連鎖する幸福感

小さな幸せでも幸福感を味わえる
飾らない日常は、心に響き、連鎖する。

1「税を考える週間」PRイベント

もてなしは幸福感が生み出す「心の栄養」

人はよく十人十色といわれます。
同じ物を見たり、聞いたりしても、それぞれ感じ方は異なります。

幸せは、目の前にあるそれをどう感じ、どう気付くかです。
つまり、対象となる人・事・物などに対する自分の感情です。
感じる力や気付く力のある人は、より多くの「幸福感」を得ることができます。
反対に、それが足りないと、大きな幸せに出合っても、十分に幸福感を味わうことができない場合があります。
日常の「小さな幸せ」に気付けるかどうか、そして多少でも、そこに「幸福感」を得られるかどうか、その「幸福感にこそ価値がある」と思えるかどうかが大事なのです。

おもてなしは幸福感が生み出す「心の栄養」です。
相手の喜ぶ姿に幸せを感じることで、自分自身が明るくなったり、元気になったり、安らいだりします。
心の栄養は、言い換えればゆとりを手に入れることでもあり、心にも体にもプラスに働きます。

伝統食が教えてくれるおもてなし

県南地方には古くから、年中行事や冠婚葬祭の席で、来客に餅を振る舞う習慣があります。

平らで広い水田と沼えびが生息するほどきれいなため池がある花泉地域では昔からたくさんの米がつくられてきました。
農家の人たちは、いい米は売って、くず米を食べてきました。
このくず米をおいしく食べたいと、粉末にしたくず米をついて、ごはんのおかずにからめて食べたのが花泉の餅文化の始まりです。
納豆や小豆など家にあるもので作る自家製100%の餅料理をごちそうすることが、最上のもてなしと考えられてきました。

花泉町油島の「夢見る老止(おとめ)の館」(佐々木善子代表)は、餅料理を提供する農家レストラン。
築200年の古民家を改築した建物は情緒豊かで、広い座敷、黒光りした柱や梁には風格を感じます。
ゆったりとした空間、ゆっくりと流れる時間は、忙しい現代人には最高の贅沢。
「食べる」というより「楽しむ」という言葉が似合います。
 
「昔と違って餅をつく家は減りました。それでも、大切な人に食べさせたい気持ちは変わりません。皆さんここに来て〝おいしい”と残さず食べてくれます」

幸せそうに餅を頬張るお客さんを見て、善子さんの瞳はきらきらと輝きます。

関東出身の善子さんが、きねと臼でついた、つきたての温か餅に出合ったのは47年前。
花泉に嫁いでからです。
ところが、庭先で餅をつく光景が減っていることに危機感を覚え93年、郷土食を守り、伝えようと出前もちつき隊「餅・モチグループ」を結成しました。
当初、花泉町内に4組あった隊も今では1隊だけ。
善子さんは、待つだけでなく、自らきねと臼を持って全国各地へ出掛け、花泉の餅を普及。
時には、海を越えたことも。
「いつでも、どこでも、つきたてを」がポリシーです。

震災後は、「餅を食べて元気を出してほしい」と何度も被災地に足を運び、とびきりの笑顔でとびきりのごちそうを提供しています。

当たり前から始まる幸せの相互連鎖

「ごちそうさま」

ごちそうを作ってくれた人に対する感謝の言葉です。

目に見える「モノ」がごちそうなら、ごちそうさまは目に見えない「コト」。
食事を通して、作る人と食べる人の互いの幸福感が連鎖します。

毎日の当たり前に、幸せを感じられるようになると、「日常」は「最上」に変わります。
そう、幸せは伝染するものなのです。

佐々木善子さん

佐々木善子さん
1993年出前もちつき隊「餅・モチグループ」を結成、2000年農家レストラン「夢見る老止の館」を開業。
05~09年全国生活研究グループ連絡協議会長を務める。
10年に黄綬褒章を受章。
「食」にこだわったさまざまな活動を展開。
花泉町油島在住。

2生姜餅3つきたての餅が買い物客に振る舞われた
4きねと臼を匠に使いこなす5手際よく振る舞い餅が準備された
6どこか落ち着く築200年の古民家で笑顔の善子さんが出迎える7餅膳に使用されているのは秋田の川連漆器
1)釜石地区法人会青年部主催の「税を考える週間」PRイベント(11月10日、マイヤ釜石店)で出前餅つきを披露する餅・モチグループ
2)この日、用意されたのはあんこ、ごま、生姜の3種類。写真は生姜餅
3)つきたての餅が買い物客に振る舞われた
4)きねと臼を匠に使いこなす
5)手際よく振る舞い餅が準備された
6)どこか落ち着く築200年の古民家で笑顔の善子さんが出迎える
7)餅膳に使用されているのは秋田の川連漆器

夢見る老止の館
「餅膳・山菜膳セット」 ¥2,100

「餅膳・山菜膳セット」
つきたてで温かく、大きくちぎられた餅は食べ応え十分。
餅膳に合わせた山菜膳をとおして野のものの食べ方を伝えている。
畑のものに加え、野のものがあれば非常時にも食べ物には困らないという。
常につきたての餅を食べてもらえるよう配膳にも気を配るのが夢見る老止の館流。

Menu
●もち膳 ●山菜膳
あんこ餅
沼海老の餅
ずんだ餅
ふすべ餅
お吸い物
漬物
リンゴ

オクラ
マコモダケ
春蘭の酢漬け
つくし
ふきのとう
フキ(きゃらぶき)
たけのこの煮付け
菊の酢の物
なます
みずの実のしょうゆ漬け
いちじくの甘露煮
あけびの皮のワイン煮
ブラックベリーの食前酒

※季節によって食材が変わります

農家レストラン「夢見る老止の館」 

農家レストラン「夢見る老止の館」
〒029-3207
岩手県一関市花泉町油島字上柏木39
利用時間 11:30~20:30 無休
TEL:0191-82-2722
4人以上で2日前までに予約が必要

広報いちのせき「I-style」12月1日号