色 それぞれの「働く」

充実した人生の鍵は「働く」時間をどう過ごすか。
「働」くという字は、人が動くと書きます。心を動かす仕事をしましょう。
「職の都」一関で。

企業の成長の源泉は人

農林商工がバランスよく発展してきた「職の都」一関。
市が進めるキャリア教育、就労支援、就労後のサポートは、若者の地元定着に結びついています。

若者の地元定着には雇用対策のほか、個々の企業の質を高めることも必要です。

かつて、日本の雇用形態の特徴とされていた終身雇用制や年功序列制は、経済の成長と共に能力主義へと変わってきており、現在、多くの企業で人事管理の基準にされています。

能力主義における「能力」は、業績だけでなく協調性や責任感を含む人間性も示しています。
業績が優れていても協調性がなければ、評価されないことも少なくありません。

近年は、体系的な人材育成を進める企業が増えています。
組織の風土やそこで働く社員の価値観が同じになれば、組織力や統率力が高まり、企業内の連携や情報の共有などが良くなります。

しかし、ややもすると、同じ色に染まって、個性を失ってしまうこともあります。

実務社会は、年々多様化、複雑化しています。マニュアルどおりには進まない「イレギュラー」も増えています。
このような社会では、専門スキル以上に、万事に的確に対応できる豊かな人間性が求められています。

室根町で食肉加工販売を営む(株)オヤマの小山征男(いくお)代表取締役は「企業の成長の源泉は人」と言い切ります。
社員一人一人の成長が企業の成長につながっていくと考えています。
「実行力や創造力など、人によって得意とする力は違います。一人一人が個性や能力を発揮し、職業人としての自立するためには、社員が自分から成長していこうという姿勢を持つことと、それを支えたり、応援したりできる職場の環境が大事です」と続けます。

「自立」を目指す有能な社員も、それを受け入れる環境や能力を発揮する場がなければ、「孤立」してしまいます。
互いに認め合い、切磋琢磨するその延長線上に社員の自立があり、企業の成長があるのではないでしょうか。

紅葉が美しいのは、一枚一枚の葉が、一本一本の木や枝が、それぞれ濃淡を異にしながら主張し、それでいて森全体の中で調和しているからです。
営業、製造、事務など、異なるセクションがそれぞれ個性や存在感を発揮してこそ、企業は輝きを増します。
知恵を出し合い、影響し合い、摩擦の中で新しい価値がつくられてこそ、企業は底力を発揮します。

十人十色の働き方

国立社会保障・人口問題研究所が公表した2010年の国勢調査に基づく将来推計(標準的な中位推計)によると、10年に8175万人だった生産年齢人口は、60年には4418万人に半減すると見込まれています。
50年後、日本の人口の約4割は高齢者で、年金、医療や介護など社会保障制度と合わせた労働社会構造の抜本的な見直しが急務になっています。

働き手の減少は深刻です。
生産年齢人口を社会保障制度を支える現役世代と仮定すると、高齢者1人を1.3人で支えなければなりません。

労働力人口の減少を補うためには、女性、高齢者や障がい者など、あらゆる労働力を活用して生産性を高める必要があります。

86年に男女雇用機会均等法が施行され、社会のあり方とともに働き方は大きく変わりました。
今や女性が働くことは当たり前になり、女性はさまざまな分野で活躍しています。

しかし、昨年10月、世界経済フォーラムが発表した雇用分野での女性の地位、教育・健康水準、政治への参画などを示す「グローバル・ジェンダー・ギャップ・リポート2012」を見ると、各国の男女格差を
測るジェンダー・ギャップ指数で日本は135カ国中101位と低く、まだまだ働きやすい環境とはいえません。
妊娠、出産、育児と仕事の両立が負担となって、子供を産まない選択をする女性も増えています。

一方、今年4月には、障害者雇用促進法が改正され、障害者向けの求人も増加傾向にあります。
大事なことは「雇用率」だけでなく、「定着率」や「質」。
障害特性を理解せずに、健常者同様の指導を繰り返せば、ストレスがかかって離職するケースもあるからです。

働く社会は男性、女性、若者、高齢者、障がい者など、たくさんの人によって構成されています。
その一人一人に生活があり、夢があります。社員一人一人の成長の総和が企業の成長につながるとすれば、やる気が湧いてくる職場づくりこそ働く社会のスタンダードであると考えられます。

女性の雇用を積極的に進める市内樋渡の食品製造・卸売業藤産業の藤原恵美社長は「十人十色という言葉があります。異なる立場、違う目線や能力を持った人材の活用が、イノベーションを生む時代。
社員の個性や能力を引き出す環境は、モチベーションアップにもつながります」と革新の秘けつを語ります。

積極的に障がい者を雇用 (有)光成工業 村上耕一社長
Interview 村上耕一社長

村上耕一社長

特別支援学校に声を掛けてもらったのをきっかけに、08年から障がい者雇用を始めました。
彼らは、認識の仕方やものの見方が違うだけで、ここを理解できればきちんと仕事をしてくれます。
デリケートな人の相談に乗る担当もいます。障がい者がずっと働いていける場所を提供したいです。

 

 

 

 

女性が輝く職場を目指す 川嶋印刷(株) 菊地慶矩社長
Interview 小野寺聡子さん

小野寺聡子さん

「子育て支援企業宣言」をして、家庭的な職場風土を大切にしています。
さらに「いわて子育てにやさしい企業」の認証も受けて、女性の求職者、社員も増えています。
みんなで協力して仕事と子育てを両立し、メリハリのある毎日を送っています。
もちろん男性社員の仕事と子育て両立も応援しています。

 

 

 

INTERVIEW 今年4月に入社した社会人1年生に、古里一関で働く理由を聞きました。
田島幹大さん 23 萩荘 川嶋印刷(株)

田島幹大さん

つらい時もありますが、日々成長している実感があるので、うれしいです。
仕事は、自分を成長させてくれます。
一日も早く、一人前の営業マンになって会社に貢献したいです。

 

 

 

 

菅原南美さん 19 一関 ベリーノホテル一関

菅原南美さん

仕事にやりがいを感じています。
技術面、精神面とも磨いて、同僚やお客さまから信頼される社員になりたいです。
夢は、一関で幸せな家庭を築くことです。

 

 

 

 

阿部智也さん 19 赤荻 土地家屋調査士千葉博幸事務所

人間味あふれる一関が好き、高校で学んだ技術を生かせる、の両方がかないました。
仕事は大変ですが、やりがいがあり、楽しいです。
一関で充実した生活を送りたいです。

 

 

 

 

千葉千博さん 18 滝沢 (株)伸原工業所東北工場

高校時代に職場を見学し、「自分に合っている」と決めました。
仕事はスポット溶接を担当。おもしろくなってきました。
社会人として、ものの見方や考え方が広がってきました。

 

 

 

 

君崎夏奈さん 19 萩荘 特別養護老人ホーム「福光園」

高校時代、老々介護する祖母を見てお年寄りを支えたいと思いました。
そんな矢先、福光園で福祉を体験。「ここで働きたい」と思いました。
夢がかない、毎日が充実しています

 

 

 

 

佐藤菜生さん 22 千厩 岩手県立千厩病院

大好きな古里に恩返しをしたくて看護師になりました。
病棟で患者さんから「今日はなおちゃんだ」と言われることが励みです。
人と人とのつながりを大切にする看護師を目指します。 

 

 

 

 

 広報いちのせき「I-Style」 平成25年12月15日号