ありがとうの想いをカタチに

これまでも、これからも伝えたい言葉、「ありがとう」。
この言葉に詰まった想いを紹介する。

「感謝を伝える」が大人の流儀

「ありがとう」の原語は古語の「有り難し」。
つまり、「めったに無い」が原義だ。

成人式企画実行委員会は「ありがとうの想いをカタチに」をテーマに、新成人やその家族からありがとうを伝えたい相手に宛てた手紙を募集した。
その中の一通、県立一関高等看護学院に通う石川曜子さん(20)=弥栄=は、亡き祖母ミツエさんのために書いた。

長い闘病生活の末に他界したミツエさん。
まだ幼かった曜子さんはそれをただ見ているだけしかできなかったという。

進路を選択する際、ミツエさんを看護できなかったもどかしさがよみがえった。
そして看護学校へ進学。
実習を繰り返すうちに、「自分の選択は正しかった」と思えるようになったという。

「両親にはもちろん感謝しています。今回は、進路選択のきっかけをくれた祖母にありがとうを伝えたい」

成長した娘の姿に、母・数さんは目頭を熱くした。

もう一通は、単身赴任で長年、家族と離れて暮らしている小岩文男さん(43)=宮前町=が娘の美緒さんに宛てた手紙。

「父の思いは知っていました。あらためて言葉にしてもらうと、照れくさいけどうれしいです。感謝しています」と美緒さん。

みおパパのことすごく大すきだからきおつけてじこのないようにおしごとにいってね――

幼い美緒さんが思いを込めて書いた手紙を今も大切に持っている文男さん。
いつでも、どこにいてもこの手紙が力の源になってきたことは言うまでもない。

たくさんの人に支えられ、二十歳の門出を迎えた新成人たち。
普段は照れくさくてなかなか言えない「ありがとう」だが、感謝の気持ちをしっかり伝えることもまた、大人の流儀である。

「自立する」が大人

二十歳になると選挙権が与えられる。
飲酒や喫煙などが許される。
だが、たくさんの権利や物を手に入れることが大人ではない。

「大人」という字はシンメトリー(左右対称)。
つまり、知徳体全てにおいてバランスのとれた人が大人だ。
大切な人、モノ、コトを自分の力で見つけたり、見極めたりする力を持ち、自分で人生を決め、自分で道を切り開き、自分で豊かに生きる、つまり、「自立」する人が大人である。

その自立もシンメトリー。
だが、本人の努力だけで自立することはなかなか難しい。
両親、家族、仲間、職場、地域などみんなで支えたり、応援したりする環境が不可欠だ。
頑張る人を支えたり、受け入れたりする環境がなければ人は「孤立」してしまう。
だからこそ素直に感謝しよう、言葉に出して伝えよう、「ありがとう」。

希望は感謝の上に広がっている。
未来は努力を重ねた先にある。
夢は挑戦しなければつかめない。
二十歳はそのスタートでもある。

未来へ導いてくれた祖母に送る「ありがとう」
石川曜子さん(弥栄)

おばあちゃんへ

おばあちゃん、いま、空から見ていますか?
わたしは、いまもおばあちゃんのことを思い出します。
忘れてなんて、いませんよ。
おばあちゃんが私の前からいなくなってもう9年ですね。
私の結婚式を見たがっていたおばあちゃん。
まだ悔いはありますか?
でも、遠くから私の白衣姿みてますか?
おばあちゃんの看護したかった。
できなくてごめんなさい。
でも、私の夢は、おばあちゃんの存在があったからです。
夢を与えてくれてありがとう。
がんと8年間の長い間闘ったおばあちゃんの姿、たのもしかったです。
私は、おばあちゃんのように、苦しみながら、不安をかかえながら生きている人に、おばあちゃんにすることができなかった看護をするね。
ありがとう。
これからも、遠くから見守ってね。

曜子より
(原文掲載)

(左)から弟・康太さん(一関東中2年)、曜子さん、父・芳明さん、母・数さん
(左)から弟・康太さん(一関東中2年)、曜子さん、父・芳明さん、母・数さん

Profile

いしかわ・ようこ
1992年5月、父・芳明さんと母・数さんの間に生まれる。
看護師を目指して日々、勉強に励む。
県立一関高等看護学院2年。
両親、兄、弟、祖父と6人暮らし。
弥栄。
20歳

娘の成長とそれを支えた家族に「ありがとう」
小岩文男さん(宮前町)

美緒へ

成人おめでとう。
お父さんは、美緒が小学校1年生の時から単身赴任を続けているので、美緒の面倒をみることができませんでした。
その分、いつもそばにいてここまで育ててくれた、お母さんとおばあちゃん、家族に感謝しています。
美緒が小さい時に書いて渡してくれた手紙は、今も財布に入れて持ち歩いています。

美緒は、お父さんが単身赴任で普段会えないこともあり、嫌なことがあっても、お母さんとけんかしたときでも、お父さんにはいつも優しく接してくれました。
そういう心のやさしい美緒は、お父さんの宝物です。

これから社会に出て多くの仲間に出会い、家族も増えると思います。
常に家族や仲間に感謝の気持ちを忘れずに、これからも心のやさしい美緒でいてください。

お父さんより
(原文掲載)

手紙

(左)美緒さん、父・文男さん
(左)美緒さん、父・文男さん

Profile

こいわ・ふみお
娘の美緒さんが小学1年生の時から単身赴任で家族と離れて暮らす。
離れていても家族を第一に考える優しいお父さん。
妻、子2人、両親の6人家族。
宮前町。
43歳

広報いちのせき「I-Style」 平成25年2月1日号