もしも目の前で、家族や友人が倒れたら、あなたは何ができますか。
1分1秒を争う現場で大事なことは迅速で的確な処置。
あなたの勇気ある行動が大切な人の命を救います。

1救急救命士

使命は救命

「救急救命」のリーダーたち

命を救う使命を帯びて、どんな状況でも駆けつける
熱い想いで傷病者と向き合う救命のエキスパート

救急救命士の使命

「火事ですか、救急ですか」

119番通報の救急要請を受けて、白いボディに赤いラインの高規格救急車がサイレンを響かせながら出場する。
通常、救急救命士と救急隊員の3人が乗る車内には、血液中の酸素量や心電図を測定するモニター、人工呼吸器、吸引器など200種類以上の資機材が搭載されている。
病院へ到着するまでの間、それらを駆使して傷病者の救命処置をするのが救急救命士だ。

救急救命士は、医師の指示下で高度な救急救命処置を許可された国家資格取得者で1991年、救急救命士制度が法律化されて誕生した。
救急救命士になるためには、教育機関や養成所などで学んだ後、国家試験に合格しなければならない。
資格を得た後は、病院や医療機関などで実習。
終了後、現場で命と全力で向き合う。

近年は、消防署に勤務する救急隊員だけでなく、病院で活躍する看護師など資格を取得する人が増えている。

医師法第17条の壁

救急救命士法が成立する以前の救急現場では、医師法第17条の壁が立ちはだかっていた。
救急搬送時の医療行為が一切禁止されていたのだ。

当時の救急隊員に許可されていたのは、救急車内での酸素投与、気道確保や心臓マッサージなど。
救急隊員に要求されたのは「早さ」であり、目の前で苦しむ傷病者を1分1秒でも早く病院へ運ぶことが仕事であった。
救命を第一に思う隊員の心はもどかしさでいっぱいだった。
まさに傷病者の「生命」は時間に左右されていたのである。
 

処置拡大に向けて実証

救急救命士法が成立したことで、救急車内での処置が可能になり、救える命が増えた。
おかげで、病院前救護による救命ができるようになった。
そして今、救命の可能性は、さらなる広がりを見せている。

厚生労働省は2010年、「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開き、病院前救護体制の一層の充実を図るためには、新たに次の3つの処置拡大が必要だとまとめた。
(1)血糖値測定と低血糖発作症例に対するブドウ糖溶液の投与(2)重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の投与(3)心肺機能停止前の静脈路確保と輸液

稼働に向け、実証研究地域を設定した検証がいよいよ11月1日から始まる。
本市を含む全国39地域(129消防本部)が選定され、救急救命士法施行規則に一関市消防本部が実証消防本部として登録された。

選定にはメディカルコントロール体制(※)が構築されていることが条件であり、市消防本部の指導的救急救命士、一関市医師会の救急専門医、一関保健所、県総合防災室で構成される一関地域メディカルコントロール協議会が協議を重ねた結果、志願した。

これらの処置は、処置に関する講習を修了した救命士が行う。
期間は11月1日から13年1月31日までの3カ月間。
ただし、処置は本人や家族の承諾(文書)と医師の具体的な指示が絶対条件となる。

今後、3つの処置に関する安全性や有害性について十分な検証を行った後、国として処置拡大に関する検討を開始する方針だ。

※医師による救急隊員への教育、リアルタイムでの指示・指導・助言、事後における救急活動の適否の判断などを行う体制

一人一人が救命活動を

「使命は救命」を合言葉に活躍する一関市消防本部の救急救命士は46人。
腕に青いワッペンを付けた彼らは、古里の救急救命のリーダーだ。

市消防本部は、学校、地域や職場などに出向いて「救急救命講習」を開き、救命知識、心肺蘇生技術、AED(自動体外式除細動器)操作の習得、普及に力を入れている。
緊急時に、救急車を呼ぶだけでなく、現場に居合わせた人が素早く適切な手当てをすることで救命率が向上するからだ。 

2救急救命士23ブドウ糖溶液の投与の訓練4模擬演習する救急救命士

5静脈路確保と輸液の投与6スター・オブ・ライフと呼ばれる救急医療のシンボルマーク

1,2_いざというとき安心感を与えてくれる救急救命士
3_8月31日、県立磐井病院で実証研究に向けた研修が行われた。写真は血糖値測定と低血糖発作症例に対するブドウ糖溶液の投与の訓練
4_傷病者を想定し、模擬演習する救急救命士
5_心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の投与
6_スター・オブ・ライフと呼ばれる救急医療のシンボルマーク。日本を含む世界各国で救急車の車体にこのマークが描かれている

救命率向上を目指す。救急隊の活動に理解を

 菅原実消防課長補佐
一関市消防本部
菅原実消防課長補佐

研究とはいえ、全国に先駆けて救急現場で医療処置を施すことができることは、救命率の向上につながります。
講習はすでに修了しており、法改正後、速やかに移行することができるメリットもあります。
救急救命士の処置拡大に関する実証研究には住民皆さんの理解が不可欠です。
まずは、救急隊の活動にご理解をお願いします。

 広報いちのせき「I-style」10月1日号