職 雇用の今

消費が回復し、景気は改善されつつあります。
しかし、社会変化や加速する少子高齢化の影響を受け、雇用を取り巻く環境は厳しさを増しています。

「職の都」いちのせき

東北のほぼ中心、仙台市と盛岡市の中間にある一関市は、古くから交通の要衝として栄え、岩手県南・宮城県北エリアの中核都市としての役割を担ってきました。

北上川や栗駒山など豊かな自然環境の中で古くから農業が栄えました。近年は、都市化や工業化が進み、農林商工がバランスよく発展する「職の都」です。

2010年の産業別純生産額は2707億円(第一次産業74億円、第二次産業753億円、第三次産業1880億円)で、盛岡市に次ぐ県内2番目の生産額を誇ります。

本年8月には北上高地が国際リニアコライダー(ILC)の国内建設候補地に選ばれるなど、科学を軸とする産業集積の実現にも期待が寄せられています。

しかし、加速する少子高齢化などの影響で、「職の都」を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。

若者定住と雇用の関係

2012年、本市の出生数(生まれた赤ちゃんの数)は828人でした。一方、亡くなった人は1886人で、自然減が止まりません。

市民課の調べによると、少子化社会対策基本法が制定された03
年(合併前の旧一関市)は、出生556人、死亡590人とほぼ同数でした。
第二次ベビーブーム(73年)は出生1015人、死亡418人で生まれてくる赤ちゃんは、亡くなる人の2倍以上でした。

少子化の根底には、育児に至る前の結婚がなかなか実現しないという難しい現実があります。
厚生労働白書によると、男性5人に1人、女性10人に1人が50歳時点で一度も結婚したことがなく、その解消こそ、脱・少子化の鍵であると指摘されています。

市は、雇用対策や婚活支援を通じて、結婚を望む若者を応援しています。
結婚したい人は多いのに、結婚できないミスマッチの背景には、「出会いの機会が少ない」「経済力に欠けている」―などが挙げられます。
3人に1人が非正規雇用の時代、先行き不安、安定しない経済状況などが、結婚を阻む壁になっています。
このように、若者の定住、結婚、雇用は密接に関係しているのです。

「古里で働き、結婚し、子供を産み、育ててほしい」

中東北の拠点都市形成を標榜し、定住、子育て、雇用の充実を重点施策として一体的に進める勝部修市長は、「地元定着」に力を込めます。

ジョブカフェいわてが岩手県内の高校3年生990人に聞きました。

Q 将来どのように働きたいですか?

A.最も多かったのは「仕事を通して自分を成長させたい」の516人。
次に「たくさんお金を稼ぎたい」の376人、「人の役に立ちたい」の350人が続いた。
反対に「昇進してえらくなりたい」65人と少数。
 

重点施策として雇用対策を進める
勝部修一関市長

勝部修一関市長

市は2年連続で新規高卒者の就職率100%を達成しました。
大事なことは、雇用する側、雇用される側、それを支援する側、それぞれに対する支援。
引き続き、関係機関と連携しながら地元就職、地元定着を目指します。

 

 

 

 

 

さまざまなミスマッチ

有効求人倍率は、労働市場全体の需給状況を表すもので、仕事を探している人(求職者)1人に、求人がどれくらいあるかを示した数値です。

岩手県の今年10月の有効求人倍率(新規学卒者除く)は1.05倍、一関管内は1.00倍で、08年秋の※リーマン・ショック前の07年12月の水準まで改善されました。
東日本大震災の復興や※アベノミクス効果で、少しずつ景気回復の兆しが見えてきたようです。

総務省の労働力調査(速報)によると、全国の10月の完全失業率(季節調整値)は4.0%。
完全失業者数(同)は前年同月比8万人減の263万人、非労働力人口(同)は前年同月比46万人減の4458万人、就業者数は前年同月比45万人増の6366万人と改善されています。
しかし、業種によって景況感に差があるほか、求人と求職がかみ合わない労働需給のミスマッチも起きています。
「希望の雇用形態ではない」「賃金水準が低い」「企業が求める人材とは違う」―などで、求人はあっても、必ずしも雇用に結びつくとは言い切れません。

ハローワーク一関求人専門援助部門の佐々木正幸統括職業指導官は「リーマン・ショック後、人員整理や海外シフトを実行した企業は少なくありません。
今年10月の製造業の求人倍率は0.53倍。このうち、機械組み立ては求人数35人に対し、求職者数224人。工業や機械系を専攻する学生にとっては、むしろ厳しくなっています」と実情を語ります。
働き盛り世代(10―30歳代)の雇用は、地域経済の成長だけでなく、地域そのものの活性化やまちづくりにも影響を及ぼします。

及川光正市労働政策課長は「雇用率はもちろん、雇用の質にも目を向け、企業と行政が一体となって取り組むことが大事です」と強調します。

※リーマン・ショック
アメリカ第4位の投資銀行だったリーマンブラザーズが、サブプライムローン(経済的信用度の低い層を対象にした高リスクの住宅ローン)で大規模な損失を計上。その処理に失敗して2008年9月に破産した。
同社の社債を保有する他行の経営も悪化。アメリカ全土が不況に追い込まれ、それが日本や他の国々にも大きな影響を及ぼした世界金融危機の一つ。

※アベノミクス
第二次安倍内閣が掲げた経済政策。
金融政策、財政政策、成長戦略の三つを「三本の矢」として実行することで「デフレ」から脱出、経済成長につなげていく計画で、政策の最大目標を経済回復と位置付けた。

正しい情報と確かなスキルで、前に一歩踏み出そう
ハローワーク一関求人専門援助部門統括職業指導官 佐々木正幸さん

震災の復旧復興や老朽インフラの再整備などに伴い、建築関連の10月の有効求人倍率は4.50倍になりました。

しかし、遠隔地勤務、特殊資格、希望者が少ないなどにより充足が図られていません。

福祉関連では、介護サービスの需要に伴い介護従事者の需要が高まっています。
しかし、気力と体力を必要とするため、離職する人が多く、人手不足が続いています。

このように、企業と求職者の間でミスマッチが見られます。職種によっては「希望の仕事に就けない」「企業が求める人材が集まらない」など、需給バランスはよくありません。

こうした状況の中でも一歩前に進むためには

1_職業訓練などによってスキルアップする
2_充実した求人情報から正確な情報を得る
3_綿密な相談で理解を深める

―ことが重要です。

ハローワークは、わかりやすい求人の受理に努め、再就職についての相談、職業紹介、各種セミナー、訓練受講案内まで幅広い業務を展開しています。
なんでも気軽に相談してください。

今年10月の一関管内の職種別求人・求職対照表(単位:人、%、資料:ハローワーク一関)※新規学卒者とパートを除く

職種 有効
求人数
有効求人者数 有効
求人倍率
合計
管理的 5 6 6 0 0.83
専門的・技術的 310 163 101 62 1.90
事務 102 434 124 310 0.24
販売 139 176 110 66 0.79
サービス 285 180 78 102 1.58
保安 49 22 22 0 2.23
農林漁業 24 13 12 1 1.85
生産工程 212 397 259 138 0.53
輸送・機械運転 174 97 97 0 1.79
建設・採掘 285 57 57 0 5.00
運搬・清掃・梱包等 69 239 180 59 0.29
分類不可 0 120 78 42 -
職業計 1,654 1,904 1,124 780 0.87
IT関連職業合計 16 113 83 30 0.14
福祉関連職業合計 246 97 27 70 2.54

 

 

 

 広報いちのせき「I-Style」 平成25年12月15日号