福島第一原子力発電所事故を受け、昨今、自然エネルギーが見直されている。
火力、風力、水力、太陽光―。
その中で水力発電を活用する中澤善一さん=大東町大原=をリポートする。

試行錯誤を繰り返し完成させた自家発電装置 自然エネルギーの普及に意欲的

大東町大原の中澤善一さん(74)は、自宅脇の水車で水力発電を行っている。
善一さんが住む地域には、近くの山から流れ出る豊かな沢水がある。
適度な勾配があり、位置エネルギーを利用するのに適した立地環境だ。

善一さんは2010年、室根町折壁の佐藤忠市さん(74)宅にある水車に出合う。
一目見たとたんに「作りたい」と思ったそう。
そこからの行動力はすごかった。
忠市さんの指導を受けながら作業に取り掛かかり、約3カ月で水力発電の仕組みを作り上げた。
総額8万円。
水車作りは大東町沖田の菅原一二さん(61)に依頼。
装置の部品の大半は、不要になった電動自転車など。
もらい集めた。
たくさんの人の力を借りて発電装置は完成した。

幅60センチの水路を流れる沢水をパイプを使って巧みに操作。
毎分180リットルもの水を高さ3.5メートルから落水させて水車を回す。
発電には1分間に2500回転以上が必要。
回転数を確保するために何度も組み立て直した。
装置が完成した今は「もう少し研究して、みんなに教えたい」と普及にも意欲的だ。

現在、発電できる電力は最大で300ワット。
外灯や趣味のカラオケ機の電源になっている。
将来的には、さらに容量の大きな発電機を導入し、家庭内の電力を賄いたいという。
「今よりも大きな装置を作れば近所で共用できるのでは」と期待を膨らませる。

「電気が好きな人、やってみたいと思っている人はたくさんいるはず。そういう人を手助けしたい。自家発電が普及すれば、災害に強い町になる」と意気込む。

1水の位置エネルギーを受け、幅2 メートルの水車が回転する 2水車が回転すると室内にある大小8つの滑車も連動する
3高さ3.5メートルから水が落水
1)水の位置エネルギーを受け、幅2 メートルの水車が回転する
2)水車が回転すると室内にある大小8つの滑車も連動する
3)高さ3.5メートルから水が落水
4)水力発電により点灯する外灯
4水力発電により点灯する外灯

profile中澤善一さん

農業
中澤善一さん
1937年大東町大原生まれ。
25歳から35年間型枠大工として出稼ぎに出た。
趣味は新舞踊、カラオケ。
息子夫婦、孫の4人暮らし。
大東町大原在住、74歳。

広報いちのせき「I-Style」 平成24年4月15日号