書に込めた思いを
木に刻む二刀流作家

1無心で木板を彫る菅原さん

千厩町小梨の菅原幹夫さん(82、雅号「箕山(きざん)」)は書道家と刻字家、二つの顔を持つ。

刻字は、木や石の板に文字を刻むこと。
作品は平面的な書に対し、立体的で、彩色やつや出しなども施されて鮮やかだ。

8月28日、自身が筆をとり刻字した柱掛け(柱に掛ける装飾品)一組を地元の洞雲寺(小松宏順住職)に寄贈した。
これまでの柱掛けは寺の山門に掛けられていたもので、風化して文字が消えかけていた。
洞雲寺の小松住職は「業者に頼んでも、ここまでのものにはなかなかならない。本当にありがたい」と感謝する。

幹夫さんが書道を始めたのは30年以上前。
当時勤めていた小梨村役場の上司が筆を走らせる姿に感動したことがきっかけだ。
早速、大東町摺沢の「古鼎堂(こていどう)」菊池翠洋(すえよう)先生に師事。
雅号「箕山」を授かり、併せて刻字も習った。

89年に千厩町役場を退職してからは、自宅に書道教室を開設。
書を通じて子供たちの健全育成に貢献した。
現在は、農業を営む傍ら、作品づくりに情熱を注ぐ。

書斎にはこれまでの作品が所狭しと並ぶ。
木板をノミで刻んでいく姿は匠の技。
だが、本人は「趣味だからね。ボケ防止にちょうどいい」と控えめに笑う。

作品は「和敬」「和顔愛語」など、穏やかで和やかな文字が多い。
温厚で親しみやすい、幹夫さんの柔和な人柄がにじみ出る。

「次はどんなものを作ろうか」

80を過ぎてもなお、創作意欲は衰えない。

2書道家の命ともいうべき筆。常に手入れが行き届いている 3これまでの作品が所狭しと並ぶ書斎 4幹夫さんが洞雲寺へ寄贈した柱掛け一組。㊧は小松住職
5木板などに字を書く 6のみで丁寧に文字を刻んでいく 7作品の一つ「和顔愛語」。幹夫さんの人柄がにじみ出る、趣味の域を超えた逸品
1_無心で木板を彫る菅原さん
2_書道家の命ともいうべき筆。常に手入れが行き届いている
3_これまでの作品が所狭しと並ぶ書斎
4_幹夫さんが洞雲寺へ寄贈した柱掛け一組。㊧は小松住職
5_木板などに字を書く
6_のみで丁寧に文字を刻んでいく
7_作品の一つ「和顔愛語」。幹夫さんの人柄がにじみ出る、趣味の域を超えた逸品
PROFILE

菅原幹夫さん
菅原幹夫さん

1930年千厩町小梨生まれ。
45年小梨村役場入庁。
55年の町村合併で千厩町職員に。
建設課長、農林課長を歴任。
89年に退職。
その後は、同町選挙管理委員会委員長を2期務める。
現在は、書と刻字の作品づくりに励む毎日。

広報いちのせき「I-style」12月1日号