ラジオでつながるコミュニティー FMは最強ツールだ

今春、一関にコミュニティFM放送局が開局する。
コミュニティ放送(コミュニティFM)は「いつでも、どこでも、誰でも」が特徴。
日常は、身近な情報で人をつなぎ、災害時は、防災情報で命をつなぐ最強のコミュニティーツールだ。
ラジオでつながるコミュニティーは新しい一関スタイル。

一関コミュニティFMの開局を心待ちにしている千葉さん夫妻
一関コミュニティFMの開局を心待ちにしている花泉町涌津の千葉出さん、真理さん夫妻

コミュニティFMは地域密着型のラジオ放送

市は12年4月、公設民営方式でコミュニティFM放送局を開局し、コミュニティ放送を開始する。

 コミュニティFMと呼ばれるこの放送は、92年の放送法施行規則などを改正して制度化した放送局形態の一つ。
具体的には、VHF(超短波)の76.1~90.0メガヘルツ中の周波数をF M(FrequencyModulation)と呼ばれる方式で変調して使用するラジオ放送だ。
市販のFM対応ラジオで聴取できる。

聴取エリアは、従来のFM放送対象地域である広域放送や県域放送より狭く、小規模イベントや場内放送などで用いられるミニFMより広い。
「地域密着」「市民参加」「防災や災害時の放送」などが特徴で、市民の暮らしに最も身近な放送メディアと言っても過言ではない。
さらに、FM放送(超短波)はAMラジオ放送(長波、中波)と比べて、音楽などに適した高音質の番組を放送できる特性がある。

身近な情報を発信 人をつなぐメディアの魅力

地域密着型のコミュニティFM。
身近な情報、顔の見える放送は、安心して聴くことができる。
知り合いやなじみの場所が放送されることもあり、広域放送以上に熱烈なリスナー(聴者)が多いとも言われる。
FMでつながるコミュニティー、FMから生まれるコミュニケーションは、地域活性化の起爆剤としても期待されている。

放送に必要な施設や設備は市が整備。
昨年11月に設立し た「一関コミュニティFM株式会社」(村上耕一社長)が、施設と設備を活用して放送事業を展開する。
同社の事務所とスタジオは大町の旧ダイエー建物内に設置される。

開局と併せ、同FM放送だけを受信できるラジオが事業所を含めた市内全戸に無償で配られる。
災害発生時には自動的に災害放送に切り替わり、市災害対策本部の防災情報を速やかに提供する機能が盛り込まれている。

07年に開局した奥州エフエムの佐藤孝之放送局長は「コミュニティFMは地元の人たちのためもの。
リスナーの役に立つ情報を提供することでコミュニティーはつながっていく」とアドバイスする。

災害時や停電時でも活躍FMは最強メディアだ

コミュニティFMは、テレビ、インターネットや携帯電話と異なり、災害時や停電時でも機能するメディアだ。

東日本大震災では、携帯電話などのインフラが遮断された中、災害発生直後から24時間体制で、災害情報と共に道路情報、コンビニエンスストアやガソリンスタンドなどの営業状況など「すぐに必要な身近な情報」を発信した。
市民からは「地域になくてはならない情報源」として認知されている。

この二つの大地震で大きな被害を受けた当市は、エフエムの早期開設が必要と判断。
当初の計画を前倒しして今春の開局に向け、急ピッチで準備を進めている。

市民が制作する市民のための番組が最大の特徴。
放送する側と聞く側が一体となって番組をつくり、リアルタイムに放送できる。

佐藤局長は「一関のすごさは全戸配布。
地震はもとより北上川の洪水情報や避難勧告などもラジオで伝えることができる」と期待を寄せる。

無限の可能性を秘めたコミュニティーツール

一関コミュニティFMの村上耕一社長は「一関で奥州や登米のエフエムを聴くことができるように、FMラジオ放送は周辺都市や市内を訪れた人にも聴いてもらうことができる。電波を通じて一関の良さをPRできれば、きっと観光振興や商店街の活性化にも一役買うことができる。市民の暮らしにも、まちづくりにも貢献できるコミュニティFMを目指したい」と自信をのぞかせる。

市民が安心して暮らせるようになれば、街に愛着がわいてくる。
街に愛着がわいてくれば、さまざまな分野でまちづくりや市民活動に参加する人が増えてくる。
こうして、市民がまちづくりに主体的に関わるようなると、古里に夢や希望を抱くようになる。
それが市民一人一人の自信や誇りへとつながっていく。

コミュニティFMは、電波という見えない糸で人と人、地域と地域をつなぐ新しいコミュニティー。
市民共通の、地域共有のメディアである。
無限の可能性を引き出せるかどうか、それは、リスナーの私たち次第だ。

市内全世帯に配布されるFMラジオ。
市内全世帯に配布されるFMラジオ。
持ち運びが容易なコンパクトタイプ(W80ミリ、H180ミリ、T85ミリ、重さ430g)で、「いつでも、どこでも」聴くことができる

一関コミュニティFM 株式会社を創立

一関コミュニティFM 株式会社を設立総会の様子

一関コミュニティFM 株式会社の創立総会は昨年11月30日、千厩町のマリアージュで行われた。
総会には株主や関係者など約50 人が出席。
定款、取締役と監査役選任などの5議案を承認した。
総会終了後には取締役会が行われ、代表取締役に発起人代表の村上耕一氏を選出、歴史の一歩を踏み出した。

出資者は68 人。
合わせて約3500万円の出資金が集まった。
同社は3月末まで1株当たり5万円の株式を公募するほか、一関コミュニティFMの愛称なども募集する。木村静恵さん

INTERVIEW

木村静恵さん Kimura Shizue
地域活動支援センター工房てんとう虫所長

情報発信機能が強化されることはとても良いことです。
地域情報やイベント開催などを市全域に発信できることは魅力的。
防災情報をリアルタイムに聴けることも心強いです。
私たちのような小規模工房の活動をメディアで取り上げてもらうことはなかなか難しいですが、コミュニティFMなら可能だと思います。
地域に根ざした放送を期待しています。

奥州エフエム放送(株) Oshu -fm

奥州市水沢区佐倉河字東広町1-4 tel0197-25-2051
菊地弘尚代表取締役

奥州エフエム放送(株)奥州エフエム放送株式会社は、奥州市にあるコミュニティ放送局で、愛称は「奥州エフエム」。
設立は06 年11月20日。
開局は07 年4 月12日。
主に岩手県の奥州市・金ケ崎町を放送対象地域としている。
コールサインはJOZZ2AX-FM、周波数は 77.8MHz/20W 。
特定地域放送ではあるが、岩手県の中央部から宮城県の北部でも聴取が可能。
「radio smile」「お茶っこラジオ」「にじいろ音楽館」「土曜ワイド奥州」など、多くの自主制作番組を放送していることが最大の特徴。
徹底した地元志向でリスナーの支持率も高い。
「日本一、笑顔が集まるラジオ局」をキャッチフレーズに、花いっぱい大作戦など、地域のリスナーが積極的に参加できる活動を展開している。

いちのせきの広報誌「I-style」1月1日号