石造三十三観音像 (室根町)

室根神社西側の杉林の下に安置されている石造三十三観音像

北上山地の南端、市の東部にそびえる室根山。古代から信仰の山として崇拝され、山頂から眼下を望めば、気仙沼市や太平洋、遠くは宮城県伊豆沼まで見渡すことができます。この室根山の八合目付近に鎮座する室根神社本宮・新宮の境内西側に、石造三十三観音像は安置されています。
これらの観音像はいずれも彫りが深く、力強さを感じさせます。傍らの石塔には、安永5(1776)年9月奉納の文字と併せて、願主「松壽院」以下35人の名前も刻まれており、その中には石仏を制作したと考えられる仙台の石工2人も含まれています。
三十三観音とは、法華経に説かれるように、観音菩薩があまねく衆生を救うために、相手に応じて「仏身」「声聞身」「梵王身」など、三十三の姿に変化した姿であるといわれています。この三十三観音信仰は、日本では近世になり庶民の間に広まったとされており、ほぼ同時期にこの地方においても信仰されていたことをうかがい知ることができます。
昭和59年、旧室根村教育委員会から発刊された「室根山三十三観音」によると、これらの石仏群の蓮台下から光背頂までの高さは69.0~80.5センチで、一体を除いて舟形の光背が彫られていました。また、本来含まれる三十三観音に代わり、8体が天台・真言六観音と子安観音に入れ替わって構成されていることもわかりました。
これらの観音像は、当地方の信仰を知る上で貴重な石仏群として平成10年、室根村の有形文化財に指定され、現在は市の指定文化財として引き継がれています。
悠久の時を物語るようにコケの花に覆われた石仏は、時には敬虔な信仰心によって赤い頭布で着飾られ、現在でも大切に扱われていることが伝わってきます。その静寂の中に見せる穏やかな面立ちは、訪れる人に安らぎを感じさせます。

問い合わせ先
室根支所教育文化課 電話0191-64-3810

 

(広報いちのせき平成20年11月1日号)