触 注目高まるキャリア教育

小さい時から仕事に触れることは大切なことです。
働くことの喜びや意義を家庭や地域で学ぶ機会が減った今、キャリア教育の注目が高まっています。

若者の意識にも変化

現在は、大卒者や大学院卒者でも就職が難しい時代を迎え、「定職」につかない若者が増加しています。

厚生労働省が15~24歳の若者を対象に行った調査では、約4割が働く目的を「楽しい生活をしたい」と回答。
さらに「責任を伴うことはできるだけ避けたい」「努力や訓練が必要なことはあまりやりたくない」などと考えている人が多いことが明らかになりました。

今春、大学を卒業した約56万人のうち、就職も進学もしていない人は約3万人。契約、派遣、アルバイトなどの非正規雇用者は4万人にも上っています。

家庭で学んだ「働く」

若者の意識変化には、社会や環境の変化が大きく関係していると考えられます。

一昔前の家には、両親のほかに祖父母やきょうだいがいました。
近所には同年代の子供たちがいて、彼らの家にもまた、両親、祖父母やきょうだいがいました。
子供も大人も隣近所や地域と日常的に触れあって暮らしてきたのです。

多くの家が農業で生計を立てていた時代、子供たちが家事や家業を手伝うのは日常の光景でした。
農作業を手伝うことで、お米一粒の大切さを噛みしめました。
わずかなお小遣いを稼ぐために、一生懸命家事を手伝いました。
働くことの「喜び」や「労働と報酬」は、家庭や地域で学んだのです。

そんな時代には、親が子育てに行き詰まったとか、仕事が見つからずに孤立したとか、いじめや非行、犯罪などはまれでした。
家庭でも、地域でも、常に人との関わりの中で生活していたからでしょう。

ところが便利で豊かになった今、核家族化が進み、夫婦共働き世帯が増え、少子化が加速しています。
忙しい社会と相まって、個人主義の風潮が高まり、地域と触れ合う機会は激減しているといわれます。
こうした社会構造や生活環境の変化が「働かなくても大丈夫」という錯覚を招き、早期離職者を増加させる原因になっていると考えられています。

労働政策研究・研修機構「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」の再集計による分析(2005年)
若年正社員の仕事の満足感

項目 数値(%)
仕事全体 38.8
項目 数値(%) 項目 数値(%)
個人の仕事の裁量 35.2 雇用の安定性 36.1
賃金 20.4 自身に対する評価・待遇 30.9
休日・休暇 46.9 就業形態 58.8
仕事内容 40.1 仕事と生活のバランス 35.2
仕事量 30.3 職場環境 41.4
職位 32.7 福利厚生 34.2
職場の人間関係 50.4 通勤時間 60.0
研修・教育訓練の機会 18.9 会社の将来性 22.1
昇進の見込み 12.8 会社の社会的評価 32.9

若年正社員の仕事観

項目 数値(%)
働かなくても暮らせるのなら定職につきたくない 35.4
出世や昇進のためにはつらいことでも我慢したい 19.6
自分の専門的知識・技能を発揮できる仕事をしたい 75.8
能力が発揮できる機会があれば昇進にこだわらない 55.2
同じ会社で一生働きたい 28.3
年功制賃金を縮小する方向で見直すべきだ 42.5
もっと成果を重視した処遇にすべきだ 58.6
仕事のために家庭生活が犠牲になることは
やむをえない
6.3
育児や介護など家族のために休暇を取得することは
当然である
76.6
仕事以外の生活に合った働き方ができるように
なるべきである
64.1

※「若年正社員の仕事観」表中の割合は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の回答を合計した数値

キャリア教育の意義

そんな中、雇用の促進と子供たちの仕事への意識を高めることを目的に行われる「キャリア教育」が注目されています。

流動的な社会の中で客観的に自分を見つめ、社会との関わり方を考え、実行する「社会力」を身に付けさせることと、具体的な将来像を描いて、その実現に向け、行動する「勤労観」と「職業観」を熟成させることがねらいです。

ジョブカフェ一関の金野馨(かおる)センター長は「社会を見たり、職場を体験したりすることは、人生観を養う上でも大きな意味を持ちます」 と話します。
勤労観や職業観は、身に付けようと思って身に付けられるものではありません。
人と触れあい、周囲の環境と調和し、多様な経験を積みながらつくられていくものです。

元禄年間から九代続く大町の老舗呉服店たかはし屋(髙橋市郎兵衛(いちろうべえ)社長)本店の畠山克宏(かつひろ)店長(45)は「人生も、仕事も、人との出会いで決まります」ときっぱり。
「ホテルに勤めていた27歳の時、高橋社長と出会いました。社長の経営理念、仕事に対する夢や情熱などに触れ、お世話になることに決めました」と振り返ります。
さらに「当店の業務は和服の販売ですが、目配り、気配り、心配りなど、商品にはない心のサービスこそ、いい仕事の条件。人と人とがふれあい、つながる仕事がモットーです」とも。

仕事に触れることは、ヒトの心やモノの本質に触れること。そしてコトの意義を理解することなのです。

社会に適応できる人材を育てるキャリア教育選んだ仕事で人生は大きく変わります
金野馨 ジョブカフェ一関センター長

学校卒業後に就職できない、働かない、そんな自力で生活できない若者が増えています。

こうした状況が続くと、経済的な問題はもちろん、精神面にも影響を及ぼして、うつなどの症状になる場合があります。

「働かない」ために、家族関係が悪くなったり、社会的に孤立したりすることも少なくありません。日本の雇用問題は、深刻化しています。
社会を変えることはなかなか難しいことです。しかし、社会に適応できる人材を育てることはできます。
そこに着目したのがキャリア教育です。
若い時から仕事に触れることで、就きたい仕事や進みたい道が見えてくることもあります。
夢や希望に出合えることもあります。

現代は、大卒者でも就職が難しい時代。
いい大学に進むことだけを重視せず、何を学びたいのか、どんな仕事に就きたいのかを考えて、進路を選択することが大事です。

学生生活は就職までの準備期間。その時間を有効に活用するかしないかは皆さん次第です。選んだ仕事で人生は大きく変わります。

 

 

ジョブカフェ、ハローワーク、サポート・ステーションが連携し多彩なキャリア教育を実施

「ハローワーク一関」は、求職者には仕事をあっせん、仲介を行い、事業主には求人広告を行います。
また、働くママのための「マザーズハローワーク」も設置しています。
「ジョブカフェ一関」は、キャリア教育や若者の就労支援を行います。
「いちのせき若者サポートステーション」は15~39歳の働くことや自立に悩みを抱える人のカウンセリングを行い、プログラムを作成・実施して自立支援を行います。
引きこもりや不登校などデリケートな問題にも対応します。

このうち、ジョブカフェ・キャリア・サポーターの野々垣敏朗さんは「自分の経験を役立てたい思いで活動しています。学生の皆さんには、後輩に目標とされるような社会人になってほしいです」と話しています。

1野々垣敏朗さん 2ハローワーク一関
3ジョブカフェ一関 4いちのせき若者サポートステーション

1_ジョブカフェ・キャリア・サポーターの野々垣敏朗さん
2_ハローワーク一関
3_ジョブカフェ一関
4_いちのせき若者サポートステーション
 

 

 広報いちのせき「I-Style」 平成25年12月15日号