震災復興と中東北の拠点都市創造に向け
勝部修市長が2013年を展望

勝部 修市長
勝部 修市長
「絆」を力の源に 明日への希望を持てるまちを

1 震災復興と被災地支援

東日本大震災から2度目の正月を迎えました。
昨年は復興支援を通じて、人と人とのつながりやお互いさまのありがたさなど、家族や地域の「絆」を再認識させられた一年でした。

本市は、震災直後から市内の復旧・復興と併せ、隣接する陸前高田市と宮城県気仙沼市を支援してきました。
両市とは、古くから特別なつながりがある「近所」。
私は、住民同士、行政同士、企業同士が支え合う「お互いさま」の関係をベースに「近助(きんじょ)」の精神で、近い所同士が助け合う支援を行ってきました。

東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射能汚染対策は、頭から離れることがなく、最重要課題として取り組んできました。
「最優先すべきは子供たちの健康を、生活環境を守ること」であり、国の承認を待たずして作業に踏み切り、幼稚園・保育園、学校、公園や公共施設などの除染を実施しました。
農林産物の放射能汚染対策にも全力を挙げてきました。
「農家を助けたい。産地を守りたい」、その一心でした。
本年も引き続き、「近助」の精神で、古里復興と被災地支援に最善を尽くします。

2 中東北の拠点都市一関の形成

私は、この地域を「中東北」と位置付け、その拠点都市形成を目指したまちづくりを進めています。
震災復興をはじめ、市町村境や県境を越えた地域振興がこれまで以上に求められる今、本市であればこそできる独自の施策で希望あふれる明日を開きたいと考えています。

国際リニアコライダー(ILC)は、素粒子物理学研究の最先端実験施設で「世界に一つだけ」建設される巨大プロジェクトです。
硬い花崗岩(かこうがん)が広がる北上高地は、有力な建設候補地に挙げられており、今、東北全体で誘致しようと取り組んでいます。
これが実現すれば、震災復興と地域の活性化に大きな効果があることは言うまでもありません。

県際交流は、秋田県湯沢市と東成瀬村、宮城県栗原市、一関市による「ゆっくりひとめぐり栗駒山麓連絡会議」の県境を越えた取り組みを引き続き推進しながら、宮城県登米市との交流にも力を入れたいと考えています。
昨秋初めて開催した「中東北ご当地もちサミット」は大盛況でした。
一関に「もち」文化があるように、登米には「はっと」文化があります。
両市の食文化が共演する交流を推進したいと思っています。

3 産業集積と雇用確保

「中東北」と位置付けたのは、盛岡市と仙台市の中間に位置しているだけではなく、自動車関連産業の集積など産業面から見ても、東北の中心地域としての役割が期待されているからです。

昨年は、市長就任以来11社目になる「一関コールセンター」を誘致しました。
地元へ就職を希望する高校新卒者は、全員がその夢を実現しました。
引き続き、産業の集積と雇用の確保に力を注ぎます。
 

4 中心市街地の活性化

今春、一関地域市街地活性化施設「なのはなプラザ」(旧ダイエー)がオープンします。
中東北の拠点都市として、平泉の玄関口として、中心市街地の活性化は不可欠です。

元気な商店街は元気な人たちによってつくられます。
多くの人が行き交い、情報を交換する、そんな「立ち話しの似合う商店街」を目指します。
そのためには、産業行政だけでなく文化行政も関わっていかなければならないと思っています。

プラザには、FMあすものスタジオ、ジョブカフェ、市民の皆さんが自由に使えるフロアもあり、市民の情報発信、雇用、芸術文化活動を応援する役割を担っています。
このプラザを拠点に、たくさんの情報や文化を発信してにぎわいと活力を生み出したいと思っています。

5 平泉文化と観光振興

「平泉の文化遺産」は古里の「宝」です。
中東北の「誇り」です。
昨年9月には、「骨寺村荘園遺跡」がユネスコへの推薦の前提となる暫定一覧表に追加記載することが決まりました。
私たちには、平泉文化を世界共通の遺産として後世に伝えていく責任があります。

平泉町という行政上の枠組みではなく、このエリア全体が「平泉」であるという認識で、観光振興と史跡保存の両面から地域振興を考えていかなければなりません。

4月には、骨寺村荘園交流館「若神子亭」に「展示棟」がオープンします。
骨寺村の歴史、文化、景観を伝承するとともに、その魅力と価値を内外に情報発信し、拡張登録に向けた気運の醸成と地域の活性化を図ります。

6 藤沢町と合併して1年

一昨年9月26日に藤沢町と合併して、面積、人口ともに岩手県第2の都市になりました。

自治会活動や地域医療に代表される旧藤沢町の取り組みは学ぶべき点が多く、互いを認め合い、互いの力を融合させながら、まちづくりを進めてきました。
今、あらゆる分野でパワーアップした新一関市を実感しています。

 
 

7 2013年のキーワード

変化の激しい時代、どんな行政サービスがベストなのかを考えたとき、従来の立ち位置で市民の満足度を上げることは、年々難しくなっています。
住民の側に立つ「住民視点」ではなく、住民と同じ場所に立って考え、行動する「住民起点」のサービスが大事です。

宮澤賢治の「雨ニモマケズ」には、東に病気の子どもあれば「行って」看病してやり、西に疲れた母あれば「行って」その稲の束を負い―とあります。
徹底した現場主義が貫かれています。

常に「それは市民が望んでいることか。市民のためになることか」を自問自答しながらまちづくりを進めます。

復興の舞台は子供たちの未来です。
地域の「絆」を力の源に、明日への希望を持てる一年になるよう、中東北の拠点都市にふさわしいまちづくりに全力で取り組みます。

Profile

かつべ・おさむ
1950年一関市生まれ。
74年岩手県庁入庁。
総合雇用対策局長、総合政策室長、県南広域振興局長などを歴任。
09年10月の市長選で初当選。
趣味は20年前に始めた石集め。
62歳。

広報いちのせき「I-Style」1月1日号