災害に強い まちづくりも兼ねる 情報拠点の整備

日常は、身近な情報を提供し、緊急時や災害時は、防災情報を発信する一関コミュニティFM。

市が全世帯に配布したラジオは430グラムのコンパクトボディ。
持ち運び可能で簡単に操作できるので日常も、災害時にも威力を発揮する強い味方です。

中東北の拠点一関の情報発信拠点を整備

市は11年10月、「一関地域中心市街地ゾーニング構想」を策定しました。
同構想は、中心市街地形成の基本方針となるグランドデザイン。
公共施設の再配置を含め、市街地を機能別にとらえて活性化を進めていくものです。

そのうちJR一ノ関駅を核にその周辺を「情報発信ゾーン」に設定。
市内大町の旧ダイエー一関店の建物に一関コミュニティFM放送局の事務所とスタジオを整備しました。
4階には2つのスタジオ、事務スペース、会議室などを、1階には大きく窓を取ったサテライトスタジオを配置しました。
どちらもガラス越しに中継や収録の様子を見ることができるなど、市民に開かれたFMを印象付けています。

送信施設は、川崎町の石蔵山(標高358メートル)に送信所親局を、花泉町日形と室根山の2カ所に送信所中継局を設けました。

受信機は、市内全世帯に一関コミュニティFMだけを受信できる専用ラジオを無償で配布。
万一の際は、自動的に災害放送に切り替わり、市災害対策本部が発信する防災情報を受信できる機能が備わっています。

広大な市内全域へ電波を届けるために

開局時に受信できるエリアは、市全域の約70パーセントです。
本来であれば、開局時に市内全域で受信できる環境にしたいところですが、それができない事情があります。

市は難聴エリアを解消するために、順次、中継局を設置していきますが、コミュニティFM放送に許可される周波数は一局に一つ。
同一の周波数を複数の中継局から出力すると、同じ周波数の電波同士がぶつかり合って「混信」と呼ばれる状態が起き、難聴エリアでない地域まで正常な受信ができなくなってしまうのです。

そこで開局時は石蔵山、花泉、室根山の3送信所でスタートします。
その後、電波状況を調査しながら細かい調整を重ね、12年度中に送信所の追加整備を行い、市内全域で受信できる環境を整えます。

災害に強いまちづくりを実現するツール

3月に開かれた第37回市議会定例会で、勝部修市長は「災害に強いまちづくり」を24年度の重点施策として示しました。
コミュニティFMを使った防災情報の提供は、防災行政情報システムの整備と並ぶ施策の中核。
安心・安全なまちづくりを実現するための重要な役割を担います。

コミュニティ放送は、テレビ、インターネットや携帯電話と異なり、停電時でも機能するメディアです。
東日本大震災では、多くの情報インフラが遮断された中、ツイッターと共に機能したのがラジオでした。
災害発生直後から24時間体制で災害情報と共に道路情報、コンビニエンスストアやガソリンスタンドなどの営業状況など「すぐに必要な情報」「被災地の役に立つ情報」を発信。
地域になくてはならない情報源として国レベルで認知されています。

08年の岩手・宮城内陸地震、11年の東日本大震災と2つの大地震で大きな被害を受けた当市は、コミュニティFMの早期開設が必要と判断。
当初の計画を前倒しして開局に向けた準備を急ピッチで進めてきました。

猪股晃市政情報課長は「市民の皆さんが市内のどこからでもラジオが聴けるよう、本年度中に受信環境を整えていきたい」と話しています。

1開局にむけて、リハーサルを重ねるパーソナリティーの菅原万理恵さん 2市内大町の旧ダイエー一関店
3川崎町の石蔵山(標高358メートル)山頂に設置された送信所親局 4一関コミュニティFM放送局の事務室内。開局準備に追われる同局スタッフ
5朝の情報番組を受け持つ河合純子さん 6放送機器の説明を受けるスタッフ
1)開局にむけて、リハーサルを重ねるパーソナリティーの菅原万理恵さん
2)市内大町の旧ダイエー一関店。建物4階には一関コミュニティFMの事務所とスタジオが。建物の入り口脇にはサテライトスタジオが配置された
3)送信所は市内3カ所に整備された。写真は川崎町の石蔵山(標高358メートル)山頂に設置された送信所親局
4)一関コミュニティFM放送局の事務室内。開局準備に追われる同局スタッフ
5)朝の情報番組を受け持つ河合純子さん。月曜日から金曜日まで爽やかなひとときをお届けします
6 )放送機器の説明を受けるスタッフ

同期システムで混信を防ぎ、2012年度中に市全域を受信エリアに

「混信」は、電波を使った放送や無線通信で、同一周波数あるいは隣接周波数の他局の電波が混じり合い、正常な受信ができなくなることです。
コミュニティ放送局への周波数の割り当ては1波しかありません。
複数の場所から電波を出すと「混信」を招きます。

混信を発生させずに受信エリアを確保するために市は、FM同一周波数放送(同期システム)を導入しました。
このシステムは、局同士の周波数のズレをなくして親局の電波の周波数に同期させ、混信を防ぐシステムです。

開局当初は、3送信施設での稼働になります。
これは、同システムを適正に稼働させるために、発射された電波の伝達状況をきめ細かく調査、調整する必要があるからです。
その調査結果に基づき、2012年度中に中継局を増設して、市内全域で受信できる環境を整えます。

市の情報化推進を担当する猪股晃市政情報課長

リスナーに親しまれ、愛されるFMに

猪股晃市政情報課長
防災情報をはじめとする行政情報はもとより、地元に密着した身近な話題をたくさん発信して、市民の元気ややる気を呼び起こしてくれることを期待します。
リスナーの皆さんに、親しまれ、愛されるラジオ局になってほしいです。

広報いちのせき「I-style」5月1日号