一本の指揮棒が静かに振り下ろされ、伸びやかな歌声が静寂を破るやがて、それは、重厚なハーモニーとなり、人々の心に染みこんでいく
出演5団体の歌声が市民や合唱ファンを魅了した「第24回東日本合唱祭」
人づくりやまちづくりにも貢献してきたその取り組みに迫る

美しく、力強いハーモニー。心を揺らした感動の3時間。

5団体480人が熱唱

「合同合唱」は同合唱祭の目玉。出演者総勢480人と客席が一つになった大合唱
「合同合唱」は同合唱祭の目玉。出演者総勢480人と客席が一つになった大合唱
 

今回の出演団体は、市内から一関第一高等学校・附属中学校音楽部、市外から東北福祉大学混声合唱団(仙台市)、しらたま(東京・武蔵野市)、合唱団お江戸コラリアーず(東京・千代田区)、栗友会合唱団(東京・豊島区)の5団体。

トップの一関第一高等学校・附属中学校音楽部は、25年度全日本合唱コンクール岩手県大会で金賞に輝いた実力を発揮。
「大地の歌」など全5曲を生き生きと歌い上げた。

「老いたきつね」「屈折率」など4曲を歌った東北福祉大学混声合唱団は、美しい混声合唱で客席を魅了。
しらたまは、女声合唱団ならではの澄んだ歌声で「村祭」「紅葉」など童謡や唱歌を披露した。

合唱団お江戸コラリアーずは、「東京ブギウギ」「宮澤賢治の最後の手紙」など4曲をユーモアたっぷりに合唱。
栗友会合唱団は、「ハレルヤ」「夕焼小焼」などおなじみのナンバーで取りを飾った。

フィナーレの合同合唱は目玉。市内のコーラス団体や高校音楽部など20団
体で構成する一関合同合唱団167人と招へい団体313人、総勢480人が「緑の森よ」「故郷」など全7曲を合唱。
「大地讃頌」は同祭顧問の岸信介さんが指揮、客席の来場者も参加して大迫力のハーモニーを響かせた。

本市出身の東北福祉大生小林大介さん(3年)は「合同合唱は貴重な体験。普段、400人以上の大編成で歌う機会はなく、感動しました」と興奮冷めやらぬ様子だった。

1一関第一高等学校・附属中学校音楽部 2東北福祉大学混声合唱団  
4しらたま 5お江戸コラリアーず 6栗友会合唱団

1_県コンクールで金賞を受賞した地元一関第一高等学校・附属中学校音楽部
2_重厚な和音を響かせた東北福祉大学混声合唱団
3 _美しい歌声で童謡や唱歌を歌ったしらたま
4_ユーモアあふれるステージで会場を沸かせた合唱団お江戸コラリアーず
5_豊かな歌声で取りを飾った栗友会合唱団

合唱のまち誕生の背景

子供からお年寄りまで幅広い年代の市民が合唱に親しむ本市は「合唱のまち」と呼ばれる。
しかも、そのレベルは高く、「中学、高校、一般とも全国で金賞を狙えるレベル。一関の合唱は、質、量ともに全国水準です」と元実行委員長の大畑孝夫さん。
理由は「優れた指導者に恵まれたから」と振り返る。

「戦後まもないころ、一関一高に古藤孝子先生が、一関二高に高橋政江先生が着任しました。2人は優れた指導者。両校はみるみる上達し、今日まで良きライバルとして共に切磋琢磨してきたのです」。

大畑さんをはじめ、当時の学生たちは、後に情熱あふれる指導者となり、多くの生徒や市民に普及した。
こうして合唱の輪は市全体へと広がっていき、合唱人口は加速的に増加した。

四半世紀の歴史を築く

第1回東日本合唱祭は、1990年8月25日に開かれた。
地元一関グリークラブをはじめ11団体の美しい歌声は、詰めかけた市民や合唱ファンを魅了。
歌でつながる「合唱のまち」が産声を上げた。

第10回からは、招へい団体を減らして合同合唱を取り入れた。
第15回からは、合唱の素晴らしさを子供たちにも伝えようと、出演団体と地元中学生との合唱交流会が始まった。
20年目の節目には、記念委嘱作品2曲が制作された。

2011年の第22回からは、「がんばろう東北 歌声で心の輪を」をテーマに掲げ、東日本大震災で被災した人たちに、勇気と元気、愛とやさしさを届けている。

「私たちの歌声で、被災した皆さんが明るい気持ちになってくれたらうれしいです」。横山泉実行委員長は力を込める。

来年はいよいよ25回目。横山委員長は「四半世紀の節目。新しい企画を考えています」と早くも動き出している。

鈴木奈緒さん 東北福祉大4年

鈴木奈緒さん

歌が好きで、大学に進んでから合唱を始めました。
地元で歌うのは初めてです。緊張しましたが、気持ちよく歌うことができました。
一関の皆さんに良い合唱を届けることができたと思います。

小林大介さん 東北福祉大3年

小林大介さん

久しぶりに地元で歌うとあって、いつにもまして気合いを入れて臨みました。
400人以上が一緒に歌う合同合唱は貴重な体験。
客席も含めて会場が一つになった大地讃頌は、歌いながら感動しました。 

 

 

 広報いちのせき「I-Style」 平成25年11月15日号