せんまやひなまつり1
千厩の女性たちがつくる春の風物詩
ひな祭りの起源は古代中国の「上巳節」(3月上旬の巳の日)。
災いをもたらす邪気が入りやすい季節の変わり目に、けがれをはらったと伝えられています。
これが江戸時代、遣唐使によって日本に伝わり、「上巳の節句」は五節句の一つに定められました。
以来、3月3日は女子の節句として定着。
邪気をはらう神聖な桃の木の開花期と重なることから、「桃の節句」とも呼ばれています。
本市の「せんまやひなまつり」は今年が5回目。
手作りのまつりには、県内外から多くの人が訪れ、商店街は活気にあふれています。
過疎化、少子高齢化が進む中で、女性が担う役割は年々重要性を増しており、女性の活躍抜きに地域の活性化は語れません。
「せんまやひなまつり」は女性たちがつくる春の風物詩。
現場に密着して元気な地域を再生するヒントを探ります。
【継承】母から娘へ
千厩の女性たちが手作りで開催する「せんまやひなまつり」。
今日では市内外から5千人もの人が訪れる春の風物詩になりました。
ひなまつりの魅力とは何でしょうか。
その本質に迫ります。
千厩の春の風物詩
「第5回せんまやひなまつり」(同実行委員会主催)は2月11日に開幕、3月4日までの23日間行われています。
メーン会場の千厩酒のくら交流施設や商店街の各店舗には、段飾りやつるし飾りが展示され、訪れる人に季節感と安らぎを与えています。
期間中は各種イベントも目白押しで、千厩の商店街は連日にぎわいをみせています。
酒のくら交流施設で2月11日、行われたオープニングセレモニーには実行委員会、市の関係者や来賓など約30人が出席。
あいさつに立った昆野洋子実行委員長は「立春を過ぎても、まだまだ寒い日が続いています。ひなまつりで、気持ちだけは、ほっこりと春を感じてほしい」と述べました。
来賓を代表して村上達男千厩支所次長が「蘇る老舗酒蔵ひなまつり」と祝辞を寄せ、5回目の春の風物詩が幕を開けました。
随所に女性らしさ
大正ロマン漂う蔵には、江戸時代のひな人形や地域の女性たちが心を込めて作ったつるしびなが飾られ、古里の歴史や文化を感じることができます。
一方、商店街は過去最高の45店舗が参加。
それぞれ趣向を凝らした展示で、街に彩りを添えています。
親子で酒のくら交流施設を訪れた小畑美智さん(32)、凛ちゃん(5つ)、璃子ちゃん(2つ)=千厩字下木六=と西城美枝子さん(30)、美希ちゃん(5つ)、奈海ちゃん(3つ)、幸哉君(2つ)=小梨字時ノ沢=は、ずらりと並んだおひなさまにびっくり。
一つ一つ表情が違うひなをじっくり眺めます。
委員長の洋子さんから段飾りやつるし飾りの説明を受けた凛ちゃんは「つるし飾りのあやめが好き」とにっこり。
美希ちゃんは「こま犬がかわいい」と瞳を輝かせます。
華やかな飾りの前で二組の親子は和やかな時間を過ごしました。
「蔵サポーターの会」「一関商工会議所女性会千厩支部」「せんまや逸品の会」など女性たちが中心となって作り上げたせんまやひなまつりには、繊細で優雅な飾り付けや訪れた人を温かく迎えるおもてなしの心など、随所に女性ならではの感性や心遣いが感じられます。
蔵に差し込む陽だまりのように心地よいひとときは、祭りを通じて受け継がれてきた「女性らしさ」なのかもしれません。
「家庭で」から「地域で」
ひなまつりは、女子の健やかな成長を祈る年中行事です。
ひな人形を飾ってお祝いすることで、優しい心や強い絆が育まれてきました。
同時に、しなやかな感性や地域に伝わる風習が、母から娘へ、娘から孫へと受け継がれてきました。
気仙沼市出身で千厩字町の昆野芳子さん( 91)は「気仙沼では友達や近所の人たちを呼んでみんなでお祝いする風習がありました。千厩では各家庭ごとにお祝いする方が多いですね」と違いを語ります。
そんな中で始まったせんまやひなまつり。
「みんなで祝うことはとてもよいですね。商店街にもかつての活気が戻ってきました。これからも続けてほしいです」とうれしそうです。
見る人に限りない安らぎを与えるせんまやひなまつり。
「みんなが和んで楽しめる祭りにしたい」と、スタッフは今日もおもてなしの心で多くの人を迎えています。
大正、昭和、平成と3つの時代のひなまつりを経験してきた
昆野芳子さん こんのよしこ 91 千厩町千厩
実家は気仙沼市で雑貨屋を営んでいました。
一昨年、里帰りした時、赤い布が敷かれ、ひなが飾られていました。
5段飾りは当時と変わらず立派でした。
小さい頃のひなまつりは、近所の友達を呼んでみんなで祝いました。
母が作ったお寿司や甘酒を囲んだことが懐かしいですね。
その段飾りは、あの震災で流されました。
残念でなりません。
私は昭和14 年に19 歳で千厩に嫁ぎました。
当時は、戦中戦後だったので、それぞれの家庭でお祝いしていました。
せんまやひなまつりはいいですね。古い段飾りを見るたびに楽しかった幼少期を思い出します。
これからも長く続けてほしいです。
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1.酒のくら交流施設を訪れた親子と触れ合う昆野洋子委員長(中央) 2.ずらり並んだ段飾りは圧巻 3.テープカットで開幕を祝った 4.開会セレモニーで村上達男千厩支所次長が詠んだ「蘇る老舗酒蔵ひなまつり」 5.地元ニイハオ千厩観光クラブがツアーを企画し、ガイドを務めた 6.会場には友禅着物展のコーナーも設けられた |
仙台市出身で本市在住の会社員
西城俊昭さん 60 宮前町
同僚に誘われて訪れました。
酒のくら交流施設は、昔ながらの雰囲気があっていいですね。
段飾りとつるし飾りは豪華で迫力があります。
すてきなまつりに感動しました。
バスツアーに参加した平泉町の主婦
今野恵子さん 56 平泉町
初めてツアーに参加しました。
風情があってすてきなまつりですね。
色とりどりのつるし飾りが美しく、ひなの種類が豊富なことに驚きました。
自分も作ってみたいです。
いちのせきの広報誌「I-style」3月1日号