10月17日に開かれた市議会臨時会で3期目のスタートにあたり勝部修市長が述べた所信表明の全文を紹介します。

勝部修市長本日ここに、第63回一関市議会臨時会が開会されるに当たりまして、今後の市政運営についての所信の一端を申し上げます。














 

はじめに

この度の一関市議会議員選挙におきまして、見事ご当選の栄誉を得られました議員各位に対しまして、心からお祝いを申し上げます。

私も、市民の皆さんから、引き続き4年間の市政運営を負託され、3期目の市政を担わせていただくことになりましたが、今まで以上に責任の重さを感じ身の引き締まる思いがするとともに気持ちを新たにしているところであります。

中東北の拠点都市づくり

私はこれまで、
・市町村合併に伴い策定された新市建設計画や新市基本計画の推進
・東日本大震災福島原発事故由来の放射性物質による汚染問題への対応
さらには、
・協働のまちづくり、資源・エネルギー循環型まちづくりなどの推進
・平泉町との定住自立圏の形成や宮城県北地域との連携推進
・読書環境、子育て支援、地域防災力の充実
そして、
・ILCを基軸としたまちづくりの推進
これらを政策の柱として掲げ、「中東北の拠点都市」という“まちのかたち”をお示ししてきたところであります。

これら、2期8年間にわたり積み上げてきた成果を土台として、これからの一関市の将来を見据え、市政運営に取り組んでまいる所存であります。
 

持続可能なまちづくりに向けた堅固な第一歩

私は、平成21年の市長就任以来、「中東北の拠点都市一関の形成」という言葉を、全てを集約したスローガンとして掲げて、市政運営に努めてまいりました。
子育て支援や雇用対策、産業振興、災害に強いまちづくりなどのほか、県境を越えた、より大きな枠組みでの連携によるヒトやモノの流れを生む圏域づくりに継続して取り組んできたことにより、その取組は、順調に推移してきていると認識しているところであり、これまでにまいた種が、様々な形で芽を出してきていると感じているところであります。

私は、これからの4年間を、今後20年先、50年先、あるいはもっと先を見通して、一関というまちを、明るい未来へつなげる「持続可能なまちづくりに向けた堅固(けんご)な第一歩の4年間」にしたいと思っております。
一つひとつの施策の積み重ねが、当市のこれからの発展につながっていくものと確信しており、そのために、次の5つの施策を政策の柱として取り組んでまいりたいと思います。

1つ目は、ILCの拠点都市としての都市機能の形成であります。
ILCの誘致実現がいよいよ目前に迫っており、ILCの研究拠点となるメインキャンパスが、北上高地周辺に形成されるものと信じております。
そのため市としては、地場産材を活用した研究施設の整備やバイオマス燃料を活用した公共交通の整備、研究者の居住環境の整備などの取り組みを進めてまいります。
ILCを見据えたまちづくりにあたっては、研究者からの意見を踏まえながら、地域の皆さんと一緒に考え、進めていくことが何よりも重要であると考えております。

2つ目は、資源・エネルギー循環型のまちづくりであります。
当市は、岩手県で初めてバイオマス産業都市として選定されるなど、バイオマス資源をはじめとする地域内の様々な資源をエネルギーとして循環させる取組、いわゆる「エネルギーの地産地消」を進めているところであります。
資源・エネルギー循環型まちづくりビジョンにおいて、まちづくりの方向性として掲げた「いかす・つくる・つなぐ、資源・エネルギー好循環のまち、いちのせき」の実現に向け、各種事業の推進を図ってまいります。

また、エネルギー循環型施設の整備についてでありますが、現在、一般廃棄物処理施設について、狐禅寺地区に提案をさせていただいておりますが、これは、資源エネルギーの循環ということを基本として、産業振興や雇用の創出など、地域振興の観点から、単なる廃棄物の処理施設というこれまでの施設とはまったく視点の異なる、新たな施設という考え方で検討し、提案させていただいているものであります。
この施設建設について、地域の皆さんから様々なご意見を頂いておりますが、賛成、反対双方の意見を踏まえ、最終的には私がその全責任を負って判断してまいりたいと考えております。

3つ目は、高齢化社会に対応した社会資本整備であります。
当市の高齢者の割合は、今後も上昇していくと見込んでいるところです。
今後のまちづくりにあっては、高齢者が安全に安心して暮らせる地域づくりという視点が欠かせないものであります。
そのためにも、高齢者の視点に立った社会資本の整備を進めていかなければなりません。

4つ目は、子育て支援、若者の地元定着支援であります。
子育て支援については、これまでも、子どもの成長過程に合わせて、保健、医療、保育、教育、就職、結婚などの各分野において、点ではなく、それぞれが線でつながる切れ目のない一連の施策を推進してまいりました。
この一関で子育てをしたい、子育てをして良かったと実感をしていただけるよう、点から線への施策を一歩進め、その線を縦や横の線へと広がりを持たせ、それぞれの線をさらに太くし、総合的な視点で子育て支援ナンバー1のまちを目指してまいりたいと思います。
また、地域の活性化には若者の力が不可欠であります。若者の定着のため、特にも第一次産業が地域の基幹産業として成り立つように支援していく必要があります。
この一関で働き、一関で家庭を持ち、一関で子育てをし、そしてまちづくりに参画していただける、このように若者が定着し、活躍できるような取組を進めてまいります。

