえが付けられています。ズボンは、前ボタン(木製)が三つ、背面左右に付けられた紐を前で結び固着します。裏地は、上下とも藍染めの木綿による総裏となっています。
 マンテル・軍服(上着)ともに、当時、幕府を支持していたフランスの型を模すなど、形態は完全に洋服ですが、縫製方法は和服の技術によっており、過渡期の資料として珍しいものとなっています。
5.下着  上着の下に着けたもので筒袖、生地は藍染の木綿です。裏地は白木綿の総裏となっています。襟は立襟で、ボタンホールが上部にふたつあります。
6.陣笠  反古紙を約1cm程の厚さに貼り重ね、その上に、外側には黒漆を、内側には赤漆をかけています。前頭部正面には金蒔絵で藩主田村家の馬印の一ツ巴紋が施されています。
7.ベルト  黒色染料で染色した舶来品と思われる牛革製と、鹿革に黒漆塗りの二種類があり、バックルに西洋風の趣があります。
8.吊剣ベルト  右肩から左腰に斜めに吊り下げたもの。鹿革に黒漆塗りの伝統的な日本の革細工によっています。
9.弾薬盒  左肩から右腰に斜めに吊り下げたもの。舶来品で、牛革に黒色染料で染色しています。
10.雷管入  牛革製で、内蓋に「J.B THAXTER PORTLAND.ME」と刻印されている舶来品。
11.拳銃ケース  吊剣ベルト同様、鹿革に黒漆を塗ったもの。
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