住民、医療、保健、行政が対話する場を
「NPO法人医療を育てる会」に学ぶ

医師が不足、病院が不足。
何もかもが不足。
では、医師を増やせば健康な人は増えるのでしょうか。
病院を増やしたら安心して暮らせるのでしょうか――。

目から鱗(うろこ)の言葉の数々は、本気で地域医療を守り、支え、育ててきた藤本さんだからこそ。
「健康も、安心も、人任せではなく、自分でつくるもの。住民、医療、保健、福祉、行政などが連携し、支え合って暮らせる地域をつくるべきです」と一人一人の意識を変えない限り、健康や安心を手に入れることはできないと訴えた。

NPO法人「地域医療を育てる会」(会員25人)理事長の藤本晴枝さん。
「対話する地域医療」を育てようと2005年4月に会を立ち上げた(同年11月にNPO法人に)。
住民、医療、保健、福祉、行政などさまざまな立場の人たちが集まり、対等な立場で互いの知恵と力を出し合う場を創出している。

藤本さんが住む東金市は、千葉県東部の山武地域(東金市、山武市、大網白里市、横芝光町、九十九里町、芝山町)にある。
都心に医師が集中するため、東京周辺地域の医師数は全国平均を下回る。
その中でも山武地域の医師数は千葉県で最も少なく、全国平均の半数だ。

以前、藤本さんが、あるシンポジウムに参加した際、住民は「~してほしい」「~してくれない」と言い、行政や医療関係者は「理解とご協力をお願いします」を繰り返していたという。
住民は「~してくれ」と誰かに依存するだけでいいのか? 行政や医療関係者だけが対策を考えなければならないのか? 医療機関は、必要な情報を住民に伝えているのか? こうした疑問が、藤本さんを動かした。

「地域医療を育てる会」の活動の一つは、情報発信。
情報紙や絵本などを作成し、医療や行政が困っていることは何か、問題解決のためには何ができるのかを訴えた。
「自分の都合で病院にかかると医師の負担は大きくなる。それを止めることが、医師不足の解消に大切なこと」と広く知らせる必要があった。

しかし、情報発信は一方通行。
分からないことや聞きたいことがある時に、みんなで話し合う場が必要だった。

「何が問題かを話し合い、どうしたらいいのかを考える、対話の場所が必要でした」と藤本理事長は振り返る。

今後の課題は「病気予防」。
検診を受けない人や健康に気を付けようとしない人をどうするかだ。

大切な人のためにいつまでも健康でいたいと願い、健康を気遣う人が多い地域は、人間関係が良好なコミュニティーが多いという。

「人は一人では生きていけません。誰かのために生きたい、誰かの支えになりたい、そう思える誰かに出会える地域づくりをしましょう。コミュニティーの力が健康をつくるのです」ときっぱり。

自分が変われば地域が変わる。
地域が変われば医療が変わる。
もうお客さまではいられない。
東金の医療を救った信念は、今でも変わらない。

藤本晴枝さん
藤本晴枝 ふじもと・はるえ
NPO 法人地域医療を育てる会理事長。
1996年東京から千葉県東金市に移住。
ボランティア活動をしながら04年、山武地域医療センター構想策定委員会アドバイザーに就任。
05年4月、地域医療を育てる会を設立、理事長に就任。

絵本「くませんせいのSOS」
絵本「くませんせいのSOS」を鈴木優杏(ゆあん)さん(小4)、鈴木至桜(しおう)君(小1)、伊藤蓮久(れく)君(小2)、高橋柊碧(とあ)さん(小2)、渡邉柑生(かお)君(小1)の5人が朗読

子供のいざという時の相談窓口
おかあさんのための救急&予防サイト「こどもの救急」

夜間や休日など診療時間外に病院で受診するかどうかの判断の参考になるホームページです。
子供の状態をクリックして、救急車を呼ぶか、病院に行くか、家で様子を見るかの判断材料にしてください。
ホームページ http://kodomo-qq.jp/

こども救急電話相談

夜間に子どもの具合が悪くなったとき、まずは相談してください。
看護師が相談に応じます。
TEL019-605-9000またはTEL#8000

広報いちのせき「I-Style」 平成25年3月1日号