5つ目は、地域文化の伝承とスポーツの振興であります。
当市は、南部神楽をはじめとする多くの民俗芸能や1,300年の歴史を今に伝える室根神社の特別大祭、あるいは360年の節目を迎える一関市・大東大原水かけ祭りをはじめとする様々な祭りなど、長い伝統と歴史を有する文化が伝承されており、これを守り確実に次の世代に伝えていかなければならない使命が私ども現役世代にはあると思っています。
地域文化を伝承し大切に守り育てていくことにより、市民の皆さんお一人、お一人のこの地域への愛着や誇りに繋げてまいりたいと思います。

また、スポーツの振興については、日頃から楽しみながら体を動かす習慣が健康増進へとつながり、地域の活力にもつながっていくものと考えており、市民が様々な場面で年齢や性別に関わらずスポーツに親しみ、また、健常者と障がい者が一緒にスポーツを楽しむなど、市民のスポーツに対する関心を高める取組を進めてまいります。
また、当市出身の若者が、スノーボード競技の世界大会での入賞や愛媛国体でのフェンシングの部で昨年の岩手国体に続く連覇、更には女子ソフトボールの実業団での活躍など全国や世界を舞台に活躍しているところであります。
当市出身の若者の活躍を市全体で応援し、一関市からオリンピック選手を輩出するための取組も進めてまいりたいと思います。

この他、取り組むべき施策につきましては、市の総合計画で定める市の将来像「みつけよう育てよう 郷土の宝 いのち輝く一関」の実現に向け前期基本計画に基づいた施策を確実に推進してまいりますが、これらの施策の展開に当たりましては市民の皆さんの積極的な市政への参加をいただきながら取組んでまいりたいと考えているところであります。 

市民と共に歩む市政

私の市政運営の基本は、行政サービスの品質の向上を図り行政に対する市民の満足度を高めることであります。
そのためには「市民起点」「現場主義」が重要と考えており、私が市長就任以来続けてきた移動市長室はまさにその基本となるものであり、今後も引き続き実施してまいりたいと考えております。

また、協働のまちづくりは、地域協働体が発足し、その活動拠点が定着しつつあります。
地域の将来を築いていくためには、この仕組みをさらに充実させていかなければなりません。
そのためには、協働のまちづくりがより深く根づくよう各地域、各分野でリーダーとなる「人財」を発掘し、これを育てていくことが不可欠であり、「人財」の育成にも力を注いでまいります。

まちづくりは一つの自治体のみで成し得るものではないことから、地域課題の解決のため、共通する課題を抱えている自治体や県境を越えた宮城県登米市、栗原市や平泉町などの隣接する自治体との連携を一層進めてまいります。
そのためには、行政だけの連携だけではなく、市民レベルでの交流、連携が活発になされていくことが真の連携につながるものと考えており、そのような取り組みも併せて進めてまいりたいと思います。

世界を観る眼で 一関を拓く

私は、将来に向けて、ILCを基軸としたまちづくりが不可欠であると様々な場面で申し上げてまいりました。

現在、文部科学省が設置した有識者会議において、ILC日本誘致に向けた諸課題の検証が行われているところでありますが、本年度末までに検証結果の最終報告がとりまとめられ、この報告を受けて政府が日本誘致の最終判断を行うこととされております。

私にとって25年間に渡って携わってきたプロジェクトであります。
特にも、この年末から来年夏頃にかけてが大きな山場を迎えることとなります。
この任期中の前半には、ILCの誘致が実現すると信じているところであり、今、私にできることのすべてをこのプロジェクト実現のために注ぎ込み、新たなまちづくりのスタートとなる4年間にしてまいりたいと決意をしているところであります。

この一関・平泉地域は、平泉の世界文化遺産や、もち食文化などの「歴史・文化」、世界かんがい施設遺産や世界農業遺産などの「農業」、これにILCの世界最先端の「科学」などをキーワードにした世界に誇れる多くの地域資源が生まれることとなります。
これらを連携させて、この地を訪れる人の流れを大きく変えていく取組を進めてまいりたいと思います。

このことが次世代の市民が、この地域において安心して暮らしていける、この地域が未来永劫に存続していける、その一歩に結びついていくものと確信をしているところであります。 

むすび

世界の人々から親しみをもたれる地域(まち)、
世界の人々から信頼される地域(まち)、
そのような地域(まち)を、
すべての市民の皆さんとともにつくってまいりましょう。

私は、市民の皆さんからの負託に応え、諸課題の解決に向けて、その一つひとつに正面から向き合い、全てを賭して、不退転の決意でやり遂げていく覚悟でありますので、議員各位並びに市民の皆さんのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げまして、私の所信表明とさせていただきます。