一人一人の意識が地域、医療を変え、
古里の地域医療を育てる糧になる

朝顔のたねをはじめ、いくつものボランティア団体が活動する一関市を視察する人は少なくない。

兵庫県北部の香美町(かみちょう)は人口2万人。
高齢化率は県内で最も高い34%だ。
同町地域医療対策室の尾崎桂子(けいこ)室長は、本市の取り組みを注目する一人。
医師不足をはじめ、香美町の医療は厳しい状況だ。

尾崎室長は「住民と医療者が互いに分かり合おうとしている姿は、すごいです」と驚く。
さらに、「誰もが生まれ育った古里へ愛着があります。ずっと安心して暮らすためには、何をすべきかを医療関係者だけでなく、住民が一緒に考えなければいけません。それが実行され、ボランティア活動など地域を動かす力につながっているのですね」とも。

香美町も地域医療のフォーラムや巡回講座を開いて、関係を深めているという。
それを確実に機能させるためにも、「住民組織は不可欠」と感じている。

病気を治す医療の時代、患者は受け身だった。
だが、これまでと打って変わり、自分たちの医療として考えていかなければならない時代を迎えている。

医師でない私たちが医療を施すことはできない。
だが、医師が働きやすいまち、医師が暮らしやすいまちをつくることはできる。
居心地の良い病院、医師との良好な人間関係を築いていくことはできる。 

「病院はおらほの町の宝」だ。
宝を知り、学び、そして多くの人へ伝えていくことは、安心して暮らせる地域を守り、育てることでもある。

あなたにも、きっとできることがあるはず。

1多くの参加者が講演を熱心に聴いた2会場には千厩高校美術部が作成した「地域医療を守る」をテーマにしたポスターも展示された
3尾崎桂子室長
1_ 多くの参加者が講演を熱心に聴いた
2_ 会場には千厩高校美術部が作成した「地域医療を守る」をテーマにしたポスターも展示された
3_ 兵庫県香美町健康課地域医療対策室の尾崎桂子室長

 「がん」を知るフォーラムinいちのせき

「がん」を知るフォーラムinいちのせき

「がん」から看取りまで最期まで自分らしく生き抜く方法を考える

1981年以降、死亡原因の1位は「がん」。
現在は、2人に1人ががんになるともいわれている。

一関在宅緩和支援ネットワーク(IZAK)主催の「『がん』を知るフォーラムinいちのせき2012」は2月9日、一関文化センター中ホールで行われ、がん医療の開拓記などを描くノンフィクション作家で評論家の柳田邦男さんが「豊かな生と死を考える」をテーマに講演した。
客席は満席。
医療に関する関心の高さがうかがえた。

県内の在宅で看取る割合はわずか7%。
一関市内はその半数以下の3%だ。
つまり、ほとんどが病院で亡くなるという。
死ぬ場所として病院はふさわしいのだろうか。
医師は痛みを和らげることはできる。
しかし、心のケアや生活を支えるのは家族や周りの人たちだ。
治す医療から支える医療、全人的ケアへとウエートは移り始めており、医師、看護師、ケアマネージャー、介護員、ボランティアが同じ視点で患者と向き合っていかなければならない。

柳田さんは「死を否定的に考えず、いかに最期まで生き切るかを考えるべき」と話し、生き直す力を見つける大切さを訴えた。

講演に続き、「自宅で看取るということ」と題したシンポジウムが行われ、訪問看護師や患者の家族などが、それぞれの立場から意見を交換した。
参加者は、治療の進展や緩和ケアの普及で、がんに対するとらえ方が変わってきている現実を学んだ。

広報いちのせき「I-Style」 平成25年3月1日号